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中待合室にて

病院で待っている間に、自然と聞こえてくる会話を聞くのが好きです。
悪趣味だとはわかっているものの、聞こえてくるものはしょうがない。

今日は子どもを耳鼻科に連れていき、中待合室に呼ばれてから耳に入ってきた会話が印象的でした。


会話

私と子どもの前にある長椅子に腰かけたのは、男子高校生とそのお母さんの組み合わせです。

お母さんより遥かに背が高いその高校生はスマホを始終眺めていて、診察券を持ってというお母さんの声がけに対して「今夢中で無理」、と。

お母さんはそういう返答に慣れているのか、さいですかといった雰囲気で診察券をバッグに入れました。

中待合室に来る直前までの会話が進路についてだったのでしょうか、会話から察するにたぶん男子高校生は高校3年生です。

子「やっぱさ、俺、東京でイタリアンやるわ」
母「東京?遠くない?」
子「うーん、じゃ、仙台か」
母「○○の中にある、ほら、イタリアンがあるじゃん」
子「え?サイゼ?」
母「そうそう!あそこだったら東京に行かなくてもイタリアンやれるよ」
子「サイゼってシェフいないっしょ、あっこバイトが作ってんじゃん」

なんて面白い会話だろうと笑いを堪えて聴いていると、会話はお母さんのペースでどんどん進んでいきます。

母「あ!家の近所でかき氷屋さんでもやったらいいよ」
子「なんでかき氷屋……?」
母「かき氷1つ2,000円くらいで売れるでしょ、暮らしていけるし」
子「……」

その後はサッカーの話題に移り変わり、サッカーに特段興味のない私は、長友、しか聴き取れませんでした。


手に取るようにわかる

息子さんが、東京もしくは仙台の調理専門学校かどこかを打診しているのに対し、近所のモールの中にあるサイゼリアを勧めているお母さん。

しまいにはイタリアンの枠を無視してかき氷屋さんの話をしていることに、私はじーんとしてしまいました。近くにいてほしいんだね。

わかるような、わからないような。私の子どもはまだ小学生ですから、先々の会話だけれど、こういう話題もゆくゆくはあるだろうと先取りして親の切なさを味わいました。

ふたりとも会話がぽんぽん弾んでいて、見るからに関係は良好そうでした。きっと息子さんがやっぱり東京の調理の専門学校に行くことに決めても、「おいしいもの食べさせてよ!」と送り出すようなお母さんだろうな。

実際はどうかわかんないけど、勝手に想像して泣きそうになる私です。


病院は会話の宝庫

このほかにも、何組かの会話に耳をそばだてました。

「耳鳴りがするのに、耳鼻科の先生からは『テレビを楽しく観れてて電話も取れてて、眠れてたらだいじょうぶ』って言われた」
「そうなんだ、耳鳴りと一緒に結構楽しく暮らせるんだね」
という、苦痛と軽やかさが同居する会話にも聴き入りました。

受診する科にもよりますし、自分の体調にもよりますが、病院は普段知り合わない人たちの会話をたくさん聴けて楽しい場所です。

でも、自分の会話も誰かから観察されていると思うと、それは御免だなあ。今日は子どもたちに「貧乏ゆすりやめて!」しか言っていないような気がする。

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