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【第2回】ともだちができるといい…

執筆:副島 賢和(昭和大学大学院保健医療学研究科准教授,昭和大学附属病院内学級担当)

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 「なんで、毎日やらないの?」

 院内学級は、公立の小中学校や特別支援学校がもっている教室です。
 そのため、年間の予定も、その日の予定も、基本的には、皆さんが知っている学校と同じなのです。
 制度としては、どの自治体も前年度の2月ごろに次の年の年間の計画が決められます。
 授業はどの学級もだいたい朝8時半くらいから、午後3時くらいまで。
 職員会議や教員の研修がある日は、午前授業ということもあります。
 学校ですからもちろん、夏休み・冬休み・春休みもあります。
 祝祭日もカレンダーどおり。日曜日はお休み。
 土曜日もその自治体や学校によって、「第○土曜日は授業があります」というような違いもあります。

 いろいろな地域から入院してくるので、自分が通っていた学校と予定が違い、
 「ねえ、今週末は学級あるの?」
 「なんで、毎日やらないの?」
という声が聞かれます。

 ど、にちよう日も学級があるといい
 みんなで遊べるといい
 みんなが一緒にいるといい

という詩を書いた5年生の男の子がいました。
 「じゃあ、勉強やろうか!」と言うと、
 「土日はお休みだから、勉強はしなくていいの」
と返事をしてくるのですが、やはり、土日や祝祭日の病院は、治療もなく、やることもなく、「ひま〜」なのです。
 家族や知り合いがお見舞いに来てくれることもあるのですが、小児科の病棟は、感染面への配慮から基本的に友達やきょうだいに会うことはできません。
 自分のところには誰も来てくれないとなると、本当に一日が長く、
 「ひま、ひま、ひま、ひま…」なんだと話してくれます。

 「ともだちがいっぱいできるといい」
2年生のある男の子がそう、教えてくれました。

 入院中に出会った友だちは、年齢や病状が違っても、一緒に治療をしている仲間という意識が芽生えるようです。
 大人がなかに入ることのできないくらい親密な関係になったりします。
 それは、子どもの発達上とても大切なことです。
 「え〜、いいなあ〜入れてよ〜」とちょっかいを出しながら、少し距離を置いて見守ります。

 でも、必ずどちらかが先に退院をする日がやってきます。
 友だちが退院と決まった瞬間、「よかったね」という子もいますが、あんなに仲がよかったのに、すっと距離を置く子どもたちがいます。
 そんな中学生の女の子たちを何組もみてきました。
 子どもたちにとって、喪失は死別だけではありません。大事な友だちと離れ離れになることもとっても大きな喪失です。
 入退院を繰り返し、そのような喪失を何度も経験してきたため、あまり親密な関係にならないようにブレーキをかけている子もいます。
 それは、入院中だけのことではないのです。入院のたびに通っている学校を休まなければならない子どもたちのなかには、
 「友だちはいるけど、親友はいない」と伝えてくれる子もいます。
 「友だちなんかいなくてもいい」と、在宅医療を受けている子が教えてくれたことがあります。
 子どもたちが、そんな言葉を言わなくてもよいように、医療のなかにも遊びや学びを使って子どもの発達を促す保育や教育が必要であると改めて考えています。

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著者プロフィール:昭和大学大学院保健医療学研究科准教授、昭和大学附属病院内学級担当。1966年、福岡県生まれ。 89年、都留文科大学卒業。 同年、東京都公立小学校教員として採用され、 以後25年間、都内公立小学校学級担任として勤務。99年、東京都の派遣研修で、在職のまま東京学芸大学大学院にて心理学を学ぶ。2006〜13年、 品川区立清水台小学校さいかち学級(昭和大学病院内)担任。 14年4月より現職。
学校心理士スーパーバイザー。 ホスピタル・クラウン。北海道・横浜こどもホスピスプロジェクト応援アンバサダー。TSURUMIこどもホスピスアドバイザー。 東京こどもホスピスプロジェクトアドバイザー。日本育療学会理事。 NPO法人Your School理事。 NPO法人元気プログラム作成委員会理事。
09年、ドラマ『赤鼻のセンセイ』(日本テレビ)のモチーフとなる。
11年、『プロフェッショナル仕事の流儀』(NHK総合)に出演。
20年、NPO法人Your School によるYouTubeチャンネル「あかはなそえじ・風のたより」に出演。
近著:『あのね,ほんとうはね 言葉の向こうの子どもの気持ち

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※本記事は、
へるす出版月刊誌『小児看護』の連載記事を一部加筆・修正し、再掲したものです。

★2021年11月号 特集:小児がんの子どもの症状マネジメント;その子らしい”生活”を支えるために
★2021年10月号 特集:移植医療でしか治療選択のない子どもと家族へのケア;「つなぐ」医療で「いのち」を支えるために
★2021年9月号 特集:糖尿病のある子どもの看護;小児糖尿病看護の新しいかたち
★2021年7月臨時増刊号 特集:重症心身障がい児(者)のリハビリテーションと看護

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