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語り部の定期講話始まる 復興公園周辺で月2回 被災地つなぐ玄関口実践

 東日本大震災の伝承に取り組む公益社団法人3・11みらいサポートは、今月から石巻南浜津波復興祈念公園周辺で語り部による定期講話を始めた。公園内の「みやぎ東日本大震災津波伝承館」は、県内の被災各地をつなぐゲートウェイ(玄関口)の役割が期待されており、官民連携でその実践を目指す試み。同館をはじめ公園内の市民活動拠点、近隣にある同法人の伝承交流施設「MEET門脇」などを会場とし、月2回程度、週末に開く。

 同公園で継続的に活動する民間団体の参加型維持管理運営協議会伝承部会が共催し、国交省東北国営公園事務所が場所提供で協力。初回は17日に津波伝承館であり、「やまもと語りべの会」の井上剛さん(64)が講話した。伝承館は6月に開館したばかりで、式典以外の催しで使うのは初めて。市民や市外の学生ら35人が聴講した。

 井上さんは、被災校舎が遺構となった旧山元町立中浜小学校の震災当時の校長。学校の屋根裏部屋に児童ら約90人を上げ、犠牲者を出さなかった津波襲来時を語り、「最善の方法ではなかった」と回顧した。

津波伝承館で初の語り部定期講話 (17)

震災遺構中浜小への来訪も呼び掛けた井上さん

 学校は海から約400メートルにあり、約1.2キロ先の高台まで徒歩20分。間に合わないと判断し、屋根裏部屋の避難は賭けだったという。結果、津波は足元を抜けていき、ぎりぎりの状況だった。「あなたならどうする」と問い掛ける井上さんは、日常からの防災に対する「(講話の)受け手の意識を変えたい。無駄をよしとして動く人を増やしたい」と訴えた。

 公園は東北の被災3県で1カ所ずつの国営追悼・祈念施設が整備され、中核的施設は県が国から一部を借りて津波伝承館として被災や復興の状況を紹介している。「思うように伝わらない部分は、実際に見て感じてほしい」と井上さん。県南の遺構は中浜小しかなく、伝承館を玄関口として来訪するきっかけになることを望んだ。

 次回は8月1日午前11時から津波伝承館で、震災当時、東松島市大曲小5年生だった東北学院大の雁部那由多さんが講話する。参加無料、事前申し込み不要。【熊谷利勝】


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