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「未耕作農地の活用」 ⑤提言 〝坪貸し〟家庭農園計画

 「今後農業者が激減することは確実」「10年経って田んぼや畑を守ってくれる人がいるのか」―。農業関係者への取材で多く聞かれたのは、将来の農業と農地を懸念する言葉だった。担い手が減れば空き農地も増える。農業法人化で大規模に耕作する仕組みが主流となっても集積、集約に含まれなかった農地は、担い手がいなければその機能を失っていく。小さな需要を結びつけるには、まず個人間でのマッチングを担える組織の立ち上げとアピールが先決だと考える。

 その上で、持て余している農地をどう活用してもらうか。コロナ禍で多くのレジャーが心から楽しめなくなった昨今。ワクチン接種後も感染防止対策に努める必要があり、屋外イベントのみが開催しやすいものとなりつつある。巣ごもり生活の中で、徐々に需要を集めたのが、家庭での簡単な野菜作りだ。

 この需要を生かして賃貸住宅や復興公営住宅、戸建てでプランター栽培を楽しんでいる人をターゲットに、希望する坪数の農地を貸し、本格的に野菜の栽培を行えるようにする仕組みを目指してはどうか。密にならず、コロナ禍でも気兼ねなく休日を楽しめる。子育て世帯であれば、子どもの栽培・収穫体験、食育といった教育につなげられる。市民農園も加えていけば、震災後の地域コミュニティー再生にも一役買うだろう。

 地域内での利用にとどまらず、首都圏からの需要にも目を向けたい。「定年後に畑で野菜を育てたい」と考える退職者、「地方で落ち着いた生活をしてみたい」という50代のニューシニアの受け皿を積極的に設けるべき。定住対策で空き家と農地をセットで提供する自治体もあるが、農地だけを月額で借りられるように農地法の要件緩和が図られれば、細かな需要が集合体となり、広域的な農地利用につながるはず。

 最大の利点は耕作者が採算性を求めないこと。あくまで趣味や楽しみであることがポイントだ。地域外の人が週末に1泊2日で農地に手を加えてもらうのも面白い。交流人口を生み出せるほか、地域との縁が将来の定住先選択にもつながる。

 持て余した農地が新たな使い手によって輝きを取り戻し、需要が高まれば農地、そして農業への関心も生み出される。まずは農地と接する機会を。それが次世代育成の一歩であることは、言うまでもない。

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