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宛名に「殿」!? 社内メールに使う言葉を見直し、社内の雰囲気を柔らかくした取組み

こんにちは。
三菱電機変革プロジェクトnote編集部です。
 
「佐藤さん」「鈴木様」「田中先生」
皆さんはメールを送るとき、宛先にどんな敬称を使っていますか?
 
三菱電機では昨年まで、社内メールに「役職名+殿(どの)」を使うルールがありました。
「総務部長殿」「高橋課長殿」・・何だかとっても厳かというか・・カタいですよね・・・
 
今回はこうした社内メールの小難しい表現を見直し、社内の雰囲気を少しでも柔らかくしよう、古い慣習を壊してみんながワクワクして新しいことに取り組む会社になるためのきっかけにしたい!と試みた、そんな取組みの一つをご紹介します。
 

メンバープロフィール


――今回の「殿」呼び見直し活動の背景を教えてください。


藤井:私たちのチームでは「会社の制度だけじゃなく、自分たちも変わらないと」をコンセプトにいくつかの施策を検討していました。組織風土改革って言うと、どうしても会社の制度への不満から考えがちだけど、それを運用・利用するのは自分たちなので、「自分たちも意識を変えよう。一人ひとりできることから始めよう」と。
 
井出:具体的に何をするかあれこれ議論する中で、「あいさつや感謝といった基本に立ち返ろう。それらを増やすことでもっと気軽なコミュニケーションが取りやすい雰囲気を作ろう」という流れになりました。そして、「じゃあ今は何がそれを邪魔してるんだろう?」と考えていたら、要因の一つとして「メールとはいえ『殿』呼びはおかしくないか?」と挙がってきました。
 
原田:よく考えてみると、他にも社内メールなのに妙にへりくだった言い回しが多くあって、これじゃ上下関係の意識やよそよそしさが出ちゃう。そうした雰囲気があることが職場の居心地を悪くしているだけではなく、新しい事業のアイディアを言い出しにくい、古い仕事のやり方や考え方に異議を唱えにくい、といったことに繋がっているとすればこれは大問題だな、と。
 
藤井:そして変革プロジェクト全体の大方針の一つとしてコミュニケーション改革を掲げる中で、「あいさつ、感謝、『さん』づけ」を盛り込み、社内に呼びかけることになりました。
 
――そもそも、何で「殿」だったんでしょうか・・?
 
藤井:正確にはわかりませんが、賞状だったり、当社以外でも公式な文書に「殿」を使う例はあって、本来は敬意やリスペクトを示す丁寧な表現なので、それが社内の日常的なメールにも使われるようになったのだと思います。
 
――社内への呼びかけで何か工夫したことはありますか?
 
井出:やっぱりどんなことでも「変えること」への抵抗はあるので、「何で変えなきゃならないの?」といった声も含めて、いろんなコメントをいただきましたね。
 
藤井:そうやっていろんな人と話していく中で、普段のメールではなく社内通達に使う業務システムの宛名で「殿」が設定されていることに気付き、そういうところから直さないと皆が変えにくいねということでIT部門に相談しました。すると「会社規則で定められているので、まずはそこから直しましょう」となりました。
 
原田:そこで規則を調べてみたら「文書作成ハンドブックに従う」と書かれていて・・。ハンドブックの存在は知っていたけど、単なるガイドと思っていて、そんな厳格な規則として紐づけられているとは知りませんでした。
 
井出:「そりゃみんな真面目だし、守るわな、変えられないな」となって、今度はハンドブックを管理している総務部にハンドブックの改訂について相談しに行きました。
 
藤井:そうしたら総務部もノリノリで(笑) こっちは「殿」だけ変えてもらうつもりだったんですが、「他にも”下名”とか”ご進講”とか気になってたカタい表現いっぱいあるんだけど、どう思います?」と逆オファーもらって。「じゃあ一気に直しちゃいましょう!」と(笑)
 
