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石巻地方各地で追悼行事 それぞれの10年に思い深く

天まで届け 祈りの風船 祈念公園で追悼のつどい
一人一人が刻む3・11

 東日本大震災の犠牲者を追悼する「3・11のつどい」が11日、石巻南浜津波復興祈念公園内の「がんばろう石巻!」看板前で行われた。1日を通じて市内外から多くの人が訪れ、それぞれの10年に思いを深くした。震災直後に看板を立ち上げ、つどい実行委員長も担う黒澤健一さんは「区切りではなく、遺族の方にとってはあくまで命日」と来年以降も継続する決意を明かした。【本庄雅之、渡邊裕紀】

 この日は雪が舞った10年前とは打って変わった晴天。午後2時過ぎ、当時はまだ生まれていなかった小学生8人が、震災時のエピソードを元にした絵本「ヒマちゃんの気持ち」(新柵ひろ子さん原作)を読み、書きたい人に充てた手紙を朗読した。

 木村幸瑠さん(石巻小1年)は「もし地震が来たら、困っている人たちを助けたいです。これから先、大変なことがあっても負けないで頑張っていきます」と亡くなった小学生に呼び掛けた。

南浜のつどい (81)

放たれた風船を見上げる参加者たち

 地震発生時刻の午後2時46分には、サイレンの吹鳴に合わせて参加者全員が黙とう。続いて、シンガーソングライターの幹mikiさんが、この日のために作詞作曲した「祈りの歌」を披露。その後は700個の風船を空に放った。

 毎年参加しているという仙台市の佐々原芳夫さん(72)は、妻の二人の姉が南浜町で被災。今も行方不明のままだ。「遺体はないけど墓を作った。ずっと会話はしていて、心の中では生きています」と話し、「昔の物を何か残してほしい」と南浜町の面影を懐かしんだ。

 かつて南浜町に住んでいた女性(52)は毎日のように顔を合わせていた近所の人の名前を慰霊碑で確認。「ずっと来たくないという気持ちだったが、10年ということで前に進んでみようかと思って」と震災後、初めて現地を訪ねた。

311のつどい (42)

看板前には淡く幻想的な光が広がった

 夕刻からは、石巻市の震災による死者、行方不明者数と同じ3千を超すキャンドルを点灯。「3・11追悼」「10年心からの祈り」という追悼と慰霊のメッセージが浮かんだ。コロナ禍収束を願う妖怪アマビエもLED(発光ダイオード)キャンドルで描いた。

 灯ろうには市民が描いた絵とともに「共に生きる」「これからも頑張ろう!」といった言葉も書き込まれ、人々の心をつないだ。同市大街道東の瀬﨑レビさん(38)は「当時を鮮明に思い出す。子どもたちにも震災のことを伝え、教訓として学んでほしい」と話した。


考えて「今は次の震災前」 大川小遺族 佐藤敏郎さん
校舎裏山で配信授業 全国3千人聴講

カタリバオンライン

大川小校舎が見下ろせる裏山から生配信を行った佐藤さん

 東日本大震災の津波で児童、教職員計84人が死亡・行方不明となった石巻市の大川小学校。当時6年生だった次女みずほさんを亡くした元中学校教諭の佐藤敏郎さん(57)は11日、震災遺構として保存される被災校舎の裏山で、「防災と命の授業」をオンラインで開いた。全国約3千人の小中高校生が聴講し、佐藤さんは命を守る防災の本質を訴えた。

 裏山は、もし避難していれば津波から逃れることができたとされている場所。学校からすぐに登ることができ、授業でも日常的に使われていたにも関わらず、児童と教職員は津波襲来直前まで校庭にとどまり、命を落とした。

 佐藤さんは「津波襲来まで50分間もあった。なぜ逃げることができなかったのか」と問い掛け、聴講した児童生徒らと意見交換。さまざまな声を聞いた上で佐藤さんは「県では災害発生想定ができていたのに対策が不十分だった」と指摘した。

 その上で「震災から10年だが、次の『震災前』でもある。『もしも』はいつもの中にあり、平和である今だからこそしっかりと対策し、備えることが命を守ることにつながる。自分と大切な人の命を守るため、日頃の防災訓練もしっかりと想定して臨んでほしい」と呼び掛けた。

 オンライン企画は特定NPO法人「カタリバ」=東京都=が主催する特別プログラムの一環で実施された。【山口紘史】


末弟のこいのぼり空へ 悠々と泳ぐ311匹
大曲浜で太鼓演奏

青い鯉のぼり (107)

復興や鎮魂の思いを込めた音色を響かせた

 震災犠牲者の追悼と地域復興への願いを込めた青いこいのぼりが11日、東松島市の大曲浜玉造神社前に掲げられた。東日本大震災発生日の3月11日にちなんで、311匹のこいのぼりが晴れ渡った空を泳いだ。

 震災時、大曲浜に住んでいた伊藤健人さん(27)が、津波の犠牲となった末弟の律君(当時5)を思って始めた「青い鯉のぼりプロジェクト(PJ)」の一環。毎年こどもの日と3月11日にこいのぼりを掲げている。

 発災時刻に演者らが慰霊と鎮魂の黙とうをささげた後、伊藤さんや県内の太鼓団体有志による復興合同曲「陸奥(みちのく)」が演奏した。大曲浜に津波が到達した午後3時52分からは合同慰霊祭があり、移転先のあおい地区の住民らも合流して手を合わせた。

 伊藤さんは「10年目を穏やかな天候で迎えられたこと、皆さんに集まっていただけたことに感謝したい。これからも11年、12年と歩みを進め、未来を見据え語り継いでいく日にしたい」と思いを込めた。【渡邊裕紀】


夜空彩る慰霊の花火 石巻市長浜町
住民有志打ち上げ

夢と希望の虹花火 (2)

追悼の花火を夜空に届けた(サン・ファン館前)

 石巻市長浜町で11日夜、「夢と希望の虹花火」(同実行委員会主催)が行われた。2―4号玉計50発が海沿いで咲き、震災犠牲者の慰霊と前に進む地域の希望を込めた。

 渡波地区で活動する住民有志の団体「チームわたほい」(遠藤伸一代表)主催。震災のボランティアでつながりのあったNGO災害救援チームフェニックス救援隊、全国土木建築国民健康保険組合ボランティアサークルが協力した。

 打ち上げは午後7時半から始まり、海側の防波堤から約2分間打ち上げられた。事前告知などは最小限にしたため、音に気付いて夜空を見上げる住民の姿もあった。花火はオンラインでも配信された。

 遠藤代表は「さまざまな思いの中で迎えた10年。多くの人に支えられたことに感謝したい」と語った。【渡邊裕紀】


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