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たぶんこれ銀河鉄道の夜

銀河ステーション、銀河ステーション。

車掌さんのアナウンスで僕らはたぶんこれ銀河鉄道の夜なんじゃと胸を膨らます。


オールナイトニッポン55周年記念舞台「たぶんこれ銀河鉄道の夜」を観劇した。
初めての舞台演劇。数日前からずっと楽しみにしていた。

銀河鉄道の夜に出逢ったのは銀杏BOYZのせいだった。銀杏BOYZの曲が好きで、峯田の頭の中を探るため宮沢賢治の銀河鉄道の夜を読んだ。最初に読んだときは正直難しかった。自己犠牲こそが本当の幸い、賢治が言いたいことはきっとそんなとこだろう、そんなありふれた感想しかもてなかった。

ラジオが好きで、オールナイトニッポンのCMの中で、本舞台「たぶんこれ銀河鉄道の夜」の存在を知った。演劇脚本家上田さんのフィルターを通した銀河鉄道の夜を受け取ることで、より銀河鉄道の夜を深く解釈できるのかもしれない、そう思ってチケットを買った。アフタートークで三四郎が出演するのがさらに決め手となった。(三四郎のANN0のファンなので。)初めての舞台演劇だったので、これを誰かと共有したくてnoteで知り合った喜々さんを誘った。初対面なのに付き合ってくれてほんとにありがとう。(素晴らしき出会いに感謝!)

冒頭の美容室のシーンの台詞から本舞台が原作に沿ってつくられていることに気付いた。コメディ要素、デスゲーム要素が加えられ、楽しく笑いながら観ることができた。ミュージカル調なシーンは完全に宮沢賢治の銀河鉄道の夜の原文を引用しており、原作の言葉の美しさがしんと身に染みた。

デスゲーム要素では、自己犠牲とエゴを履き違えた登場人物が次々と脱落していった。僕はここに自己犠牲の難しさを感じた。舞台はエゴと分かりやすく判断できるものであったけれど、実際の世界で蔓延しているのは、自己犠牲なのかそれとも自己満足なのか、エゴなのか。カムパネルラは確かにザネリを助けたのだけれども、取り残されたジョバンニはどうなるのか。

「カムパネルラ、また僕たち二人きりになったねえ、どこまでもどこまでも一緒に行こう。僕はもうあのさそりのようにほんとうにみんなの幸いのためならば僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない」

「うん僕だってそうだ」

「けれどもほんとうのさいわいは一体何だろう」

「僕わからない」

「僕たちしっかりやろうねえ」

結局、原作のカムパネルラも、本作のカムパネルラももう帰ってこなかった。本当の幸いの真理に迫ることができたかと言えば、できてないと思う。それでも、ジョバンニが持つカムパネルラとずっと一緒にどこまでも行きたいという気持ち、しっかりやろうねぇと力強くこれからも生きていこうという決心、それが、人生においてすごく大切な感情なんじゃないかとそう思った。

きっと僕は死ぬまで、この本当の幸いとはなんなのかを考えて、銀河鉄道に乗り続けるのだと思う。「銀河鉄道の夜」は僕に与えられた宿題なんだとそう思う。

初めての舞台演劇、とても素晴らしかった。女優さん俳優さんが目の前で生のお芝居をしていて、稽古の賜物というか、人間の美しさのようなものを肌で感じた。かもめんたるのう大さんは劇団を持っているだけあって、その場の空気やお客さんの反応でアドリブを入れていると、アフタートークで言っていた。う大さん演じる先生から発せられる言葉は全て面白くて笑えた。ヨーロッパ企画のみなさん、主演の久保田紗友さん、乃木坂46の田村真佑さん、その他俳優陣のみなさん、かもめんたる、全員これからの人生推していきます!
今年は色んな舞台見に行きたいな。


間違いなく確かなのは、今日はほんとうに幸せだった。

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