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進む若者の地元離れ 河南・桃生地区 鍵握る就労と環境整備

 石巻市の内陸部にある河南・桃生地区は東日本大震災後、人口流入に伴って宅地造成が進んだ。一方で働く場や教育施設が旧市内に集中しているため、若者の地域離れに歯止めが効かず、高齢世帯が増加。企業誘致を含む地域振興策はまだ形が見えてこない。

探る地域 課題③

■道路整備と発電所

 河南地区は平成17年の合併時で5013世帯だったが、令和4年3月時点で7315世帯となり、2302世帯増えた。これは震災後、被災に伴う移転で内陸部に宅地を求めた人で生活拠点を移した世帯の増加が要因。一方、人口の比較では700人の増加にとどまり、単身を含む高齢者世帯が中心となった。

 民間で農地を宅地に変えるミニ開発が進んだことも世帯数の増加に影響している。この開発では道路整備を含まないことが多く、住宅整備後、市がやむなく道路を整備することも。限られた予算内でのやりくりとなり、整備箇所は毎年限定的。住宅と主要道を結ぶ接続道の早期の整備を求める声は多い。

 民間が取り組む事業では、須江地区に建設が計画されている液体バイオマス発電所に関し、住民側は計画撤回を求める要望書を市に出している。市に事業許可権限はないが、大気汚染や健康被害、騒音、建設に伴う大型車両の往来など不安は拭えず、反対の声は根強い。

 発電所設置を巡る賛否は、市議選でも重要な地域課題の一つ。立候補予定の新人は「つじ立ちで発電所の話題を盛り込むも須江地区以外では響かない。大事な問題だが…」と住民の反応に戸惑いを見せていた。

ミニ開発が進む河南地区

■雇用の場と公共交通

 桃生地区は、稲作を中心に発展してきた地域。「はねこ踊り」など特色ある伝統芸能を有し、震災後は河南地区と同じく沿岸部からの流入者が増えた。

 三陸縦貫自動車道のインターチェンジが2カ所あり、中心市街地に向かう利便性が高いように見えるが、車利用を除けば地区内の公共交通は路線バスのみ。主要な雇用の場や人を呼び込む誘客施設も乏しく、若者の地域離れが進んでいる。

 市議選で再選を目指す議員は「2年前に大きな工場が閉鎖するなど雇用の場が減り、働き口を他地域に求める人は多い。教育機関も小中学校はあるが、高校はなく、進学後は送迎などで親の負担も多い。職場と就学の面を両立できる旧市内に住まいを求める人が増えている」と危機感を募らせた。

 若者が離れた弊害として、自治会の維持が厳しくなっている地区も多い。住民は「公共交通は難しい課題だが、企業誘致など雇用の場が生まれれば、桃生に若い世代が戻ってくるのでは」と関心を寄せる。

 さらに地域振興策も喫緊課題。沿岸部や旧市内にある誘客施設が桃生地区はなく、前市長が道の駅整備を提案したときは「交流人口の拡大につながる」とにわかに沸いたが、計画はとん挫。齋藤正美市長は新たに企業誘致を掲げているが、まだ青写真が見えないため疑心暗鬼の声も聞く。

 全国的な人口減少社会の中で、自治体の枠組みだけでなく、いかに地域内で移住定住策を打てるか。市議選では、地区単位の持続可能性を探る政策が聞かれそうだ。【横井康彦】





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