30年ぶりに「N響」公演 トランペット奏者安藤さん(石巻出身)出演 原点は川開きパレード
「素直にすごくうれしい。めちゃくちゃ楽しみです」。マルホンまきあーとテラス=石巻市開成=で初めてオーケストラによるクラシック公演を行うNHK交響楽団のトランペット奏者、安藤友樹さん(38)は石巻市向陽町出身。これまでも石巻で演奏したことはあるが、オケの一員としてホールに立つのは初めて。公演は8月20日午後7時開演だ。
電話インタビューの声は終始明るかった。書道家だった祖父の葬儀に参列して以来、約2年ぶりの石巻。「小さい頃からつながりのある人たちに自分の演奏を聴いてもらえるのはすごく幸せ」。日本を代表するオーケストラの団員としての凱旋に胸が弾む。
NHK交響楽団©NHK Symphony Orchestra, Tokyo
N響が石巻にやってくるのは平成16年以来だが、この時はイベントに招かれたもの。主催の地方公演としては丸30年ぶりになる。
そのN響に石巻出身者が在籍するのは、ファゴット奏者の井上俊次さん(現在は読売交響楽団)に次いで2人目。井上さんは、閉店した楽器店「サルコヤ」=同市中央=の次男で、安藤さんにとっては東京芸大の先輩に当たる。
指揮者:尾高 忠明 ©Martin Richardson
幼少期からピアノを習っていた安藤さんがトランペットに目覚めたのは、向陽小学校5年生の時。石巻川開き祭りで6年生の鼓笛隊パレードに「かっこいい」と思ったのがきっかけ。上級生から楽器を引き継ぎ、トランペット人生が始まった。
練習方法はほぼ独学。6年生では、あこがれだった川開き祭りのパレードで「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」や校歌を奏でた。このころは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「スター・ウォーズ」などの映画音楽が好きで、よく聴いていたという。
安藤友樹さん(38)
石巻での一番の思い出は「石巻西高の吹奏楽部で3年間頑張ったこと」。当時、吹きっさらしで強い風にあおられたことを覚えているという。若者にメッセージを求めたら「夢を追うことはすごく大事。楽しく真面目に頑張ってください」と返ってきた。埼玉県朝霞市在住。妻の尚子さん(37)もトランペット奏者で長女、長男と4人家族。
蛇田中、石巻西高では吹奏楽部に所属。西高では最初はホルンに回された。その後、仙台フィルハーモニー管弦楽団の森岡正典さんにトランペットを習い始めた。満足な音が出ないのに、志望大学を聞かれ「東京芸大」と答えて驚かれた。
が、生来の負けず嫌いで腕を上げ、本当に東京芸大に進学。卒業後は、引っ越しやコンビニおにぎり製造などのアルバイトをしながら、熊川哲也さんのKバレエカンパニーのオケにゲスト出演するなどフリーで活動。東京フィルを経て平成29年にN響に入団した。
バイオリン:金川真弓 ©Kaupo Kikkas
老朽化と震災による被災で、石巻市民会館がなくなって「喪失感があった」という安藤さん。「いい演奏をして石巻の皆さんに喜んでいただけるよう頑張りたい」と熱演を誓った。
曲目は、ベートーベンのバレエ音楽「プロメテウスの創造物」序曲など。指揮は尾高忠明さん、バイオリンは金川真弓さん。チケットは、まきあーとほかで発売中。S席6千円円、A席5千円、B席4千円。【本庄雅之】
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