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開発のヒントは現場に眠っている。医療ドメイン未経験だったプロダクトマネージャーがいま生み出したい価値とは | エンジニアインタビュー

株式会社ヘンリーは、「社会課題を解決し続け、より良いセカイを創る」というMissionのもと、クリニック・中小病院向けの基幹システムであるクラウド型電子カルテ・レセプトシステム「Henry」を開発・展開しています。

今回お話を伺ったのは、「Henry」のプロダクトマネージャーを務める永田健人さんです。新卒でスタートアップに入社してからエンジニア畑を歩んできた永田さんは、副業期間を経て2022年3月にヘンリーに正式入社。

エンジニアが価値を生み出す「俊敏さ」に惹かれ、もともとこの道を選んだ永田さんが、いま立ち向かうのは「医療」という巨大で複雑なドメイン。課題を解きほぐし、価値あるインパクトを生むために一歩ずつ踏みしめていく複雑なプロセスですが「それでもいま楽しめているんですよね」と語ります。その背景にあるものに耳を傾け、永田さんのチャレンジについて伺いました。

ビジョナリーであり、同時にビジネスとしてのアップサイドを感じた

─ 永田さんは、2022年3月にヘンリーに正式入社していますが、それまでのキャリアで医療ドメインの経験はあったんですか?

医療分野は全くの素人でした。
新卒で入社したスタートアップでバックエンド開発やスクラムマスターとして活動した後、ビジネスSNSを運営・開発するウォンテッドリー株式会社へ転職しました。キャリアとしては、ヘンリーは3社目です。

─ ヘンリーを知ったきっかけは何だったんですか?

ウォンテッドリーの元同僚がヘンリーにいて、彼から「手伝ってくれないか?」と声をかけられたのが最初のきっかけです。入社の1年前くらいのことでしょうか。そのときは、副業としてフロントエンドエンジニアの業務をお手伝いしていました。

─ そこからなぜ、ヘンリーに転職をしようと思ったのですか?

理由はいくつかありますね。

ヘンリーは、ゴールとして「民間企業として日本初のノーベル平和賞受賞」を目指している組織です。当時から、転職するなら社会貢献ができる領域で、かつビジネスとしてのアップサイドがある製品に携わりたいと思っていました。いろんな会社を比較検討したのですが、「ビジョナリーな部分」と「ビジネスとしての成長可能性」のバランスにおいて一番しっくりきたのがヘンリーだったんです。

それと、副業で関わったからこそ知れたことでいうと、製品のクオリティの高さ、内部実装が綺麗なことが印象深かったですね。これはスタートアップがよく直面する問題ですが、リリースを目指してスピード感を持って開発を進めながら、同時に製品のコードクオリティを担保することって容易ではないんです。ヘンリーはその点、考えながら上手にバランスをとって進めているなと感じていました。

とはいえ常に「もっといいものはないだろうか?」を考えちゃう性格なので(笑)、転職活動の際は、他にも何社か見に行ったんですが、最終的には共同CEOの逆瀬川さんと林さんの価値観や思想のようなものが決め手になりました。スタートアップを経験するなかで、トップの価値観や思想が組織に及ぼす影響力を体感し、重要視していたので。2人とも話しているといろんなアイデアが出てくるんです。もちろん計画を立て、戦略的に進めている部分がありながら、「この先は未知だけど行ってみよう」とどんどん前に進んでいく、ある種のキャラの濃さを感じましたね。

─ 今後ヘンリーに入社するエンジニアにも医療ドメインは初挑戦な方も多いと思います。不安に感じている方がいたら、永田さんはどんなことを伝えますか?

