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80.AIの事

“音楽は機械ではなく、生きている人間が経験する苦しみなどの本当の感情の変化から生まれるべきだ”

これはニック・ケイヴさんのお言葉です。

やはり、音楽には背景にあるその作った人の人生…体験みたいなものや感情の動きみたいなものが反映されていないと退屈なものになってしまうのかな…と思います。

そこで、今年話題になったAIによって完成したビートルズの新曲「ナウ・アンド・ゼン」の話なのですが、これを聴いて思ったのが、AIはやはり夢があるな…ということです。

使い方次第で良くもなり悪くもなる…AIに限らず何事もそうですが…。

アリス・クーパーさんはこう言います。

“俺だったら、AIを使って良いのはポール・マッカートニーただ1人という法律を作る。
他の奴は違反だ。
ポール・マッカートニー、ああ、君はAIを使っていい。
ザ・ビートルズの新曲を聴きたくない奴なんていないだろ?”

ジョン・レノンさんが1970年代に書いた曲を、御自身が1978年にカセットテープにピアノの弾き語りで録音したデモを素材に、1995年の『アンソロジー』3部作の際にに3曲目の新曲として作品化しようとしましたが、ピアノとボーカルを分離することができずに断念しました。

しかし、現在のAI技術により声を抜き出したり、声とピアノを分離させる事が可能になりました。

そこに『アンソロジー』シリーズの制作時のジョージ・ハリスンさんの演奏が重ねられ、現在のリンゴ・スターさんとポール・マッカートニーさんの演奏が付け加えられました。

AIで新たに曲を生成したわけではありません。

ポール・マッカートニーさんは

“人工的もしくは合成的に作られたものではない。
すべてがリアルで、僕らがプレイしている。
既存の録音物を浄化したんだ”

と仰られています。

まさにザ・ビートルズの4人による“最期の新曲”です。

とは言っていますが、『ゲット・バック』で監督を務めたピーター・ジャクソンさんは“まだ他にもAIで生み出せる素材がある”みたいな発言をしていたので、どうなることやら…。

そして、これまたAIと人の共同作業によって手塚治虫さんの名作『ブラック・ジャック』の40年ぶりの新作が完成したようで…。

過去の作品は私も全話読みましたから、この新作も読んでみたいというのが本音です。

この場合のAIの主な役割はストーリーやキャラクターを担当し、その後、人が作画やコマ割りなどを行いました。

AIとの会話の仕方によってはAIが勘違いをすることもあったようで、AIとのコミュニケーション能力が重要になってきます。

まぁ、人間同士の関わり合いも同じですが…。

映画界ではAIの発展によって、俳優さん達の仕事が奪われているということもあり、43年ぶりにストライキを起こし、かなり長引いたことで話題になりました。

動画配信サービスの急速な拡大を受けた報酬の引き上げや、利用が拡大する生成AIに関する規制作りを映画会社などの団体に求めました。

シンガーソングライターのスティングさんはこう言います。

“音楽の構成要素は、僕たち人間のものだ。
今後数年間、AIから人間の資本を守る為に僕ら全員が立ち向かわなければならない戦いになるだろう。
ツールは便利だけど、それを操作するのは自分たちでなければならない。
機械に乗っ取られるのを許すわけにはいかないと思うんだ。
慎重になる必要があると思う。

スティングさんは、AIを映画のCGと比較してこうも言っています。

“自分は全然感動しないね。
CGで作られた映像を観るとすぐに飽きてしまう。
AIが音楽を作ることに対しても、同じように感じるだろうね。
エレクトロニック・ダンス・ミュージックではうまくいくかもしれない。
でも、感情を表現するような音楽では心を動かされないと思う”

「ナウ・アンド・ゼン」の話に戻りますが、ジョン・レノンさん自身がその曲を本当に世に出したかったのかどうかはわかりません。

でも、過去の隠れた名曲や名演が現代に蘇生される感覚…やはり、夢があると私は思います。

使い方次第です。

ここまで書いてきましたが、AIとは何なのか…。

AIは60年以上前に誕生したもので、現在は第3次AIブームと呼ばれています。

AIは、Artificial Intelligenceの略で、“人工知能”と訳されます。

IT用語辞典によると…、

“AI(人工知能)とは、人間にしかできなったような高度で知的な作業をコンピューターを中心とする人工システムによって行えるようにしたもの”

