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喜怒哀楽の瞬間と出会える プロスポーツ経営の世界で

株式会社リンク・アンビションさん公認のもと、取材・掲載いただいた記事をnoteでも掲載させていただきます。地方を支える人材が胸を張って仕事ができる環境の実現を願って。

INDEX
■モノつくりの現場で20年、プロスポーツの世界で20年
■財界トップが、土地の人達が喜ぶことを大事にしてくれる静岡
■大企業で学んできたメソッドを、地元の会社で活用してもらう
■Uターン人材を活かすためには、必ずラインの中にいれること
■今後の日本は、エコノミースケールが変わっていくのでは

■モノつくりの現場で20年、プロスポーツの世界で20年

静岡県静岡市に本拠地を置く、静岡でたった一つの男子プロバスケットボールチーム「ベルテックス静岡」。その運営会社VELTEXスポーツエンタープライズ のエグゼクティブ・スーパーバイザーとして、私は現在、法人営業を中心にクラブの運営や組織作りのサポートに携わっています。 2020年にエスパルスの代表取締役を退任した私は、スポーツビジネスコンサルティングを行うスポーツBizマネジメントを立ち上げました。「ベルテックス静岡」の他にも、二輪モータースポーツ法人のサポートなども行っています。「清水エスパルス」「湘南ベルマーレ」「横浜F・マリノス」とプロサッカークラブ経営を20年近く行ってきた経験、そして私のスタートであった日産自動車での20年以上の経験が今につながっています。

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■財界トップが、土地の人達が喜ぶことを大事にしてくれる静岡

「清水エスパルス」クラブ運営は、私のスポーツビジネスへの想いをいっそう強くするとともに静岡への愛着を深めることとなりました。「ベルテックス静岡」との縁を結ぶにあたっては、5年間熱心に応援してくださり、お世話になった静岡市民の方々に、何か恩返しがしたいという思いも強くありました。静岡の人は、とても地元を大事にします。同じ街に住む人、同じ中学高校の出身者、同郷の仕事仲間を大切にします。だからこそでしょうか、地元にあって他県と試合をするスポーツ競技をとても大事してくれます。それは静岡の財界人も同じですね。静岡の財界は、土地の人がとても多い。同族経営の会社や静岡エリアだけで商いをやっている、100億円200億円規模の会社が少なくありません。静岡と同じ人口70万くらいの地方都市だと、上場企業ができたら社員は異動や出向が続いて、会社の中に土地の人は少ないという状態になるのですが、静岡は違います。企業の利益とは別の部分で、土地の人を大切にして、その人達の生活を成り立たたせるために自分達は存在しているんだ、というような企業文化を持っている会社が大変多い。静岡の交響楽団など芸術文化への寄付やプロスポーツのスポンサー社数にも、それが現れています。財界トップが、土地の人達が喜ぶことを大事にしてくださるおかげで、「清水エスパルス」時代はもちろんのこと「ベルテックス静岡」にも大きなご支援をいただけています。他県出身の私のことも、ありがたいことに前クラブ退任後も変わらずに大事にしていただき、街ですれ違いざまに声をかけてくださるなど、人対人の血の通ったお付き合いができる都市だと感じています。

■大企業で学んできたメソッドを、地元の会社で活用してもらう

そのような魅力的な土地柄である静岡ですが、一方ではその弊害もないわけではありません。自分の会社や社員を大事にするということで、人事も静岡の人間だけで延々とやってきているために、いろいろな機能別の経営の仕方やモノつくり、営業、マーケティングなどの分野でダイナミックなメソッドを得ることは難しくなります。その結果、静岡はコンサル会社にとって大変にいいマーケットになっているわけですが、私は「それなら、外で経験を積んできた優秀なUターン人材をいれたほうがいい」といつもアドバイスしています。

