NHK交響楽団 30年ぶり石巻公演 「感無量」トランペット奏者 安藤さん凱旋
NHK交響楽団の30年ぶりとなる石巻公演が20日、マルホンまきあーとテラス=石巻市開成=で行われた。同市向陽町出身のトランペット奏者、安藤友樹さん(38)が古里に凱旋。海外でも知名度が高い尾高忠明さんが指揮する演奏は、世界レベルの美しさと壮大なスケールが持ち味。4月に開場した施設のオープンを記念した演奏会では、大ホールの響きの良さがいかんなく発揮された。
午後7時すぎ、オーケストラのメンバーがステージに続々入場すると、それだけで大きな拍手が沸いた。クラシックファンには待ちに待った日本を代表するオーケストラの「N響」。平成16年のイベント出演や復興関連の学校行事で演奏したことはあるが、本格的な公演としては旧石巻市民会館で行って以来30年ぶり。
N響石巻公演 最上段右から2人目が安藤さん
安藤さんは、2人のトランペット奏者の1人として全曲に参加した。演奏したのは、ベートーベンのバレエ音楽「プロメテウスの創造物」序曲など。ソロはないが、ブラス部門をしっかり支えた。
ブルッフ「バイオリン協奏曲第1番ト短調作品26」では、ソリストの金川真弓さんが緩急自在の演奏でバイオリンの魅力をたっぷり披露。後半、ブラームス「交響曲第1番ハ短調作品68」では、弦楽器とブラスの掛け合いから終盤の盛り上がりに流れていくような音の連なりで聴衆を引き込んだ。
一曲ごと盛大な拍手
山形県での公演を終えて石巻入りした一行は、この日昼に同ホールでリハーサル。尾高さんが「ここは安藤さんの古里です。皆さんベストを尽くしましょう」と69人の団員に呼び掛けた。安藤さんへの気遣いと団員のリラックスを誘うマエストロの優しさだった。
コロナ禍もあって大ホールは満席にならなかったが、マスク姿の聴衆は、一曲終わるごとに盛大な拍手で演奏に答えた。
予定のプログラムを終えると、石巻市に何十年ぶりかで訪れたという尾高さんは、客席に語り掛けた。「木管楽器も、この壁も木でできています。演奏された音楽が、溶け合って皆さん(客席)にそのまま届いていく。ここは素晴らしいホールです。NHKに持って帰りたい」とホールを絶賛した。
石巻西高同級生誇り
両親や友人らが詰めかけて「緊張した」と言いながらも、安藤さんは終演後、「感無量です」と笑顔を弾けさせた。「音楽を始めた場所に帰ってきて、発表できる場が持てるなんて幸せ。石巻の皆さんの温かい拍手がすごくうれしかった」。ホールについては「とても響きがいい。ステージからの眺めもおしゃれであり、これから石巻の文化芸術が盛り上がれば」と期待した。
「これから石巻の文化芸術が盛り上がっていけば」と話した安藤さん
母校である蛇田中学校から吹奏楽部の顧問が楽屋にいた安藤さんを訪ねて「ぜひ教えてほしい」とうれしいオファーもあった。
石巻西高時代に同じ吹奏楽部だったという同級生の日野美佳さん(38)=南境=は、客席から手を振ったら安藤さんが気付いてくれたと喜ぶ。「当時から努力家。同級生がN響にいるのは誇り。また石巻で演奏して」と感慨深げに話していた。
演奏を聴き終えた古川学園吹奏楽部の菅原悠真さん(3年)は「一音一音の響きがすごくて感動しました。とても刺激され、勉強になりました」、黒木繁さん(72)=石巻市広渕=は「テレビで見るのとは違って生の迫力は言葉にならないくらいすごい。さすがだと思った」などと心に残る一夜になった。
なお、コロナの感染状況悪化でN響東北ツアーは石巻公演で最後となり、予定されていた盛岡(岩手県)、むつ市(青森県)は中止となった。【本庄雅之】
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