…と定義されています。

AIができることは大きく分けて2種類あります。

1つ目は“機械学習”と呼ばれ、ルールやパターンをコンピューターに教えて自動的に処理させるものです。

2つ目は“深層学習(ディープラーニング)”と呼ばれ、AIに経験を積ませて学習させ、判断力を強化するというものです。

AIは学習しながら判断力を強化することが得意な一方で、パターン化できないものが苦手です。

クリエイティブな作業や人の気持ちを汲み取るようなことが、人工知能が苦手とする分野として挙げられます。

絵を描いたり小説を書いたりするAIも存在しますが、実際には、保持しているデータを組み合わせるもので、そのクオリティを高めていくものではありません。

クオリティの良いか悪いかの判断は人によって違うので、クオリティの高いものを作る為の判断をパターン化できないでいます。

今後、AIが苦手分野をどのようにして克服をしていくのかが興味深いところです。

AI技術は進化の途中段階ですが、既に様々な分野で実用化されています。

ビジネスで多く活用されているものはチャットボットです。

Webサイトなどにアクセスしたユーザーの問い合わせに対して、AIが解決策を提示するものです。

チャットボットはAIの中でも簡単に設定ができるもので、“ユーザーがこの質問をした時はこの答えを出す”と定義しておくと、AIがスピーディーにユーザーの問題を解決することができます。

チャットボットが稼働していく中で、AIがデータを収集しながら回答の精度を向上させていきます。

他に、スマートフォンやスピーカーに搭載されたAIでは、音声認識を活用してAIが様々な要求に応えるサービスを提供しているものがあります。

Siri、Alexaが代表的な例です。

ユーザーごとにAIが趣味嗜好を学習していくので、使用すればするほどAIがそのユーザーの趣味嗜好を理解して対応の精度が高まります。

最近では、生産効率を高める為の支援をするAIも増えています。

タクシー業界が導入しているAIは、過去の乗車記録をAIが学習し、天候、場所、時間帯によって乗客になりそうな潜在客を予想し、ドライバーに待機場所などを提案するものです。

実際にタクシー業界では、需要予測のAIを活用して業務効率の改善に成功しています。

需要予測のAIはタクシー業界だけではなく、株価予測やマンション価格の変動予測などでも活用されています。

需要予測サービスはビジネスを手助けする上で欠かすことができないAIとして期待されています。

コンテンツモデレーションは、AIに動画、画像、テキストに関するガイドラインを覚えさせて、それを確認や検閲させるものです。

ユーザーが動画、画像、コメントを投稿するSNSなどでは、AIに違法性のあるコンテンツや不適切なコンテンツを学習させて、検閲させるというシステムを導入しています。

コンテンツモデレーションシステムによってサイトの安全性を保ち、オンラインでの良質なコミュニケーションを可能にしています。

そして、ここ数年で注目を集めているのは、農業でのAI活用です。

AIが記憶した画像から収穫に最適な野菜を収穫するというものです。

きゅうり、トマトでは、AIに収穫を判断させる試みが始まっています。

今後、収穫だけではなく、天候と収穫の関係なども学習できれば、野菜を安定して収穫することが可能になると考えられています。

自動運転をサポートするAI もあります。

自動車の自動運転は国土交通省が6つのレベル分けを行っています。

レベル0:完全なマニュアル運転
レベル1:ドライバーの運転支援
レベル2:部分的な運転の自動化
レベル3:条件付きでの運転の自動化
レベル4:高度な運転の自動化
レベル5:完全な運転の自動化

日本では、2020年4月に、公道上でレベル3の自動運転が解禁になりました。

2025年にはレベル4が解禁される予定です。

自動車業界では自動運転の技術競争が加速しています。

AI技術が今よりも更に高度になれば、交通事故を防げる自動車が誕生すると考えられています。

建築現場では、経験に基づく人間の高度な判断が必要とされることが多いので、現状は、AIの活用は試験的に導入されています。

現在AIが活用されているのは、施工現場の画像認識、点検現場でのひび割れの画像認識、打音や漏水音の音認識などになります。

建設現場では人手不足が深刻化しているので、今後、無人化の施工システムなどのAI活用が期待されています。

病院では若干の事例ではありますが、AIを導入した診察を実施しているケースがあります。

イギリスでは、症状を入力するとAIが可能性のある病気を診断するサービスがあります。

AIの精度が高くなれば病院での業務効率が改善されるだけではなく、医師が見落としてしまう病気を発見することができるかもしれません。

AIを搭載した端末を身につけることで、病気が悪化する前に体の異常に気づくことができるようになるので、早期発見、早期治療によって医療費を抑えられます。

更に、これまでは医者の経験や知識で施術を行っていましたが、AIは人間の記憶よりも高度な施術ができるのではないかと期待されています。

過去のたくさんのデータの中から的確な情報を探し出すことができるので、より確かな治療を受けられるようになると考えられています。

他に、消費者行動予測のAIが発達すれば、様々な商品開発において適切なビジネス戦略を行うことが可能になります。

現在はタクシー業界など限られた分野のみでしか、行動予測のAIは導入されていませんが、今後、飲食店やスーパーなどで導入されれば、無駄な商品の仕入れをする可能性が無くなります。

