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5年かけ町内会軌道に 石巻市のぞみ野・佐々木茂太郎さん(80)

 石巻市ののぞみ野第一町内会で会長を務める佐々木茂太郎さんは東日本大震災当時、大街道南側にあった自宅兼印刷工場で被災した。避難所やみなし仮設での生活を経て、現在は市営新沼田第二復興住宅に暮らし、町内会として地域コミュニティーの再生に注力する。10年を前に新型コロナウイルスが各種行事やサークル活動に影響を及ぼしているが、復興を階段に例えて「8割以上進んでいる」と歩みを振り返った。

 佐々木さんは震災当時、自宅に併設していた印刷工場で片付けをしていた。大きな揺れから津波の襲来を予測し、避難準備を始めた。防災無線でも30分ほどで津波が来ると伝えられたが、必要書類などを集めているうちに30分近く経過。家の外にいた佐々木さんに黒い波が迫っていた。

復興の階段 佐々木さん

コミュニティー形成に尽力した佐々木さん

 慌てて家の高い部分に上がるも平屋の自宅はどんどん水没。妻と屋根に上り、流されてきた2階建て家屋に飛び移って津波に耐えた。その晩、屋根に積もった雪を洗面器に集めて飲み水を確保。寒さを耐え抜き、2日後に自衛隊のボートで救助された。

 大街道小学校で避難生活を送り、民間の賃貸住宅などを経て、5年ほど前に新沼田第二復興住宅団地へ入居した。団地に暮らす75世帯は、震災以前の居住地がバラバラで、知り合いも一人だけだった。団地会を立ち上げることとなり、過去の町内会経験から周囲の推薦を受け、会長を任されることになった。

 新設の団地会運営は、長年引き継がれてきた町内会運営とは大きく異なった。顔を合わせるところから始まり、細かなルールや予算編成、交流行事をゼロから考え、周囲の理解を得るまでにも時間がかかり、周辺の団地では最後の団地会発足となった。

 重責をこなしたのもつかの間、次は町内会を作ることに。対象世帯は75世帯から300世帯に広がり、佐々木さんは第一町内会の会長を任されることになった。

 再び迎えた多忙な日々。気付けば入居から5年が過ぎ、地域に連携が生まれてきた。夏祭りやクリスマス行事、忘年会が恒例となり、昨年末には子ども会を発足するまでに至った。「震災で仕事や家を失くし、発災後の2年間で普通の2倍歳を取った。気分が落ち込みそうな時には、パークゴルフ仲間に支えられた。そんなこんなで文句を言いながらも、町内会を軌道に乗せることができた」と話す。

 集会所を活用した健康麻雀サークルも立ち上げ、お茶会など住民交流の機会も年々に広がりを見せる。町内会の資料づくりも丁寧さを一貫。「〝まで〟(丁寧)過ぎて後任が大変だと言われる。地域の出来事を新聞にして配布することも自慢の活動」と誇らしげ。

新型コロナの影響で 8段目

 そんな佐々木さんは80歳という年齢と震災10年で、今の立場を後任に託そうと考えている。「これまで引っ張ってきたつもりが、今では引っ張られるようになった。コロナで足踏みしているが、しっかりと引き継いでくれるはず」と手応えを口にする。

 震災からあと半年で10年。「町内会は10年、20年と続く。過ごしやすい環境が維持されれば」と期待を寄せた。【横井康彦】


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