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石巻が育てた天才彫刻家たち 第1部 英吉と達⑧ 令和元年 時空を超えた初対面

 私の手元に英吉の娘、高橋幸子さんの木版画作品「風の又三郎より」があります。これは、幸子さんが営む幸工房(神奈川県逗子市)を訪問した時の記念の品です。

②木版画(2)

石巻市民にはおなじみの幸子さんの木版画

 平成30年9月に旧観慶丸商店で、彫刻家高橋英吉を知る映画「潮音」上映会があり、見に行きました。上映後、来場していた幸子さんが紹介されました。この時は話しかけることもできず、遠くから見るだけでした。

 その後、英吉と達の交流の資料を幸子さんに送りました。幸子さんからの返事にあった励ましの言葉が原動力となり、石巻市図書館で英吉の資料をとことん調べました。そこで出会った本が、第4話で触れた「高橋英吉小伝 海の三部作への序章」(鈴木多利雄著、幸工房)です。いつでも手に取ることができるよう1冊ほしいと思いましたが、身近なところに売っていなかったので、幸工房まで買いに行くことにしました。そして、この時ある考えが頭の中に浮かんだのです。

①初対面

(左から)高橋幸子さん、小室穣嗣さん、筆者。複合文化施設でぜひ2人の対談を実現してほしい(令和元年10月)

 令和元年の秋、逗子駅で降りると幸子さんが待っていてくれました。幸工房では木版画制作のことを教えてもらったり、英吉と達の交流について話したりしました。そして「また明日来ます」と言って別れました。

 その足で私は、東京都杉並区永福に行きました。ここには、達が伊達政宗公騎馬像を制作した旧アトリエ(現在はアパート)と隣接する家があります。平成28年から何度か足を運んでいますが、そこで息子の穣嗣(じょうじ)さんと会い、英吉と達の交流について話した後「また明日会いましょう」と言って別れました。

 翌朝、新宿駅で穣嗣さんと合流。再び逗子駅で降り、幸工房へ向かいました。私の頭の中に浮かんだある考えとは、昭和初期に出会った英吉と達のお子さんに会ってもらうことでした。お二人には事前に電話し快諾していただきましたが、何せ初対面。自分から提案しておきながら、不安な気持ちも少しありました。

 しかし、心配は無用でした。「父がお世話になりました」から始まり「昭和の初めは家の周りが田んぼばかりだったね」「草花がたくさん生えていて、よく蛙が鳴いていたね」などと昔の話で盛り上がりました。

 私はそれを聞いてうなずくだけでしたが、何か時空を超えた空間にいるような不思議な気持ちになりました。そして再びある考えが…。

※豆情報 「海の三部作への序章」(880円税込)は、まねきショップ(門脇町2丁目)、石巻まちの本棚(中央2丁目)で取り扱っています。(鈴木哲也)

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