強さよりもしなやかさ、人生の攻略法について

人生はゲームだ。なんていうことを聞くことも多い。それでは人生とはどのようなゲームなのだろうか。すくなくともボスキャラを倒して進んでいくタイプのゲームではないのは間違いないと思う。それよりも、いかに最後まで生き残れるかというサバイバルゲームなのではないだろうか。

精神病院や心療内科に通っている。そこで精神安定剤と睡眠導入剤を処方される。そんな状況だからといってメンタルが弱いかというと、そんなことはない。自分ではむしろタフなほうだと思っている。いや、自己評価だけではない。精神科医からも「きみはこんな大変な状況なのに飄飄(ひょうひょう)としているね」と言われるくらいだ。先生、それ、病院に通わなくてもよいのでは。なにがあっても動じないというわけではないけれど、心が折れるということがない。

以前の自分はというと、かんたんに心が折れていた。折れやすいようにミシン目が入っているんじゃないかというほどに。だから常々願っていた。強くなりたい。心が折れないように強くなりたい。けれども、強くなろうとすればするほど、心はもろくなっていった気がする。あるとき、強くなることをやめた。強ければ折れる。そのかわりに柔らかく構えることにした。そうすると曲がるけれども折れない。強さよりもしなやかさが必要だったのだ。

離婚、ひとりでの子育て、オフィスの閉鎖、縁もゆかりもない土地への移住。大変ですねと言われるけれど、本人にとってはそうでもない。以前だったらとても耐えられない状況にあって、いまは飄飄と受け流している。まあ、人生いろいろあるよねと。そこで無理やり元気を出そうとしないし、立ち向かおうともしない。ただ目の前の現実を受け流すだけだ。たとえばなにか辛いことがあったとして、そんなときに「自分はなんて不幸なんだ」なんてことは考えない。ただ辛いと感じるなにかが起こったというだけだ。立ち向かおうともしないし戦おうともしない。無理やり元気を出そうなんて考えずに、いったんヘコむ。ヘコむことでネガティブな力を逃してやる。

人生というゲームはとてもシンプルで、死ぬまで生きればゴールできる。その間をいかにおもしろく生きるかでスコアが決まると考えている。途中でリタイアしなければいいので、とにかく折れないことだけ気をつけるだけだ。折れなければヘコんでも寝込んでもなんでもいい。さいわい僕には子どもの世話をするというミッションがあるので、動けなくなってはいけないという気持ちからだろうか、どんなに調子が悪くても日常生活に支障をきたすような状況に陥ったことはない。そして調子が悪くないときには、あれこれ活動をしてはスコア稼ぎに精を出している。倒さなければならないボスキャラなんていないのだから、回避能力さえあればレベル1でもクリアできるのが人生。強くなろうとしないこと。それがこのゲームの攻略法だ。

いろいろと経験値をためて現在のような境地に至ったわけだけど、早くここにたどり着いていればもっと楽に人生をプレイできただろうなあとも思う。まあ、そういう考えには意味がなくて、そんなことを考えている暇があったら子どもたちが散らかした部屋を何とかしなければならないのだけど。部屋を片付けるというミッションの難易度はどれくらいなのだろうか。

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