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”和”のエッセンスを取り戻すことが、日本の組織を良くしていく鍵になる

こんにちは。RELATIONS代表の長谷川です。
最近いろいろなニュースやSNSで、日本社会に対しての悲観的な見方や、日本経済の弱さに焦点をあてた記事や投稿をよく見ます。
”失われた30年”などと揶揄されますが、ここには、ある要因が潜んでいるように思います。

現在の日本社会は、「Japan as No.1」と言われていた時代からすると成長が止まってしまっているように見えます。また経済の低迷以上に深刻だと思うのは、2021年に行われた米ギャラップ社の調査で、熱意あふれる社員の割合が、わずか5%であったことです。(2017年の同社調査結果では6%でしたので、数値はさらに下がっていることになります。)多くの方々の大切な人生が、その意義を見いだせずに浪費されている現状に、強い憤りを感じます。

いまの日本が置かれている現状を自分なりに考察する中で立てた仮説としては、「日本らしさという軸足を持たない西欧文化の取り入れ」という現象が、働く情熱を低下させ、日本のエネルギー総量を減退させている一つの要因になっているのではないか?ということです。今日はその辺りに少し触れてみたいと思います。

1.  高度経済成長が招いたこと

戦後、欧米を中心とした西洋の文化や思想が次々と日本に入ってきました。日本に元来根付いた文化とそれらがうまく溶け合い、同時に、戦後の日本復興への意志が融合し、高度経済成長という大きな流れが生み出されました。

そしてこの出来事は、大きな成功体験の記憶として内在化されていきます。その後、タイムマシン経営がもてはやされたり、海外から新しい概念や仕組みが日本へ持ち込まれる流れが主流になっていきました。経営においても、MBAや成果主義の思想などの欧米で発展してきた経営方法が、様々な形で日本企業に持ち込まれるようになってきました。

この「西欧文化に根ざす個人主義の思想」を強めたことが、日本独自の文化そのものを衰退に招いたのではないか?と私は推察しています。”自分たちは何者であるか”という軸足を欠いた文化の取り入れは、アイデンティティそのものを失わせることにつながるのではないでしょうか。

2.  日本の軸足となる文化やアイデンティティとは

では、日本文化の特性や、日本人のアイデンティティや軸足となるものとは何でしょうか?また、それはいつ・どこから始まったものなのでしょうか?
(RELATIONSを経営する中で、こういった文化人類学に関わる領域は、私自身、深く考えるようにしています。歴史や系統を辿ることで、それらの持つ”らしさ”を感じ取ることができ、深い理解につながるためです。)

この問に対して私なりに辿り着いた回答は、「それは”和”である」ということです。つまり、つながりで捉える文化です。

欧米では個人主義の思想が土台にあり、個人の特性を大事にします。つまり、”分ける”ことを大切にし、境界をはっきりとさせていきます。分析や科学も境界を区切り、分けて考えていくことから発展してきているように思います。

一方で、日本文化では古来から、個人よりも集団や和を大切にしてきました。一節によると個人主義の概念は江戸時代には無かったという話があります。八百万の神のように、あらゆるところに神が宿り、すべてがつながっていると考え、”分けない”ことを重視します。また、「和をもって尊しとなす」という言葉に代表されるように、集団での意識を大事にします。和を大事にしていくことは、”つながりを感じること”と同じ意味になります。

高度経済成長期の背景には、この「和」を重んじる日本文化のなかに全く毛色の違う欧米の個人主義の概念が持ち込まれ、曖昧だったものごとが明瞭になり始めるという変化がありました。”分ける”文化と”分けない”文化がいい具合に混ざりあったことで、両者の良さが活きて、うまく働いたという風に捉えられるのではないかと思います。