そうですね、医療ドメインと一口に言っても複雑で広範に及ぶので、その全てを知らないとエンジニアリングができない、とはしたくないと思っています。今後チームを拡大していくに伴い、プロダクトの担当領域の知識があれば仕事を進められるようにしていきたいです。

現状は、社内の医療分野のエキスパートが定期的に勉強会を開催しています。勉強会では、医療の現場で行われている具体的なことを学んだり、医療制度を詳細に紐解き、一緒に理解を深めたりしています。もちろんその他にも、本を読んで勉強したり、あるいは現場の医療関係者の方に直接教えていただくことも多いです。

ゆくゆくは、全員が同じ情報を持って、同じ目線で開発に当たることができるように、エンジニアチーム内で共有できるラーニングコンテンツを制作したいと考えています。

医療従事者のエモーショナルな部分も配慮する

─ 現在、ヘンリーではどんなお仕事をされているんですか?

担当している業務は多岐に渡るのですが、大きく分けるとプロダクトマネジメントとフロントエンドエンジニアの役割を半分半分という感じでしょうか。医療ドメインの特性上、「Henry」の開発では、複雑なものを解きほぐし、効果的なものを考え選択する必要性があります。そのためプロダクトマネジメントは個人的に、より一層頑張っていきたい領域です。

プロダクトマネジメントの定義は難しいですが、もう全てなんですよね、製品をつくる過程で必要なことを全てやっていくという。総務省や経済産業省が定義するガイドラインや医療関連の法律を理解して、実際に製品に落としこんでいく道筋を立てる役割もその1つです。もちろん医療現場にもよく足を運びますし、1日中そこで観察させていただくこともあります。例えば、現場には山のように紙があって、手書きの書類も散見されるので「これはいま何をしてるんですか?」「この紙は何に使うんですか?」と直接教えていただかなければ分からないことも多いです。そうやって現場のワークフローを理解したうえで、複数の情報を整理して一般化して、製品に反映させます。

ただ、これは医療に限らずですが、ルールには「解釈の余地」が存在するので、各現場で運用の仕方が微妙に違っていたりすることがままあるんですね。そういった属人的な曖昧さの扱いも、ヘンリーのプロダクト開発においてチャレンジングな部分だと思います。

─ フィールドワークで印象に残っている気づきはありますか?

当たり前のことではありますが、医療現場は安全に対して想像以上に細心の注意を払っているんです。それはフィールドワークをしたからこそ知れたことでもあります。

医療はそういう現場なので、使われるツールは機能的な面はもちろんのこと、医療従事者が心理的な安全性を感じることができるか、という観点も大切。現状のワークフローに作業ミスの不安を抱くポイントがあるなら取り除いていきたいですが、一方で慣れている作業だからこそ安全だと感じていることもあるので、なんでも一気に機械に任せましょうとするのが現場の方にとって安心とは限らないんですよね。そういう医療現場で働く方々のエモーショナルな部分も汲み取っていく、そのバランスも意識しています。

ここを越えると「何かが変わるのでは?」という予感

─ 時計の針を戻してしまうのですが、そもそも永田さんがエンジニアという仕事に興味を持ったきっかけは何だったんですか?

もともと大学でコンピュータサイエンスを専攻していたのですが、コードを書く仕事に就くかどうかは当時は特に決めていませんでした。実際、SIerやエンタープライズ寄りの上流工程のみを担う仕事に就いた同級生も多かったですし。

きっかけといえば、大学時代に知り合いの会社でコーディングの手伝いをしたことがあって、そこでプログラマーとしてやっていくイメージをつけられたことや、同世代も含めて優秀なエンジニア、プログラマーとの出会いに恵まれたことが大きかったです。いわゆるWeb系の現場を早い時期に知ったことがこの道に進むきっかけだったような気がしますね。

─ その当時に触れたエンジニアの仕事の魅力をあえて言葉にするなら?

