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石巻・鈴木さん体験談 「なぜ俺だけ 一体どこで?」 

 新型コロナの第6波は、誰がいつ感染してもおかしくない状況となった。「風邪とは全然違います。決して甘くみないで」。石巻市の宿泊療養施設で9日間過ごした同市折浜の鈴木省一さん(44)が体験談を語った。

コロナ感染で宿泊療養

 ▽1月28日=職業は写真家。仙台で仕事を終えて帰る途中、突然悪寒が襲った。今度は体が熱くなるような感覚。経験則からインフルエンザに似た初期症状で、家で熱を測れば39度だった。3歳の長女も発熱して保育所から帰ってきていた。

 コロナ感染を疑って妻が県のコールセンターに電話するが、全くつながらない。とりあえず寝て過ごすしかなかった。

「突然の悪寒から始まった」と語る鈴木さん

 ▽29日=朝起きるとのどに違和感。痛みとまではいかないが、イガイガする。間もなくせきが出始め、関節の痛みもあった。午前にコールセンターにつながり、石巻地方の7カ所の医療機関が紹介された。東松島市内の医療機関に連絡し、すぐに向かった。

 車に乗ったまま抗原検査を受けた。15分程度で判明し、結果は陽性。「やっぱり」。これ以外の言葉は見当たらなかった。

 どこで感染したかを考える。仕事柄、長時間人と接することは少なく、折浜だけに密集地でもない。そういえば数日前、長女の保育参観に行った。でもマスク姿であり、人とあまり話す場でもない。

 自宅に戻るとほぼ同時に石巻保健所から連絡が入った。発症した2日前から行動履歴が確認された。そこから濃厚接触者を特定。検査した長女は陰性、妻も何ら症状はない。「なぜ俺だけ。一体どこで」。最後までこの疑問が解けることはなかった。

 ▽30日=宿泊療養施設か、自宅療養か。保健所から連絡が来るのを待った。のどの痛みはピーク。食べ物を飲み込むどころか、つばがのどを通るだけでも痛い。平熱に戻ったがときどき微熱がある。

 午後3時ごろ保健所から連絡があり、市内唯一の宿泊療養施設となっている石巻サンプラザホテルでの宿泊が決まった。持ち物は県のホームページを参照するように言われ、衣服などをそろえた。手配された車が7時ごろ自宅前に停車した。

弁当を取りに廊下に出る以外、室内で生活する日々が続いた

 車窓から見るいつもの風景。でも心は沈んだまま。コロナ感染は経験したことのないものであり、この先、体にどんな症状が表れるのだろうか。不安があった。

 ホテルのロビーで説明を受けた後、体温計と血中の酸素飽和度を測るパルスオキシメーターを受け取り、指定された3階の一室に足を踏み入れた。連絡は基本的に各部屋の内線電話でやり取りすることになった。

 室内は通常のビジネスホテルのシングルルーム。主に寝泊まりするのが目的であり、決して広くはない。そこで10日近く弁当を取りに行く以外、廊下に出ることはなかった。

 1日の流れは食事が午前7時、正午、午後5時半。体温や血中酸素飽和度、状態を記載する健康チェックは午前7時半と午後4時の2回。このほか、午前8時半と午後7時半に看護師が内線電話で体調について聞き取りを行っている。

1日2回、健康状態を自己チェック

 運動不足への対応でラジオ体操が1日2回放送される。食事は弁当だが、飲食店から取り寄せているのだろうか、副菜のバランスが良く味も上々。ごみは日に3回、指定時間に部屋の前に置き、弁当は廊下に出て所定の場所から取る。

 滞在者は互いに接することがないよう配慮しており、弁当の配置完了の放送後、かち合わないように時間をずらして取りに行く。部屋の目の前が配置場所だったため、足音に耳を澄まし、誰もいないことを見計らって弁当を手にし、すぐ部屋に戻った。唯一、室外に出る機会だった。

 洗濯物は室内の浴室で洗い、不織布の使い捨てシーツはおおむね1週間で交換となる。家族からの差し入れはできないが、インターネットで外部から必要品を買うことは可能。朝の弁当にみそ汁が付くが、それ以外は付かないため、ネットでみそ汁を買った。

弁当は彩り豊か。「ボリュームも味も満足」と語る鈴木さん

 熱は早い段階で下がったが、のどの痛みとせき、鼻水は残り、症状は悪寒が出たときから7日間続いた。部屋にWⅰ-Fⅰも完備され、体調が改善してからは持ち込んだパソコンで仕事もできた。

 退所は原則、発症日から10日過ぎ、なおかつ症状軽快後72時間過ぎたことが目安。退所可否は医師が確認する。この条件を満たした症例では二次感染リスクは低いとされ、陰性確認のPCR検査などは行わない。

 内線電話で確認しても、あす退所と言われることはなく、連絡が来るまで待つ。7日午後2時に退所の連絡があり、帰りの車の手配は自ら行うため、妻に連絡を入れた。療養中、陰性だった長女と妻は家の中にいた。

◇   ◇   ◇   ◇

 今も明確な感染経路は分からないが、長女が通う保育園では感染者もいたという。鈴木さんは「家庭内で防ぐことは困難。今は学校や保育施設での感染が増えており、大事なのは情報共有。犯人探しをするわけでもないので、情報を受け、広げないように対応するのが先決」と話した。

 「ウイルスは今後も形を変えて猛威を振るう可能性がある。ワクチン接種や3密回避など基本的行動のほか、脅威が身近にある今こそ家庭、地域でも考えなければならないことはある。コロナは風邪とは違うので、甘く見ないで。誰しも感染する可能性があるのだから」と警鐘を鳴らした。【外処健一】


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