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「未来につなぐ芸術文化」①現状 コロナ禍で気付けた必要性

【全5回連載1/5】

 新型コロナウイルスの国内での流行から、間もなく2年を迎える。ワクチン接種が進んだことや、市民レベルの感染対策意識が向上したことで、全国的に感染状況は小康状態になっており、石巻地方でも10月以降、新規感染者はほとんど確認されなくなった。

 ただし、相手はいまだ未知の部分が多いウイルス。今後、いつ感染の第6波が来るかは予測ができず、「コロナ前の生活」がすぐに戻るとは言い切れない状況。むしろ「ウィズコロナ」の中、各分野でどう対応し、未来につなぐか。そのあり方を考えるステージにきている。

 コロナは多種多様な分野に甚大な影響を及ぼした。教育や経済産業はもちろんだが、「人が心豊かに生きるため」に欠かせない芸術文化の分野も例外なく大きな影響を受けた。

 感染拡大が顕著になり始めた昨年4月、全国に緊急事態宣言が発令。「極力人と会わないこと」「必要以上に外出しないこと」が世の常になった。屋内でのひまつによる感染リスクも指摘されたことで、公民館や市民センターなどは一般への貸館を休止せざるを得なくなり、音楽や舞踊、作品制作を軸に活動する各芸術文化団体は一時的に活動拠点を失った。宣言解除後、徐々に貸館は再開したが、依然、感染防止対策は継続。以前通りの活動をすることは困難になった。

 石巻市内で民謡団体を主宰する男性(77)は「この緊急時に芸術文化は必要かという議論が世間で巻き起こり、活動継続自体が後ろめたい気持ちになった」と語る。民謡は発声しなければ練習にならない。だがマスクをしてもひまつをゼロにするのは難しい。メンバーも多くが70代以上の高齢者だったため、リスクを考えて長らく全体練習は自粛し、個人練習に切り替えたが、「皆で集まれないのなら」と脱退した人もいた。「技術向上は最悪1人でもできるが、一番の醍醐味は人との交わり。趣味を楽しみ、成果を発表し合えるところに魅力がある」と話す。

 絵や書などの作品制作団体は地域の文化祭、音楽や舞踊団体は、文化祭のほか、地域のお祭りごとなどを主な発表の場にしていたが、昨年は多くが中止。感染状況が小康状態となった今は、徐々にイベントも再開し始めたが、いまだ「以前のように」とはいかない状況だ。

 コロナ禍で国民が痛感したのは「人と関われることの幸せ」。同時に地域の芸術文化もこれまで「いかに人の心をつなぎ、豊かにしてきたか」が分かる。「芸術文化は不要不急なのか」という議論に賛否はあるが、確実に言えるのは「明るい地域作り」に芸術文化は不可欠だということ。ウィズコロナの現状を見極めた上でどう振興し、未来につないでいけるか。議論すべきはそこにある。


note_次代への軌跡_執筆者_山口-01


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