そうですね……ユーザーやカスタマーにとっての価値を、例えば「今週」「今日」という単位でつくり上げるプロセス、いわば「俊敏なプロセス」ですよね、それがおもしろいなって思いました。今日考えたことが、今日すでに実現できている速さといいますか。より優秀なエンジニアやプログラマーたちになってくると「すごいスピードですごい価値を生んでるぞ...…!」みたいなのを目の当たりにして。そうやって本質的な価値を見つけ、ソリューションを提供することが「かっこいいな」と思いましたし、ある種の爽快感すらありました。

─ 「俊敏さ」という意味で言うと医療ドメインでの開発は、その複雑さゆえに時間をかけてじっくりつくるようなイメージを持っていたのですが。

おっしゃる通り、製品として立ち向かっている対象が大きいので、1日で何かが大きく変わるというのはどうしても難しい領域ではありますね。何かをワークさせるためには、別の何かもつくらないとワークフローとして回らない……というのはよくあるので、つくり切るまでに時間がかかる側面は実際あります。俊敏さでいうと、製品が「toB向け」か「toC向け」かで違ってくるでしょうし、ヘンリーでは「toB向け」のなかでもさらに複雑なドメイン向けに製品体系としても比較的大きいものをつくっているので。

でも、楽しめてるんですよね。そのあたりのマインドセットは変わったのかもしれませんね。医療現場の価値観や働き方って、テック業界にいる身からするとまるで違う世界で、おこがましいかもしれませんが、ちょっとでも良い方向に向かうお手伝いができればと思っていて。たしかに時間は要するんですけど、いま進行中のプロジェクトがまさにそうですが、開発していると「これだけでも、何かが変わるんじゃないかな?」と思えることがあるんです。そういう予感を日々感じながら仕事をしています。

病院という「組織」に本質的な価値を届けるために

─ いまの環境は、エンジニアとしての成長可能性という点でいうといかがですか?

バックエンドでいえば、製品のコンセプト、外観、モデルとして複雑なものがたくさん出てくるので、それを読み解いて、かつ綺麗なかたちにしていくことが求められるんですよね。それまでの知識を活かしながら、考えていくポイントがたくさんあるので、エンジニアとしてのスキルを伸ばしていく余地が大きいと感じます。フロントエンドに関しても、医療現場の方がストレスなく使えるよう見た目はシンプルですが、実は挙動は難しいというものばかりなので、それを綺麗に実装していくチャレンジがありますね。

それと、先ほどもお伝えしたコードクオリティとビジネスとしてのスピードのバランス、どちらかに振り切る方がむしろ簡単なんですけど、そのバランスを考えながら、ある意味でギリギリを狙って実行していく環境がヘンリーにはあると思っていて。エンジニアとしては、そのバランスを実現していくチャレンジ自体も成長につながると思っています。

─ 今後、どんなエンジニアの方と一緒に働きたいと思いますか?

後発だから機能面で既存の製品に追いつくことがゴールではなく、目指しているものはその先にあるんですよね。「もっとこうしたら効率的だよね」という本当の価値の部分を見つけ、質的に優れているものを現場に製品を通じて提案していきたいので、エンジニアとしてそれを価値のあるコミットだと感じていただける方、おもしろさを感じていただける方とぜひ一緒に働きたいです。

─ ありがとうございます。では最後に、そういった環境で仕事をしている永田さんの今後の目標をお聞きしたいです。

そうですね……いまやっていることの延長線上ではあるのですが「より多くの現場を見る」ことでしょうか。

例えば、クリニックですと関わっている人数はそこまでは多くないのですが、病院となるとひとつの組織を扱ってるんですよね。当然、病院ごとに組織のかたちは違ってきます。それらを抽象化して、いろんな組織の仕事を効率化できるツールをつくっているので、それってすごくチャレンジングだなと思っていて。それを実現するためには、もっと現場についての解像度を上げていく必要性を感じています。同時に、現場で得たものを自分のなかにとどめずに、チーム全体で解像度高く共有できる状態をつくることも目指したいです。

そのため、現場に足を運んでインプットをひたすらしていくのが当面の目標です。同じ業界でプロダクトをつくっている人たちのなかで「最も現場を知ってる人間になるぞ」って思っています。そこで負けたくないですね。

インタビュー:中田 達大


ヘンリーでは、さらなる成長に向けて採用も積極的に行っています。ご興味をお持ちいただけた方は、ぜひお気軽にご連絡ください。