今後の日本では高齢化が更に進み、働き手不足が懸念されているので、自動化や効率化が期待できるAIの活用がもっともっと必要になってきます。

介護業界でもAIを活用することでスタッフの業務負担を軽減できます。

日本では介護事業所の利用者数に対してスタッフの数が不足しているので、1人が担当する作業も多くなりがちです。

そんな中でAI搭載のシステムを導入すれば、効率よく作業をすることができます。

例えば、AI搭載の音声入力システムを導入すれば、話すだけで入力が可能です。

AIが音声入力をサポートするので、ある程度の正確性も期待できます。

それ以外にも、AI搭載機器は介護スタッフの業務をサポートするものが多いので、導入することでスタッフの負担を軽減できると考えられています。

介護業界におけるAIの導入の代表例として、見守りロボットがあります。

介護事業所では利用者が自室から移動することも多いですが、施設から抜け出したり転倒したりするので注意が必要です。

通常はスタッフが定期的に見回りをして利用者が出歩いていないかチェックしますが、他の作業を中断しなければまらず、効率が悪くなります。

その点、見守りロボットを導入すれば、定期的に施設内を見回りしてくれたり、人を見つけたら知らせてくれたりします。

もちろん、スタッフが利用者を確認することが大事ですが、見守りロボットにサポートしてもらうことでスタッフの負担が軽減できます。

もう1つは、ケアプランや介護計画書作成システムです。

介護事業所では利用者に合わせたケアプランや計画書を作成しますが、とても時間がかかります。

その点、AI搭載の作成システムであれば、利用者の要介護度や過去のデータを参考に適切なプランを作成してくれると考えられています。

もちろん、最終的にはスタッフが検討してプランを決定すべきですが、介護プランの素案を短時間で作成してくれるので便利です。

介護事業所ではより良い介護サービスを提供する必要がありますが、限られた人手の中で質を上げるには効率的に働くしかありません。

AI搭載のシステムや機器を導入することで作業が効率化できるので、利用者と向き合う時間も増えます。

また、データを分析することで改善すべき問題点もはっきりします。

他にもAIの発展は、あらゆる人の生活を大きく変えることができる可能性があります。

障害を持っている人達の生活にも効果がありそうです。

AI技術が搭載された端末を体に装着して心身の状態を計測するものや、画像の文字情報や音声を自動でテキスト化するAIなどが開発されています。

更に、聴覚障がい者も車を運転できるように、周囲の音声情報をディスプレイで表示したり、ハンドルを振動させることでドライバーに伝えたりする技術も開発中です。

AIにより、障害の壁をなくせるかもしれません。

AI技術が導入されれば、障がい者雇用での多くの困りごとが解決する可能性もあります。

例えば、AIが音声認識をしてテキスト化をすることで、通訳者なしでもリアルタイムで報告や相談などができるようになります。

AIでたくさんの問題が解消されるので、企業も雇用しやすくなり、障がい者雇用が進むと考えられます。

障害があるとコミュニケーションの取りづらさや、移動が困難などの理由から社会参加が難しいことも多かったのが今までの社会です。

しかし、AIを活用することで、コミュニケーションの取りづらさは解消されます。

聴覚障がい者の方にはリアルタイムで音声情報をテキスト化し、視覚障がい者の方には文字や画像情報などを音声で伝えられるので、コミュニケーションをとりやすくなります。

また、移動の困難についても、AIの音声案内などによってスムーズに移動できるようになるので、出かけるのを控えていた障がい者もすすんで外出ができるようになると考えられます。

AI技術で得られる変化は、障がい者雇用、社会参加の促進にも役立ちます。

更に、障がい者の外出をサポートしたり、趣味や楽しみを増やしたり、教育に役立ったりと…様々な場面で活躍すると思われます。

映画とかであるようなAIの暴走による人間社会の乗っ取りなんてことは起きないと思うので…、これからAI技術がどこまで進化して人の生活をどのように豊かに幸福にしてくれるのかとても興味深いです。

写真はいつの日か…美瑛町で撮影したものです。

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