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過疎顕著 空き家の隣も空き家 河北・北上地区 既存施設の有効活用が鍵

 北上川を挟んで広がる石巻市の河北、北上地区は山、川、海がそろった風光明媚な土地。震災の復興復旧は進んだが、まだ危険箇所があり安心安全なまちづくりの進展が望まれている。一方、少子高齢化への有効策は見当たらないものの、道の駅「上品の郷」というお宝施設を軸に、今後の可能性に期待がかかる。

探る地域 課題④

■増水で堤防決壊恐れ

 両地区にとって重要課題と言える北上川の支流にかかる3つの橋の架け替えは、本年度中に終える見通し。地盤沈下した堤防の修復で遅れていたが、ようやく動脈が整う。

 だが、依然として増水による堤防決壊の恐れはあり、大型排水機場の建設は長年の悲願のまま。北上川の支流にかかる馬鞍橋は、度重なる地震や老朽化で地面とのずれが目立つ。山間の沢も、令和元年の台風19号の時に氾濫した後、対策が講じられていない箇所がある。まだまだ防災に不十分な実情で、住民にとって切実な問題だ。

 三陸自動車道は青森までつながって利便性が増したが、河北インターチェンジで下車する車が減少。一時的な現象ならいいが、インターの近くに構える道の駅「上品の郷」をあらためてアピールすべきとの声もある。県内の道の駅で唯一、温泉施設が併設されている強みをどう生かすか。

 少子高齢化には解決策が見当たらない。立候補予定の新人は「あいさつ回りに行って空き家の次はまた空き家というのが多い」と過疎の現実に驚く。空いた土地はあっても企業誘致は難しい。「個人の起業家を呼び込み、このあたりの特産品と結びつけるなど独自の工夫を考えたい」と頭を悩ませていた。

■がけ崩れの危険性

 北上地区も北上川に関する防災対策は河北地区と同じ。加えて海からすぐに山が迫る独特の地形が悩みの種とされ、地震や豪雨のたびにがけ崩れの危険にさらされている。特に小滝、崎山地区は対策工事が待たれる。

 インフラでは県道河北北上線の拡幅工事が行われ、石巻赤十字病院など大きな病院へ30分程度で行ける道筋がついた。地元の声が届いた結果だ。

被災跡地に公園などが整備された北上地区

 少子高齢化対策で現職は「何とかしなければいけないが、これといった策がない」。かつて商店があった地域も津波で流され、更地になって人が戻ってこない。買い物難民や障害者をサポートする方策が求められる。

 住民の足として市民バスが重宝されているが、便は少ない。今年4月に北上から鹿又駅まで朝の便が増えて通勤通学者に喜ばれた。これも住民の声が届いた結果であり、地元の声を救い上げる重要性を示した一例だ。

 町の活性化は、震災後途絶えていた北上地区最大のイベント「にっこりまつり」が開催できれば、波及効果が期待される。美しさで知られる白浜海水浴場は、コロナ禍で2年間休業したが、再開できれば交流人口の増加が見込める。オランダ式次世代施設園芸のデ・リーフデ北上には昨年カフェが新設された。

 防災、インフラ整備を進める案を示しながら、魅力あるスポットを有効活用する施策を示すことが共感を呼ぶはずだ。【本庄雅之】





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