友達って……
私は、友達が少ない。
ずっと、そう思っていました。
そして、友達が少ない私はどこか異常なんじゃないか、とさえ思っていました。
そして、そう思えば思うほど、自分に友達が少ないのは当然のことのように思えてなりませんでした。
……ある友人の話を聞くまでは。
*******
今年の2月、数年ぶりに高校時代の友人から連絡がきました。
今年の2月といえば、まさに「学生最後の春休み」の真っ最中。
友人も、大学を卒業する前に一度会っておきたいと連絡をくれたのでした。
二つ返事でOKをした私でしたが、内心、この数年間、一度も連絡をとっていなかったのに、どうして私のことを思い出してくれたんだろう? と不思議に思ってもいました。
でも、実際に会って話を聞いてみると、他にも何人か高校の時の友人たちに声をかけていたようです。
一方の私は、高校の時の友人にはほとんど会っておらず、連絡を取っているのもほんの数人だったので、そのことを伝えると、彼女は、「へぇ、意外。ひーちゃん、仲いい子多かったのに」と言うのです。
友達は少ない方、と思い続けていた私にとって、友人のこの言葉こそ意外で、思わず「え、そう?」と聞き返してしまいました。
しかし、友人は「うん」と言って頷くと、「○○とか、○○とか、○○ちゃんとか。仲いい子、沢山いたじゃん」と言うのです。
もちろん、その懐かしい名前たちに聞き覚えがないわけはありません。
そして、あぁ、確かに友達、沢山いたな、なんて思ったのです。
と同時に、彼女たちとの繋がりはもう消えてしまったんじゃないかと思って、寂しくもなりました。
その時ふと、友人に、気になっていたあのことを聞いてみようと思い立ちました。
そう、どうして私に数年ぶりに連絡をくれたのか、ということをです。
「ところで、どうして数年ぶりに私に連絡をくれたの? 変だって言いたいわけじゃなくてね。むしろ、こうして久しぶりに会えたから、連絡をくれたことにすごく感謝してるんだけど。でも、何かきっかけとかあったのかなって」
「あぁ、きっかけね。あったよ」
そう言って、友人はこんな話をしてくれました。
「大学で仲良くなった友達に、
あなたは友達少ないよねって言われて。
余計なお世話だ! って思ったんだけど、
その通りだったから何も言い返せなくて。
でも、気づいたの。
私って友達が少ないわけじゃない。
ただ、繋がりが切れていっているだけだって。
それも喧嘩したとか、そういうことじゃなくて、単純に連絡を取ってないからだって」
友人の言葉に、私は、深く共感しました。
「それ、確かに……。この年にもなってさ、喧嘩とかしないし、何なら最後に会った時、そういうわだかまりがあった人っていないよね。だけど、何か連絡を取らなくなって……、そのまま繋がりが切れちゃってるかも」
「でしょ? だから、このままじゃまずいと思って、ひーちゃんに連絡したの。このまま、何年も経ってから連絡したら、それはもう手遅れじゃない? 宗教の勧誘って思われるかもじゃん」
さすがに宗教の勧誘とは思わないよ、と言って私は笑いましたが、それも一理あります。
今声をかけたら変かな……と思って尻込みすること。
それが、友達をじわじわと失っていく原因だったのです。
私や相手に何か異常があるわけではなくて、人生の流れのなかで、お互い少しずつ距離ができてしまっているだけのこと。
自分の性格に何か大きな欠陥があるわけではなくて、ただ、違う環境に行った時に遠慮しすぎてしまっているだけのこと。
そう気づいた時、ふっと気が楽になりました。
私は友達が少なくなってしまっているかもしれません。しかし、それは自分に魅力がないとか、嫌われやすいとか、そんなことが原因ではなかったのです。
だから、「私は友達が少ない」と自分を卑下するのではなく、大切にしたい友達には自分から声をかけ続けていこう、と心に決めたのでした。
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