LINEヤフーの1件に見る、「フルリモートワーク」の見直しと「理想的な働き方」について
こんにちは。
近年、多くの企業でリモートワークの在り方が見直されています。
特に注目を集めているのが、LINEヤフーの1件です。
同社が2025年4月より出社日を設定すると発表したことは、日本企業におけるリモートワークの転換点となる可能性があります。
そこで今回は人事企画視点で、「リモートワーク」についてまとめて参ります。
リモートワークを取り巻く現状
コロナ禍を経て、多くの企業がリモートワークを導入し、その後も継続してきました。
しかし、最近では見直しの動きが加速しています。
GoogleやMetaによる週3日の出社義務化、Amazonの週5日出社要請など、
テック企業を中心に「オフィスへの回帰」の流れが強まっています。
企業におけるリモートワークの実態
とはいったものの、国内外の各企業において、企業ごとに「働き方」「リモートワーク」に対する様々なアプローチが見られます
有名テック企業の動向
Apple:従業員の反発がありながらも、週3日の出社を義務付け
Twitter(現X):イーロン・マスク氏の経営参画後、完全出社制に移行
Dropbox:「Virtual First」を掲げ、原則リモートワークを継続
Salesforce:従業員の要望を受け、柔軟なハイブリッド型を維持
日本企業の特徴的な取り組み
サイボウズ:「どこでも仕事」制度を導入し、海外拠点からの業務も許可
フジテレビ:番組制作部門を除き、原則週3日までのリモートワークを容認
ソニー:部門ごとに最適な働き方を選択できる制度を導入
生産性に関する学術的知見
企業、経営の立場に立った際に、社会の公器としての役割を果たすうえでも
重要なのは事業が伸びているのか?詰まるところ「成長」です
成長の重要な因子である、「生産性」と「リモートワーク」はどういった関係があるのか?
学術的知見、研究結果についても調べてみました
スタンフォード大学のNicholas Bloom教授らによるCtrip(中国の旅行代理店)を対象としたランダム化比較実験では、
リモート勤務の従業員がオフィス勤務者に比べて13%の生産性向上を示しました。
コールセンター業務の特性に適したリモート勤務環境が、休憩や通勤の時間を削減し、集中力を高めることに寄与したためと考えられています。
■具体な研究結果
9ヶ月間の実験で13%の生産性向上
休憩時間の短縮と病欠の減少
退職率の50%低下
一方、リモート業務が必ずしも全ての業務に適しているわけではない、という事も明らかになっています。
英国でのMcKinseyの報告によると、
不確実な対応が求められる仕事
クリエイティブな業務
では、対面での迅速な意見交換やフィードバックが重要であり、オフィス環境での協働が優れているとされています。
また、警察や医療のように、緊急対応が求められる職務においては、
現場での迅速な行動が欠かせず、遠隔での対応には限界があることが確認されています。
※上記もフルリモートワークは生産性が下がることを示している記事の一つです
健康経営やウェルビーイング、エンゲージメントとの関係性
働き方の評価において、今までの論調とやや逆説的ではありますが、
単純に生産性や創造性だけで判断することは適切ではありません。
労働人口減少並びに人材獲得が激化する現代の企業経営では、従業員の心身の健康状態やウェルビーイングの向上が、組織の持続的な成長に直結するためです。
例えば、オフィスワークでは通勤による時間的・体力的な負担が従業員の生活の質を下げる要因となり得ます。
一方、リモートワークには社会的な孤立感や、必要なサポートを受けにくい環境での精神的ストレス、また特定のメンバーとしかコミュニケーションを取らない情報の分断化(サイロ化)などの課題があります。
このように、オフィスワーク・リモートワーク、どちらの働き方にもプラス面・マイナス面が存在します。
そのため、”どちらが悪で、どちらが正義か?”といった二元論ではなく、
組織文化や事業特性、従業員の業務内容、リモートワークへの習熟度、個人の生活環境、さらには人事戦略上の意図など、
多岐にわたる要素を考慮した上で、最適な形を模索する必要があると考えます。
企業にとって「理想的な働き方」とは?
前述の通りではありますが、リモートワークと生産性の関係は、単純な因果関係では説明できません
重要なのは、企業の特性や目標、成熟度や文化に応じて、最適なバランスを見出すこと
変化の激しい現代において、働き方改革は継続的な試行錯誤や見直しが必要な領域です
重要なのは企業や組織が、従業員一人ひとりの職務内容と健康に応じて、最適な働き方を構築する柔軟性を持つことです。
そういった意味では、リモート勤務とオフィス勤務の二者択一ではなく、
双方の長所を取り入れた「ハイブリッドモデル」が結局のところ、今後の最適解ないしは着地点なのかもしれません
実際に、McKinseyの調査でも、ハイブリッドワークを採用した企業が、従業員の生産性を維持しつつ、満足度を向上させることができたと報告されています。
人的資本戦略として、企業として成長をし続ける為に、
「必要な人材、タレント(人材ポートフォリオ)」
×
「調達、活躍、維持(従業員体験の向上)」
を実現する為にいかに高い従業員体験を設計するのかが重要になっている中で、(やや短絡的かもしれませんが、)ハイブリッドワークが折衷案としては最適解なのかもしれません
おまけ:今回の1件における人事企画目線の私見
今回の1件はX(旧Twitter)でかなり波紋を生んでいますが、
経営、事業があってこその人、組織
人、組織あっての経営、事業ではない(どちらが重要、という話ではなく)
終身雇用から会社・従業員双方が選び、選ばれる関係性にシフト
(制度・法律的にはまだまだ違うが、思想としては、)ある種「対等な関係」が今後の時流
であり、会社として個人が(ある種)勝手に組んだ住宅ローンの面倒までみないといけないわけではない、というのが持論です。
私自身、少なくともここ5年は組織人・従業員としての立場を続けていくつもりでもありますので、今回の1件は戒めとしたいと思います、、、!