3.  ”和”の強み・弱み

どんなものごとにも良い面と悪い面があるように、”和”の文化にも強みと弱みがあると私は考えています。

例えば、私が新卒で入社した会社では、ほぼ毎日先輩や同僚と飲みにいき、相互のつながりを感じていました。その頃はコンプライアンスやハラスメントという言葉もなく、プライベートも含めてつながっていく感じは、面倒だなと思うこともありましたが、飛び込めばすごく楽しく、充実していました。そして、それらが組織としてのつながりを生んでいたように思います。ただ、一方で転職することは、裏切り者だとみなされる文化もあり、これには居心地の悪さを感じました。「一生同じ企業で勤め上げる」という働き方のモデルも、そういった思考から生まれているように感じます。これは和の強みと弱みの両面が現れています。

つながりを大切にすることで集団の力を活かすことが和の強みである一方で、村社会に代表されるように、”つながりの外に対する閉鎖性”や”つながりの弱いメンバーへの厳しい接し方”は、和の弱さ(和を重んじることの弊害)であると言えます。

軸となる”和”の文化の強み・弱みを認識しておくこと。その上で”個”を大切にする欧米文化の良さも取り入れていくこと。そのバランスが重要なのだと思います。

4.  組織における、共感のつくりかた

しかし、現在日本の多くの会社においてはそのバランスが崩れ、”和”の文化の強みが衰退しているように感じます。

先日ある企業から若手の離職率が高まっているという相談があり、あらゆる階層でヒアリング調査をしました。そこで出てきた声の大半は「あの人がダメだから。」とか「あの部署が足を引っ張ってるから。」という、外側への批判の声でした。
上層部は下を批判し、下は上を批判する。つまり、社員それぞれが”自分”と”周り”を分けて捉え、その結果、組織という集団としてのつながりが弱まったことで生まれてきた声のように感じました。もし、組織 = 自身とつながっている存在、として捉えることができれば、また違った対応が生まれてくるのではないでしょうか。

では、日本の強みである「和=集団のつながり」を取り戻していくためには、どうしていくのが良いでしょうか。

つながりを強めていくには、ズバリ”共感”がポイントになると考えています。お互いの考えや想い、感情、歴史を理解していくことで、少しずつ共感は育まれていきます。

さて、みなさんは「知的コンバット」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?

【知的コンバットとは】
一橋大学名誉教授である野中郁次郎さんが提唱する対話方法です。
お互いの主観や経験など、自身のすべてを互いにぶつけ合って議論を深めていく手法です。この知的コンバットを重ねると、地下水脈のようにどこかで互いの深い部分に触れられる体験があります。

まさに、知的コンバットを社内の各所で行い、お互いの深いところへ触れられる体験を増やすことで、組織における共感は少しずつ育まれていきます。


5.  RELATIONSでの取り組み

最後に、”西洋の個人を大切にすること”と、”日本の和を大切にすること”の双方の要素を大切にした組織づくりをしていくために、RELATIONSで実際に行っている取り組みをご紹介いたします。

RELATIONSでは基本的にはリモートワークで働き、個々のライフスタイルを尊重する考え方を持ちますが、月1回はオフラインで全社員が集まります。さらに4ヶ月に1度は合宿形式で一宿一飯を共にし、焚き火を囲んで対話をしています。

各イベントで扱うテーマを変えており、月1回は事業や組織の課題などを中心に扱い、合宿では組織の存在意義や個人の関わり方などより深い部分へ視点を当てて対話を進めます。
協働しながら成果を生み出すためには、個を尊重するリモートワークを主体としながらも、その弱みを補強できるような”共感を育む場”や”つながる場”をきちんとセットアップすることが大事だと思います。

ホラクラシーという欧米の自律分散型の組織システムをRELATIONSでは採用していますが、これも欠かせない要素だと感じています。現実的なレベルでの合理性をホラクラシーで担保しながら、対話や合宿を通じて、和を生み出す時間を作っていく。
自分たちの軸足を理解した上で、様々なレイヤーで創意工夫しながら組織づくりをしていくことが大切だと思います。

では、今日はこんなところで。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

 ええ一日にしていきましょう。


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