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日本1周挑戦 石巻を通過 牡鹿観光で一宿一飯の恩義 40カ国自給自足旅の夫妻

 自給自足で40カ国以上を旅する山田達さん(24)、山崎暁奈さん(32)夫妻が先日、自転車で日本を1周する旅で石巻市を訪れた。国道を南下していた2人は、偶然通りかかった不動産建設会社(株)牡鹿観光=石巻市門脇=に「寒さをしのぐ場所を貸してもらえないか」と懇願。阿部忠昭社長(76)は運営するビジネスホテルの一室を提供し、2人はこの恩に報いるためまき割りを行った。山田さんは「人とのふれあいが旅の醍醐味。この恩は忘れない」と感謝した。【山口紘史】

 夫妻はいずれも首都圏出身。山田さんは大学受験失敗を機に「世界に出た方が学べることは多い」と意識を変え、18歳の時に旅人になることを決意。中国に飛び、気の赴くままにヒッチハイクや自転車で東南アジア、中東、北欧諸国を回った。21歳の時にカナダのバンクーバー島で自給自足生活をする他称「仙人」に出会い、数カ月間共生して生活スタイルや生き様を学んだ。

 一方、山崎さんは父が英国人、母が日本人のハーフで東京生まれ東京育ち。米国の短大を卒業後、「世界各地の文化を見てみたい」と思い立ち、東南アジアやオーストラリア、ドイツなどを旅し、28歳の時にカナダの「仙人」のもとを訪問した。

世界一周の山田・山崎夫妻 牡鹿観光で一宿一飯の恩義 (3)

翌日には南に向けてペダルをこぎ出した山田達(左)、山崎暁奈夫妻

 2人はそこで偶然出会い、日本人同士であることや、広い世界を見るため旅をしているなど共通点も多く、意気投合。互いに運命を感じ、2カ月後には島で結婚式を挙げ、仲人は「仙人」が務めた。

 その後は2人で旅を続けるも新型コロナウイルスの影響で続行が難しくなり、昨年5月に帰国。じっとしている性分でもなく「日本をもっと知ろう」と同9月から日本1周の旅に切り替え、首都圏から日本海側を回り、北海道を一周し、太平洋側を南下した。

 石巻市に入ったのは2月上旬。普段はテントを張って野宿をしているが、この日は冷たい風が吹き、野宿は厳しいと判断。偶然通りかかった牡鹿観光本社の敷地内に「ペット専用避難所」と書かれた小屋を見つけ、寝床の交渉に臨んだ。

世界一周の山田・山崎夫妻 牡鹿観光で一宿一飯の恩義 (8)

宿提供の恩返しでまき割りに汗を流す夫妻

 旅の話を聞いた阿部社長は「広い世界を見たいと行動する考えが素晴らしい。うちのビジネスホテルを貸そう」と語り、食事付で一室を提供した。厚意に感謝した2人は一宿一飯の恩義で翌朝、同社応接室のまきストーブで使う燃料のまき割りに汗を流した。

 山崎さんは「7年間ほぼ無銭で旅を続けてきたが、継続できているのは多くの優しい人に出会えたから」と話した。旅こそ人生と語る山田さんは「旅に終わりはない。コロナ禍で今は日本だが、いずれはまた世界に出る。何もなくても幸せは感じられるということを広めたい」と話した。

 2人は阿部社長に感謝を伝えた後、大きな荷物を自転車に積み込み、南に向けてペダルを漕ぎ出した。


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