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挑戦に年齢関係なし 39歳で石巻専修大入学 塾経営・武山明美さん

 スキルアップで「社会人が大学で学び直す」という話は今でこそよくあるが、20年前はまだ珍しかった。石巻市立渡波小学校の裏門隣で学習塾「A・T・スタディ・ルーム」を営む武山明美さん(59)は、経営学を学ぶため39歳の時に石巻専修大学に入学。仕事と育児の合間を縫い、4年間通い続けた。「有意義な学びで夢だった塾の経営ができ、生徒のよりよい指導に生かされている」と武山さん。挑戦に年齢は関係ないことを体現した。

遠回りでも夢実現

 武山さんは、仙台市出身で第二女子高校(現仙台二華高)卒。勉強は好きだったが、過熱化していた当時の受験戦争に嫌気がさし、大学には進まなかった。

 航空会社や旅行会社への入社を目指して1年間、専門学校に通いつつ就職活動に挑んだが、どこも不採用。「大卒でなければ就けない仕事や役職があることに、その時初めて気付かされた」と振り返る。

 ツアーコンダクターの派遣会社などに就職した武山さんは、26歳で結婚し、石巻市に嫁いだ。一男一女を育てつつ家庭教師や英会話教室講師などアルバイトで家計を支えた。

 保険会社の嘱託社員だった39歳の時、転機が訪れた。営業先で会計や簿記といった知識の必要性を痛感。スキルアップに関心が向き、石巻専修大学の経営学部に入学した。

 育児と仕事、長男のスポ少送迎などの合間を縫って大学に通い続けた武山さん。「大変だったが、それ以上に毎日が楽しかった。素晴らしい教授陣に多様な学び。娘ぐらいの年齢の友人もできた」と笑う。できる限り多くの授業を受け、簿記会計や経営、マーケティングのほかプログラミング、化学、中国語など幅広く習得。4年間で約220単位を取得した。茶道や英会話サークルにも所属し、20年越しのキャンパスライフを謳歌した。

自営の塾を開き子どもたちに勉強を教える武山さん

 「保険営業の一助にしたい」という当初の考えは消え、むしろ4年間で得た豊富な知識と技術で〝実は夢だった〟という塾経営の道を志した。人に勉強を教えるのが得意だった武山さんは、高校の非常勤講師や塾講師をして現場経験を積みながら開塾資金をため、平成25年に「A・T・スタディ・ルーム」を設立した。

 授業は小学生に英語を週1回、中学生に英語と数学を週2回行うほか、要望によって社会科や理科、プログラミングや速読も教える。放課後はもちろん授業がない日や休日も塾を開放。自主勉強の場として使えるなど自由度を高めた。

 武山さんは「ほとんど児童館のような塾だが、ゆとりがあれば自主性が育まれ、心が落ち着く居場所にもなる」と話す。受験戦争を体験してきたからこそ、児童生徒の心境にも気を配る。

 今年は開塾10年の節目。「私が得た総合的な学びを生徒に還元し続けてきただけ。問題が解けたときの満足気な顔を見るたび、塾をやって良かったと思える。大学での学びがなければ今はない。あの時の決断に間違いはない」と胸を張る。

 これからの考えを問えば「夢がかなったのでまずは現状維持。強いて言えば借りた奨学金の完済かな」と苦笑い。でも、どこか充実感にあふれていた。【山口紘史】





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