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『静岡に生まれ育ったけれど、外の空気を知っている人』『実家は静岡にあるけれど、ソニーで働いています、日立製作所に新卒で入社して15年です、三井物産に入社しましたという人』に、同業他社で地元にはこういう会社があるから戻ってこないか、と声をかけて口説いてみるのです。大きな企業で学んできた機能別のメソッドを、地元の会社で活用してもらうのです。当然ながら最初は摩擦や衝突もあるでしょう。私もたくさんありました。しかし、土地でクローズしてやってきた人達が経験したことのないような会社の業績の上げ方を知っていて、かつ地元愛のある外での経験者を社内に持つということは、最終的には地元の人達の幸せにつながるし、何よりもそこで働いている全社員が刺激を受け活性化されていき、元気になると思っています。

■Uターン人材を活かすためには、必ずラインの中にいれること

私はこれまでの経験上、Uターン人材採用には大賛成です。「ベルテックス静岡」でも大澤歩選手や大石慎之介選手などの主力クラスが上位カテゴリーのクラブオファーを蹴って、地元静岡にクラブができたというのですぐに戻ってきてくれました。彼らは外でプロチームのありようを学んできていて、それをできたばかりのチームに植え付けようとしてくれているのですが、まったく同じことがスポーツクラブだけではなく他の会社でも言えると考えています。

ただ1つだけ絶対に守らないといけないことは、Uターン人材の活かし方です。それは「必ずラインの中にいれる」ということ。権限と責任をちゃんと持たせて指揮命令系統のラインの中に入れないと、「そんなの、うちのやり方じゃない」と言われて結局は何もできなくなります。例えば顧問のポジションであれば良かれと思って何か言っても強い権限がないため発言が選択されない場合がありますが、それが副社長であれば、業務命令となり言われた人間が選択拒否することはできません。それで成功したら「さすが」となりますし、駄目だった時には自らの責任となります。そもそも権限が不十分で責任ばかり追及されるところに、優秀な人は入ってきません。例えば、オーナー系の企業で息子さんが引き継ぐというときにも、私は「親父さんが退任する前に、地元出身のエグゼクティブクラスの人材を、顧問じゃなくて息子さんの一個上の等級のところに置いて、学習させてはどうか」と言っています。それは襟を正して上司から学ぶ環境を、生まれた時から顔を見てきた親子間で持つことは必ずしも簡単ではないからです。地元出身で外を知り、切れ味がよくて優秀なちょっと年上の人材をつれてきて少し緊張感を持たせることは、同族経営を右肩上がりでやっていくうえで、一つの突破口になっていくのではないかと思います。

■今後の日本は、エコノミースケールが変わっていくのでは

今後の日本のことを考えると、私はリージョンオリエンテッドの経済圏を作って地産地消するような形に変わっていくのではないかと思っています。それは他を排除するということではなく、経済の規模が変わっていくということです。その中でスポーツビジネスは、地域密着ということで親和性が高く、とりわけ静岡の中でのスポーツは既に地域を一番に応援するという素地が他の地域よりもできあがっていますから、とても期待しています。

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「ベルテックス静岡」や「清水エスパルス」にスポンサー企業としてお金を出してもらうことによって、その企業だけではできない方法で静岡の人を喜ばせることができますよ、と伝えると多くの企業が「そうか!」と言ってくれます。こんな都市はあまり他にはないと思います。決して大きくはない会社でも「うちなんかがスポンサーやっていいの?」なんて言いつつ、「税金として払うくらいの、この100万円が明日への1勝につながって、静岡の人達がとても喜んでくれるのだったら出しますよ」と言ってくださる。経営者は皆、自分は何で社長をやっているのかと考えていて、たどり着くのは「商品を使ってもらっているお客様に喜んでもらいたい、雇っている人間に幸せになってもらいたい」ということ。やっぱり人間に結びつくんですよね。

私も、自身のこれまでの足跡を少しでも多くのプロスポーツ従事者に還元するとともに、一人でも多くの方々が喜怒哀楽あふれる時間を享受できるよう、スポーツビジネスを通じて貢献したいと考えています。


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