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小中の段差解消へ連携 河南地区の8校 ICT授業で個を重視

 石巻市立鹿又小学校の卒業生が進学する河南東中学校(猪股徳幸校長・生徒308人)は、小中連携で情報通信技術(ICT)を活用しつつ、本年度から鹿又小と同じく学び合いを導入した。両校はもとより河南地区8小中学校全体で児童生徒の主体的、共同的な学習が進んでおり、こうした連携強化は学習内容や人間関係、環境変化に適応が難しくなる「中1ギャップ」の解消にもつながりそうだ。

■主体的、共同的な学び

 河南東中の数学の授業では、教師がタブレット端末を片手に生徒の様子を見ながら平方根の計算について説いていた。端末に書き込んだデータは教室前方にある電子黒板に投影され、室内のどこからでも授業は円滑に進められる。

 数学を教える菊田望教諭は「ICTで授業テンポが上がり、生徒自身が考え、協力して問題を解く時間の確保につながっている」と語った。授業の最後には単元の振り返りがあり、各生徒がそれぞれのタブレットに反省点を打ち込む。そのデータは教師に共有されるため、個々の現状も把握しやすい。

河南東中でも本年度から学び合いの授業を導入

 小中で連携した学びの推進は2校に限った話ではない。地区全体や河南東中学区(鹿又小、須江小、和渕小)、河南西中学区(北村小、広渕小、前谷地小)の中学校区単位でそれぞれに進められている。

 令和4年10月には河南地区の教員計146人を対象に「学び合い研修会」があった。須江小で算数の授業を見学後、遊楽館で主体的かつ共同的な学びの推進について講話を聴講した。後日、各校で授業の改善を担う研究主任8人は他県の取り組みも視察した。

タブレットを利用し電子黒板を活用して授業を行う

 また、中学区ごとの課題や実情に応じて中1ギャップにもアプローチ。東中学区は不登校の未然防止、西中学区は学力向上とし、卒業後に入学予定の6年生を対象に中学校生活を滞りなく過ごせるよに働きかけている。

 このうち東中学区は年5、6回ほど機会を設定する。本年度は中学校の教師が小学校で出張授業したほか、今後は生徒有志が企画するイベントに小学生を招く予定だ。

 小中だけでなく小学校間の交流の場も設ける。総合学習の時間を使い、各校の6年生がタブレット端末で自己紹介動画を作成。そのデータを各校で共有し、今後、同級生となる他校の児童を知るきっかけ作りも行っている。

 石巻地方2市1町の各校で学力向上を主眼とした小中学校間の連携強化が進められている。実情はさまざまで、アプローチの手法は異なる。唯一の解法もないため、現場は難しいかじ取りを委ねられている。【泉野帆薫】

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