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漁業用かご10年ぶりに戻る 女川町「おかせい」 1500キロ先 徳之島に漂着

 東日本大震災で流出した漁業用のかご(通称アワビかご)が10年の時を経て、約1500キロメートル先の南の島から女川町に戻った。震災をめぐるドラマのような奇跡が、また一つ―。【本庄雅之】

 女川町の鮮魚店「おかせい」=(株)岡清=の関連会社に10日、「震災で流されたお宅のかごでは」と電子メールが送られてきた。差出は鹿児島県の離島、徳之島の人からだった。添付された写真を確認すると、「女川岡清」の文字がはっきり見える。流出した養殖用の数百個の一つに間違いなかった。

おかせいのかご (3)

10年ぶりに女川に戻った漁業用かご(右)

 岡明彦社長ら社員は喜ぶと同時に「信じられない」と一様に驚いた。さっそくメールでやりとりし、24日に現物が届いた。

 同店広報担当の近藤秀伸さんによると、拾得したのは一般の人で、海岸に流れ着いたかごを見つけたという。かつて南三陸町の郵便ポストが沖縄県の西表島で見つかった例があり、海流に乗ってハワイ回りでたどりついたのでは、と言われたことがある。近藤さんは「そういう可能性もあるでしょうね。約1500キロ離れたところで見つかったのは本当にすごい。うれしい限り」と顔をほころばせた。

note用おかせいのかご

 プラスチック製のかごは、元の青色が確認できないほど白く変色していたが、縦56センチ、横39センチ、高さ28センチの形状に変わりはなく、欠けたり、壊れたりもしていない。

 偶然にも震災から10年というタイミングでの発見。かごは今回の経緯を書いたパネルとともに店内に展示する考え。近藤さんは「この10年、皆さんそれぞれに喜怒哀楽があったと思う。かごを見て思いをはせるきっかけにしていただければ」と話していた。

 コロナ禍が落ち着けば、岡社長が徳之島を訪れるなど物語を紡いでいくという。


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