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26.またまた地域共生社会って?

社会包摂は、障害、疾病、国籍、性的指向、年齢、失業、貧困などの様々な理由で差別されて、自由な社会参加や安心した生活、自己肯定感を奪われることがないように社会のあり方自体を変えていこうとする考え方です。
 
この国から外に出るだけで、日本人は誰もが外国人になります。

そうなると、自分とは違う文化に出会い、なぜ違うのかを考えて、相手の文化への想像力と理解を深めなければ生活しづらくなります。
 
何度か海外旅行するだけでも、人生観は変わります。
 
社会包摂とは、共生のことです。

英語でソーシャルインクルージョン((Social inclusion)といいます。

“中に・内部に”を表す“in-”の代わりに“外に・外部に”を表す“ex-”を付ければ、社会的排除(Social exclusion)となります。
 
つまり、包摂と排除は表裏一体の現象です。

包摂と排除が起こる場所には、国家や法、地域社会など、世界を形作っている様々な仕組が関わっています。
 
その仕組の中心にいる人たちはあらゆる権利を保障されている方になります。

一方で、社会の中心からはみ出した人たちが仕組から排除された形で存在しています。
 
例えば“日本国籍がある・ない”、“障害がある・ない”、“読み書きできる・できない”など、どちらかに分断して存在価値を判断する社会の仕組があります。
 
今を生きる人ならほとんどの場合、その仕組に大きく影響されています。

社会包摂も、社会的排除も、この仕組の上で起こります。
 
例えば、日本語が話せない人に対して“あの人たちは何を喋っているか分からないから、何か不安だ”と感じて仲間外れにすれば差別になりますし、“何とかしてコミュニケーションしよう、理解しよう”と努力すれば社会包摂になります。

社会包摂と表裏一体になっている社会的排除をなくす為にはまず、排除されている人たちに、そうではない多数派の人たちと同じように社会参加してもらうことが1つの方法です。

しかし、弱い立場の人たちだけが変わっても、多数派の人が変わらなければ社会全体は変化しません。
 
中心と はみ出し部分の区別を生み出し、はみ出した人への排除を引き起こしている仕組を見極めて、その仕組自体を変えていくことが必要になります。
 
社会包摂は社会的弱者支援ではありません。
 
1人の人の思いやリーダーシップに頼るのではなく、あらゆる世代の多様な立場の人々が持ち合わせている生活の知識を協働して活かしていけるようにすることが望ましいと思います。
 
多様な立場の人々、多様な世代の人々が交流して、フラットな関係で協働できるような居場所作りが求められます。

その中で、みんなが自立している状況が、地域共生社会を実現した形でしょうか。
 
人口減少による地域社会の縮小、多様な価値観の中での拠り所の喪失、年金支給の減額、AI社会の進展、自然環境問題の悪化など、不確定で“これからどうなるのだろう?”という不安が増幅するVUCA時代の中で、社会的孤立は身近なものです。
 
誰にでも起こり得ます。
 
社会的排除と孤立は、違うものです。

やむを得ず孤立することと、意図的な差別で排除されるのでは本質的に大きく違います。
 
社会的に支援があってもそれを正しく利用できない状況があれば孤立ですし、 それに対して、意図的な差別があることや社会的なシステムで排除される場合には社会的な支援や救済はありません。
 
社会的孤立は、家族からの孤立、近隣社会からの孤立、集団・組織からの孤立、情報からの孤立、制度・サービスからの孤立、社会的役割からの孤立などがあります。
 
このような社会的孤立が発生しないように、地域のあらゆる人たちが自らの役割や居場所感を感じられるように、支え手側と受け手側に分かれるのではなく地域の住民みんなが役割を持って支え合いながら、自分らしく活躍できる環境を作ることが、ソーシャルワークであり、それが地域共生社会ということです。

現状を見ると、夢物語のようにも感じられますが、福祉だけは理想やキレイ事を掲げて無垢にそれに向かって突き進むことが許される業界のはずです。

社会福祉士の倫理綱領の最初にこんなことが書いています。
 
・社会福祉士は、すべての人間を、出自、人種、性別、身体的精神的状況、宗教的文化的背景、社会的地位、経済状況等の違いにかかわらず、かけがえのない存在として尊重する。
 
・差別、貧困、抑圧、排除、暴力、環境破壊などの無い、自由、平等、共生に基づく社会正義の実現を目指す。
 
・社会福祉士は、本倫理綱領に対して常に誠実である。

こういった倫理綱領や、それこそ憲法を中心とした法律もそうですが、とても風通しの良いキレイなことが書かれています。
 
でも、社会を見渡してみると、現実は程遠い状況です。
 
それでも、そこに書かれているキレイ事に惚れ込んで、その世界に入ってきた人も大勢います。

夢物語で終わらないようにしないと…ということです。

そうでもしないと、本当に今世紀のうちに、日本はかなり厳しい状況になると思います。


写真はいつの日か…札幌市豊平区の豊平公園の空を撮影したものです。

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