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石巻市で震度6弱観測 10年前の恐怖揺さぶる 「津波なし」建物などに被害

 13日午後11時8分ごろ、福島県沖を震源とする地震があり、蔵王町や福島県などで最大震度6強、石巻市桃生町で6弱、同市大街道や泉町、東松島市は5弱、女川町は4をそれぞれ観測した。津波はなかったが、石巻地方の各地で建物の一部損壊、漏水、地盤沈下や漁港岸壁のずれなどの被害が相次いだ。県内で6強を記録したのは平成23年4月7日以来およそ10年ぶり。気象庁は「東日本大震災の余震とみられる」とし、今後1週間は震度6強程度の揺れに注意が必要と呼び掛けている。【山口紘史】

 気象庁によると、震源の深さは55キロ、地震の規模を示すマグニチュードは7.3と推定。この地震で宮城、福島の一部で6強、さらに北海道から中国地方の広い範囲で震度6弱―1を観測した。

 石巻地区消防本部によると、石巻市と東松島市で計4人を救急搬送。いずれも命に別状ないが、石巻市の72歳男性と東松島市の84歳女性はそれぞれ大腿骨を折る重傷という。JR石巻線、仙石線、仙石東北ラインは地震発生直後に運転停止し、点検作業を経て14日午後2時までに全ての路線が再開した。

 また東松島市では赤井地区を中心に134戸が停電したが、同日午前5時半頃までに復旧。東北電力女川原発でも異常はなく、日本製紙石巻工場も発電機などの安全装置が正常に発動し、大きな被害はなかった。同工場担当者は「発災直後に工場周辺で響いた音は安全装置が発動した時の音。異常ではないので安心してほしい」と話した。

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水道施設が被害を受け、各地で道路上に水があふれた
(東松島市赤井川前地区)

 石巻地方の自治体では発災直後にそれぞれ災害対策本部を設置した。石巻市では地震直後、青葉中学校に1人が自主避難したが、14日午前1時過ぎに帰宅。公共施設などに大きな被害はないものの、時間経過とともに関係機関や市民から道路のひび割れ、民家のブロック塀損壊、復興住宅のエレベーター停止といった細かな被害の報告が相次いだ。行政庁舎も軽微な被害があり、市役所5階で天井裏の配管から水漏れが発生。新たに完成したマルホンまきあーとテラス(複合文化施設)でも大ホールの音響反射板を固定する全6本の棒が折れたが、開館時期に変更はないという。

 東松島市では宮戸地区の里浜漁港で岸壁が接合部から15センチ離れる被害があった。女川漁港でも西側岸壁が最大約20センチ地盤沈下し、中央や東側でも2―5センチ沈んだ。仙台塩釜港石巻港区、石巻漁港でも岸壁のわずかなずれや亀裂があったが、いずれも業務に支障はないという。

 来月11日に東日本大震災から10年となる石巻地方を再び襲った強い揺れ。人々の記憶を呼び起こし、緊張の中で不安な夜を過ごした。

 石巻市中央の「料亭とり文」の鴫原忠秋総支配人(51)は「震災を思い出させ、『また来たか』と思ったが、店に目立った被害はなかった。3月11日を前にした自然災害。有事の避難誘導や連携の重要性を改めて考えさせられた」と話していた。

 仙台管区気象台などによると、今回の地震は海側から日本列島の下に沈み込む太平洋プレート内部で起きた逆断層型。震源が55キロと深く、海底面の変動が小さかったため、津波はなかったという。

 15日は発達する低気圧の影響で石巻地方も激しい雨が降った。同気象台は「地震で地盤が緩くなっている可能性がある。土砂災害の危険も高まるので注意してほしい」と呼び掛けている。


石巻と東松島漏水18件 修繕で最大78戸断水

 石巻地方広域水道企業団によると、この地震により、構成市の石巻と東松島で計18件の漏水があり、修繕のため78戸で最大4時間半断水した。

 漏水の内訳は石巻市が中里、大街道、稲井、須江、北村、鹿又などの一部12件、東松島市が矢本や宮戸など6件。地震による管路の破損のほか、石巻市あゆみ野駅南側や石巻赤十字病院付近交差点などでは地震直後、空気弁に不具合が発生し、地上に水が噴き出した。

 水道企業団は事前に断水を周知した上で14日午後4時55分までに漏水箇所の修繕を終え、給水車を出動する事態は避けた。【熊谷利勝】


建物損壊、地盤沈下相次ぐ 1週間は警戒怠らずに
河南給食センターで天井一部崩落

 宮城、福島両県で最大震度6強を観測した13日の地震は、津波の発生こそなかったものの、公共施設や民家などの一部損壊、道路のひび割れ、地盤沈下や漏水など多くの被害を出した。石巻市河南学校給食センターでは調理室の天井の一部が崩落。市教委は衛生管理の面で同センターが提供する河南地区の8小中学校の給食について15日は中止し、対象校の児童生徒は弁当持参や午前授業などで対応した。【山口紘史】

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天井の一部が崩落した河南学校給食センター

 市教委によると、同給食センターでは13日の地震の影響で調理室の天井の一部(縦2メートル、横1メートル)が崩落し、床に破片が散らばったほか、戸のガラスにもひび割れが生じた。職員と業者で清掃、点検作業し、15日午後までに応急措置的な修繕を施した。15日は同センターで調理する広渕、須江、北村、前谷地、和渕、鹿又の6小学校と河南東、河南西中学校の給食を中止。16日以降は協議中という。

 中津山第二小ではパソコン室にある特殊暖房器具のタンクから石油が噴き出し、広範囲にわたって室内の敷材にしみ込んだが、そのの他の教室には大きな被害はなかった。こうした建物被害のほか、2市1町では軽微ながら道路のひび割れや地盤沈下も発生した。

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地盤沈下でタイルブロックの一部が浮き上がった
(東松島市コミュニティセンター)

 4月から施設の大規模改修が予定されている東松島市コミュニティセンターでは、発災直後に職員が点検。施設入り口付近で地盤沈下が確認され、タイルブロックの一部が浮き上がったほか、ボイラー用の水道管の一部が破損した。

 千葉義信センター長は「改修前の施設であり経年劣化はしているが、大きな被害はなかった。今のところ運営に支障はないが、利用者の安全を最優先に今後1週間は特に警戒したい」と話した。


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