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コミュニティーの形成急務 旧市内西部地区 中心市街地は活性道半ば

 任期満了に伴う石巻市議選(22日投開票)は、15日の告示まで約1週間となった。県内4位となる554万平方㌔㍍の広大な面積に海、山、川の豊かな自然を有する石巻市は、旧北上川河口部から東西に都市が形成され、人口約13万7868人の県下第二の都市。しかし、11年前の東日本大震災の津波で沿岸部の住居は軒並み被害を受け、内陸部への移転が進んだ。震災と人口減少に伴う新たな市政課題が出ており、立候補予定者はどのような政策を重視し、選挙戦で訴えていくのか。5地区に分け、地域課題を掘り下げていく。第1回は旧北上川を境にした旧市内西部を見てみた。

探る地域 課題①

■にぎわい創出

中央の旧北上川河口に3月末、津波や洪水、高潮に備えた河川堤防が完成。川湊(かわみなと)として発展してきた歴史があり、これまで堤防がなかった。国が行った堤防整備は市の復興のまちづくりと一体的に進められ、堤防と一体の広場などをにぎわい創出に生かそうとしている。

 一方で、石巻駅前から川沿いにかけた中心市街地は、商店主の高齢化や後継者不足からしにせの閉店が続く。新型コロナによる影響も大きく、一部で民間主体の再開発が完了したものの、後に続くはずの小規模な開発は足踏み状態。夜の繁華街も寂しい。まちの顔である中心市街地の活性化はまだまだだ。

 さらに河口部では昨年、被災跡地に南浜津波復興祈念公園が開園。船舶陸上係留施設の南浜マリーナも完成した。今年4月には震災遺構として整備された旧門脇小学校が一般公開となり、防災学習や交流人口拡大への活用が求められる。

郊外へ街が拡大した旧市内西部

■集団移転と高齢化

 西の釜・大街道地区では被災市街地の区画整理事業が行われ、3月に全線開通した高盛り土道路の門脇流留線より海側は産業用地となった。空き区画は多く、再選を狙う現職市議は「定住人口を増やすために、企業誘致による働く場所が必要だ」と訴える。

 石巻市町内会連合会会長で地元の井上誼一さん(82)は「震災で出ていく人もいれば、復興公営住宅や民間のアパートができて入ってくる人もおり、高齢化やコミュニティーの形成が課題。コロナ禍で交流が持ちにくい」と問題提起。地区では雨水排水ポンプ場の新設が終わっておらず、防災面でも課題を残す。

 津波の被害がなかった蛇田地区は被災した人の集団移転地としての新市街地が造成され、人口が急増。震災前の約1万8千人に対して3月末現在で約2万4千人となっている。一層の商業集積が進み、新しい駅も開業。蛇田小、中学校に通う児童生徒も増え、市内一の在籍数になっている。教育施策を重視する新人の立候補予定者は「よく家庭教育が重視されるが、共働きの親が多い。親の負担を軽減する観点から学校教育の充実を求めたい」と力を込めた。

 蛇田地区行政委員区長会会長の永峯一男さん(75)は「震災で急に地区が大きくなった」と戸惑い、地域課題を行政と協働で解決していくための住民自治協議会設立を急ぐ。老朽化した市営住宅が多い地区でもあり、市は他の復興公営住宅の移転を促している。向陽町などかつてのニュータウンも高齢化し、増加していた人口も最近は微減となっている。

 被災を免れた他の地区でも高齢化が進み、空き家、空き店舗が増加。市街地とはいえ、生活の足の確保や買い物が課題になる。中里の県石巻合同庁舎跡地や大橋の仮設住宅跡地などをどう活用していくかを含め、空洞化させない方策が必要だろう。【熊谷利勝】





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