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【マンション建設】消費税還付スキームは完全に封じられたかもしれない

以前から、マンションオーナーは『自動販売機スキーム』や『金地金取引スキーム』を活用して賃貸マンション建設時の消費税の還付を受け、国税庁は税制改正でスキームを封じるといういたちごっこが繰り返されてきていた。

不動産会社はマンション建設をしてもらえばもらうほど嬉しいので、専門の「消費税還付スキームを考える部隊」も抱えていたとのことで、幾度となく法の網をくぐってきた。

そこで課税する側は、令和2年度に非常に意地悪な税制改正が行った。

そこで、今回は「【マンション建設】消費税還付スキームは完全に封じられたかもしれない」をアップグレード解説していく。

なお、この記事は、2018年5月15日の肥田木会計事務所ホームページ記事をアップグレードして掲載したものである。最後に、追加のアップグレード情報も記載しているので、併せて読んでいただきたい。

ji自動販売機

【税務調査対策】最近の不動産取得による消費税還付スキームの危険性について(2018年5月15日)

消費税の還付を狙う手法として、昔からいわゆる「自販機スキーム」が有名です。ただし、過去一連の税制改正によってこのスキームは封じられたといわれています。

しかし、ある種の“力技”で一部ではいまだに同種の消費税還付スキームを勧める方々もまだいるようです。

その最近の「自販機スキーム」の税務リスクについて、税務通信で紹介されていたので、概要のみ紹介します。

自販機スキームとは

自販機スキームとは、賃貸マンションを営む事業者が自動販売機を設置することで消費税の還付を受けようとするスキームで、マンションが完成するまでの課税期間にはあえて賃料収入(非課税売上)を計上せずに、自動販売機の収入(課税売上)を計上することで、課税売上の割合を高めて賃貸マンションの建設にかかった多額の消費税の還付を受けようとするものです。

具体的には、

①まず、賃貸マンションが完成し、賃料収入が発生するまでの間に、マンションに自動販売機を設置します。
②この期間、自動販売機からの売上は「課税売上」となります。
③一方で、賃料収入は非課税売上ですが、マンション完成までは賃料が発生しないため、売上は自動販売機からの売上のみ、つまり「課税売上のみ」となります。
④これにより、マンション完成までの期間は「課税売上100%」、つまり、課税売上の割合が高い状態となり、還付される消費税額が大きくなるわけです。

こうした租税回避的な行為が横行したため過去の税制改正で調整対象固定資産の課税仕入れを行ってから3年間は原則課税の課税事業者が強制されるなどの手当てがされました。

改正前は課税事業者選択届出書を提出すると2年間は強制的に課税事業者となりましたが、改正後は(細かな要件はありますが)簡単に言えば、一度課税事業者を選択した場合には3年間は課税事業者であることが強制されます。また、同期間について簡易課税制度も選択できません。

そして、ここがポイントとなるのですが、3年目の消費税は過去3年間の平均課税売上割合を用い消費税を計算することになります。(これを調整対象固定資産の調整といいます)。

その結果、1年目の還付を受けた多額の消費税はほとんど戻すことになります。つまり、還付を受けても結局また納税することになるためこのスキームはあまり意味のないものになったというわけです。

最近の不動産取得による消費税還付スキームとは?

いまだに一部で行われているというのが、課税売上をあえてつくりだし、1期目から3期目の「通算課税売上割合が著しく減少」しないようにすることで、いわば力技で調整計算の適用を避けるというものです。

具体的には、相当額の課税売上を恣意的なタイミングで計上しやすいともいわれる、金地金の取引等により課税売上を計上しているケースが目立つようです。

【重要!】契約と引渡しの期のズレを指摘される危険性

消費税はいわゆる不正還付の申告が多いといわれ、その還付申告には厳しい目が向けられます。特に前述のような金地金の売買を不自然に繰り返しているなど、消費税の還付だけを目的としていることが推認されるような場合などではなおさらです。

その還付理由等について税務署は納税者に聞取り調査等を行うなど、厳格な対応がとられることがあります。

税務通信では、

『実際,取得した建物に係る課税仕入れの計上時期について,納税者が申告した「契約の効力発生」の日ではなく「引渡し」があった日であるとして,計上する課税期間のズレを指摘し還付を認めないケースもあるようだ。

と事例を紹介しています。

つまり、契約書に記載された引渡しや登記簿の所有権移転の時期、売買代金の支払い時期などから引渡しの時期を示して契約基準を認めず、その引渡しがあった日を課税仕入れの計上時期とすることがあるようです。

『この点,裁決において消費税の還付を受けるためだけの目的で,形式的に契約基準を適用することは認められないと指摘。引渡しの日を課税仕入れの計上時期と判断し,還付を認めなかった事例が複数ある(29年3月15日裁決等)。』

とも紹介されています。

いまだ、不動産建設にあたり消費税還付スキームを勧めてくる業者がいるという話は、時々ですが耳に入ります。上記のような危険性があるというという意識をした上で、その話に乗るか慎重に判断した方がいいかと思います。

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~以下、追加アップグレード情報~

令和2年度税制改正において、居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等の仕入税額控除を制限する規定が創設された。

消費税の仕入税額控除については、近年、金地金の売買により課税売上割合を95%以上に維持することで、仕入税額控除を全額とれるようにするという租税回避手法が話題になっていた。

つまり、金の売却収入を計上して課税売上割合を95%以上にすることで、取得した居住用アパートにかかる消費税の還付を受け、翌年以後も金の売買を繰り返して課税売上割合をかさ上げする手法だ。
これを放置するわけにはいかないので、今回のような措置がとられることは色々なところで予測されていた。

ポイントは、課税売上割合にかかわらず「取得時の用途」によって仕入税額控除の可否を決めるということだ。取得時に『居住用』であれば、推定有罪で、本来課税仕入になるものであっても、仕入税額控除は一切とらせないことにしている。

「住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物であって高額特定資産に該当するもの」が仕入税額控除を禁じられるため、現実に住宅として貸し付けていなくても、貸し付ける可能性があればその部分も含めて規制対象になる。

高額特定資産ということなので棚卸資産として取得した居住用の賃貸物件も含まれることになる。(ただし、その後3年の間に居住用以外の事業用賃貸の実績があるような場合や譲渡した場合には、非居住用賃貸割合という概念を用いて調整計算してくれる。)

本改正は、令和2年10月1日以後の建物の仕入について適用されいる。

肥田木会計事務所では、税お役立ち情報を定期的に配信しています。

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