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「未耕作農地の活用」 ④展望 農地利用者の多様化

 国は兵庫県養父市を国家戦略特区とし、民間企業による農地取得を特例として認めている。全国的な解禁実現に向けたビジネスモデルとして、5カ年間(平成28年-令和3年)で効果を確かめているのだ。漁業権に関しても企業参入を進める流れがあり、担い手の高齢化と後継者不足を解消するには、中小企業の参入を促すことが必要と考えているようだ。

 農地取得は本来農業委員会が権限を持つところだが、特区の場合は、その権限を首長が持つ。養父市では、農業生産法人の規制緩和を受けて6社が農地を取得し、4社がリースで規模を拡大した。一定の雇用を生み、順調な滑り出しと思えたが、時間の経過とともに農地利用率が悪化。本来一定の成果が見られれば、全国での企業農地取得解禁という予定だったが、実際の内容は芳しくなく、特区期間を2年延長し、取得解禁は見送りとなっている。

 昨今は、震災復興事業や五輪事業の収束で公共工事が減少し、建設関連業者が雇用維持のため農業関連事業に目を向けるケースが増えていた。農地取得の解禁が実現していれば、そうしたニーズに応えられるものであり、農地利用の促進にもつながったのだが。

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農地利用者の多様化が未耕作農地解消の鍵

 とはいえ、解禁時のデメリットもある。採算性のある持続可能な農業形態を維持するのは養父市を例に、簡単ではないことがわかる。安定した収穫、販路などを整える必要があり、かみ合わなければ取得農地の耕作が放棄され、最悪、産業廃棄物の置き場と化すことも。農地取得を解禁する場合は、そうしたリスクに備え、維持管理の徹底など法律でしっかりと義務付けてほしいものだ。

 加えて、個人や企業を対象とした農地リースの仲介機関も設ければ、需要をさらに高められる。国の方針により、農地中間管理機構は今後、自治体や農協、貸し手や受け手をコーディネートする組織と一体となって対応にあたることになる。

 互いの情報を持ちより、農地の現状を正確に把握することで、今後の農地利用に適切な対応をとることができるだろう。加えて、土地所有者と一般の個人をマッチングさせるポジションも必要だ。一つの土地を区画で分けて、需要を求めるような仕組みをとれば、細かな分散農地の活用も図られていくだろう。国内では、農地中間管理機構とは別に、自治体で農地バンクを構えるところもある。これに民間団体も加わっていけば、多様なマッチングを実現していけるはずだ。【横井康彦】

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