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【第3回】さびしいかなぁ…

執筆:副島 賢和(昭和大学大学院保健医療学研究科准教授、昭和大学附属病院内学級担当)

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  みなさま、いかがお過ごしでしょうか?このコロナ禍の状況は、すべての人に、我慢と頑張りを強いていると思います。たくさんのストレスがかかって、さまざまな反応が出ているのではないでしょうか。

 先日、仲間のドクターと話をしていたところ、

「緊急事態宣言が解除された頃から、頭痛や腹痛、発熱、吐き気や食欲不振で外来に来る子どもたちが増えてきたように思います。原因が明確に判断できない。長期にわたって続く。そんな患者さんが増えています」

とお聞きしました。

 病棟のベッドには、もちろんさまざまな疾病の子どもたちがいますが、私の立場からみると、「ストレスからなのかな?」と思われる子どもたちと出会います。

 子どもは、おとなが我慢し、頑張っている時は、自分のことは周囲にあまり伝えずに、凌いでいることが多いようです。

ニコニコしていたり、元気に振る舞っていたり、何も考えていないように見えたり、そんな子どもたちがいます。でもそれは、決して何もわかっていないのではなく、子どもが意識しているか無意識かははっきりしませんが、「今は、伝える時ではない」と考えて行動をしているのだと思います。

 緊急事態宣言が解除されて、もう限界と、子どもたちが伝えてくれているのかもしれません。

 面会の制限が…

 この状況下で、感染対策の一つとして、病院の面会には以前とは異なる制限があります。私が関わっている病院では、たとえ家族であったとしても、病棟の中に入って子どもと会えるのは、

・1時間まで

・お一人だけ

というのが、ルールです。小児科の病棟なので、大人の病棟よりも緩和されていますが、それでも、子どもたちにとっては、とてもとてもつらい制限です。

 ただでさえ、入院は、孤独感を味わいます。子どもたちにとって、家族の面会は心待ちにしている時間です。思春期になって、せっかく保護者が来てくれても、ゲームをしたり漫画を読んだりして、会話をしないこともありますが、それでも、家族と過ごす時間は、子どもたちにとって最高に気持ちが安らぐ瞬間です。治療のエネルギーがたまる瞬間です。

 「面会できない時って、どんな気持ち?」

と、コロナ禍の前から、感染を防ぐために面会の制限があるお部屋に入ったことのある子どもたちと話をしていました。

「悲しいのかな?」

「イライラするのかな?」

そんな会話をしていたのですが、どの子も、

「一番はさびしい気持ちかなぁ」

と教えてくれました。

「自分が病気になったんだから仕方がないんだけどね」

「おうちの人にうつしたら大変だから」

 そう考えながら、自分を納得させていることも話してくれました。

「でも、やっぱりさびしい」

とその子が呟きました。

 幸いなことに、この病院では、院内学級の教師も、チーム医療の一人に数えていただき、感染対策をすることで、子どもたちと関わらせていただいています。私たち教師は、親御さんの代わりにはなれませんが、少しでも、さびしさを減らすために何ができるかなと考えて、会いにいきたいと思います。

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著者プロフィール:昭和大学大学院保健医療学研究科准教授、昭和大学附属病院内学級担当。1966年、福岡県生まれ。 89年、都留文科大学卒業。 同年、東京都公立小学校教員として採用され、 以後25年間、都内公立小学校学級担任として勤務。99年、東京都の派遣研修で、在職のまま東京学芸大学大学院にて心理学を学ぶ。2006〜13年、 品川区立清水台小学校さいかち学級(昭和大学病院内)担任。 14年4月より現職。
学校心理士スーパーバイザー。 ホスピタル・クラウン。北海道・横浜こどもホスピスプロジェクト応援アンバサダー。TSURUMIこどもホスピスアドバイザー。 東京こどもホスピスプロジェクトアドバイザー。日本育療学会理事。 NPO法人Your School理事。 NPO法人元気プログラム作成委員会理事。
09年、ドラマ『赤鼻のセンセイ』(日本テレビ)のモチーフとなる。
11年、『プロフェッショナル仕事の流儀』(NHK総合)に出演。
20年、NPO法人Your School によるYouTubeチャンネル「あかはなそえじ・風のたより」に出演。https://www.youtube.com/watch?v=ndP0lIrhg8k

近著:『あのね,ほんとうはね 言葉の向こうの子どもの気持ち

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※本記事は、へるす出版・月刊誌『小児看護』の連載記事を一部加筆・修正し、再掲したものです。

★2022年3月号 特集:食物アレルギーのある子どものケア;食事を通して成長・発達のプロセスを支援しよう
★2022年2月号 特集:今さら聞けない看護の根拠;子どもによくある病気と基本ケア
★2022年1月号 特集:遊びの力
★2021年12月号 特集:小児看護における認定看護師の役割と活動の実際
★2021年7月臨時増刊号 特集:重症心身障がい児(者)のリハビリテーションと看護


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