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原発避難のアプリ実証試験 時間短縮に一定効果

 東北電力女川原子力発電所での重大事故を想定し、県が来月から導入を進めるスマートフォン用「避難支援アプリ」の実証試験が19日、登米市の登米総合支所駐車場で行われた。避難ルート途中にある検査所の手続きで、アプリを使った場合と使わない方法を比較し、時間短縮効果を実証するもので、女川町民や県職員ら計50人参加。アプリ利用でヨウ素剤の注意説明や線量検査済み証を渡す時間の短縮が確認されたが、高齢者からは「アプリの使い方が難しい」などと不安や戸惑いの声も聞かれた。

 避難支援アプリは、マイナンバーカードと連携した「デジタル身分証アプリ」内に搭載されたミニアプリの一つで、原発での重大事故発生時に広域避難を行う住民が各自のスマホで使うもの。避難に必要な手続きの時間や、対応する自治体職員の人員を削減できるという。アプリを使った訓練は昨年10月に原発5キロ圏(PAZ)の住民の避難所受付を想定して試したが、今回は5-30キロ圏(UPZ)の住民を想定。30キロ圏外に出る際に通る「避難退域時検査等場所」での動作を調べた。

アプリを使い、車内からQRコードを読み取った

 アプリの使用、不使用に分け、各10台分の車両が通過するのに要した時間を比較。使わない場合はヨウ素剤の注意事項の説明や線量検査済み証の手渡しに手間取り約15分かかった。一方、使った場合は現地でQRコードを読み込むだけで検査済み証が発行。ヨウ素剤の説明もスマホ画面で確認でき、要した時間は約9分。4割ほど時間短縮できることが確認された。

 訓練に参加した村井嘉浩知事は「従来は誰が検査所を通過したかまでは把握できないが、アプリなら誰がどこの検査所を通過したかが瞬時に分かる」と利点を強調。一方で「アプリをダウンロードし、使ってくれるかが課題。効果は普及率次第だ」とした。

左側のレーンがアプリ使用、右側が不使用の車列。不使用の車列では渋滞が起きていた

 アプリ取得は来月から可能となる見通しだが、県は利用促進を図るため、アプリをダウンロードした人に5千円分のポイントを付与する事業を10月以降に女川町、11月以降に石巻市や東松島市など6市町を対象に始める。

 この日、参加した女川町民は大原北の住民を中心に12人。阿部清子さん(71)は「断然スマホを使った方が早い。すぐダウンロードしたい」と前向き。鈴木洋子さん(73)は「担当者に教えられて何とか操作できたが、自分だけで使うのは難しい」と不安を募らせていた。そもそもスマートフォンを所有していないという志賀清子さん(82)は「アプリが何なのかもよく分からない」と語った。

 東北電は、女川原発2号機について、来年2月の再稼働を目指している【山口紘史】




身分証アプリ来月開始
県 原子力防災分野で 村井知事が講演

 村井嘉浩県知事が10日、石巻市内で講演し、マイナンバーカードと連携した「デジタル身分証アプリ」について、来月にも原子力防災分野で正式な利用を開始する予定であることを示した。

 「DX先進県を目指して~デジタル身分証アプリの活用~」と題し、石巻グランドホテルであった一般社団法人内外情勢調査会石巻支部(支部長・青木八州石巻商工会議所会頭)の懇談会で講演。行政機関や経済界などから約70人が参加した。

村井知事も訓練に参加し、有用性を確かめた

 村井知事は、県が民間事業者と共同で開発を進めているデジタル身分証アプリ内のミニアプリを紹介。マイナンバーカードの個人認証を生かして行政サービスを提供するミニアプリであり、アプリをスマートフォンなどに入れて個人情報を登録すれば、原子力災害時に自動で避難情報を受け取れるなどの利点がある。

 原子力防災分野で来月の利用開始を見込み、それ以外の防災や県政に関するアンケートも試行。アプリ利用を増やすため、10月に女川町、11月には石巻市や東松島市など原発周辺6市町で1人5千円分の地域ポイントを付与する実証を始める。

 開発検討中のミニアプリはほかにもある。村井知事は将来的な活用の構想も示しつつ「県と市町村、民間企業が一緒になって使えるものにしていきたい。まず5千ポイントでどれぐらい人が入ってくれるか」と述べ、協力を求めた。【熊谷利勝】





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