原田:でもこの文書作成ハンドブック、普段は辞書的に使うものなので通しで読み込むの結構大変でした・・(笑)
 
藤井:その他にも、ハンドブックの改訂版発行に合わせて告知のポスターを作ったり、当時の人事総務担当役員にも呼びかけてもらう対談動画を作成したり。動画はかなりノリと勢いでやっちゃいましたね。「お土産持ってきましたー」ってお菓子持って相談しに行って、でも役員さん忙しくて予定押さえにくいから、「じゃあこのまま撮っちゃいましょう!」ってスタジオ移動して(笑)

告知用ポスター

井出:偉い人の呼びかけという点では、姫路地区でも所長が積極的でした。姫路には隣り合わせに2つの拠点がありますが、所長がどちらも田中さんで、二人とも「『田中所長』はやめてくれ。『田中さん』もどっちかわかりにくい。『和さん』『昭二さん』と名前で呼んでくれ」と呼びかけてくれて。これで一気に広まりましたね。
 
――その後、社内の反応はいかがでしたか?
 
原田:日常では使わない小難しい表現を見直したので、「カタさが取れて気が軽くなった」とかなり受け入れられていると感じています。また、これまでは、例えば「原田課長殿」と「名前+役職+殿」で宛名を書かなきゃならなくて、相手の役職名をいちいち社内電話帳で確認する手間がありました。それが「名前+さん」でよくなったので、シンプルに「楽になった」と好評です。従業員数万人で計算したら、かなりの時間分の業務削減・効率化にもつながりますし。
 
井出:見た目にもわかりやすく、誰もが毎日関わることだったので、「何か変えようとしているな」と変化を体感しやすかったのが大きいかもしれませんね。一緒に挙げた「あいさつ、感謝」と含めて、最初は懐疑的だった人が「やっぱりこういう基本が大事だよ!」と途中から積極的な推進派になってくれたりしましたし(笑)
 
藤井:今もある種のこだわりを持って硬い言葉を使う人もいますが、「あいさつ、感謝」も「さん」も別に強要はしていないので、それはいいかな、と。私たちはコミュニケーションしやすい雰囲気を作るための一つのツールとして「やってみたらどうですか?」と提案しているだけなんです。それでその価値に気づいた人がこれだけ増えているなら十分な成果だなって思っています。
 
――この「殿」呼び、新聞でも記事になりましたよね。
 
井出:おかげで社内外でだいぶ話題になりました。変革活動について他社と交流することも多くて、「うち『殿』使ってたんですよ」と話すと、どこの会社でもメッチャ驚かれますね(笑)
 
――変革プロジェクトでは今回のものに限らず様々な施策に取り組んでいますが、やってみての感想はいかがですか?
 
藤井:私は所属する生産システム本部の変革活動を主に担当しています。自分で「これどうだろう?」と思ったことを試して、それが約1,000人に影響して、反応もダイレクトに返ってくる。そこに責任を感じつつ、面白さもあります。管理職やスタッフ部門の皆さんも全面的に協力してくれているので、心折れずに続けられていますね。
 
井出:正直、しんどいはしんどい。でも楽しい(笑) これまでの仕事とは違って変革活動には全員が納得する絶対の解はないし、終わりもない。「どうしたらいいねん!」ってなる時もあります。でも提案が一気に広がって大反響となることもあって、その時の達成感はすごいです。
 
原田:やっぱり楽しいです、大変だけど(笑) 大変さよりも楽しさの方が勝ってる。自身の提案が何でもすんなり通るわけではないですが、受け入れられて、多くの人が一斉に「よし、やろう!」とパーっと広まっていく瞬間は本当に醍醐味を感じます。例えば、今回と同じメンバーで「1on1ミーティング」を社内に普及させようと活動しているんですが・・・この話はまた記事にしてもらえるんですよね?(笑)
 
編集部:はい、ぜひまたお願いします(笑) 皆さん、今日はありがとうございました。また次のテーマでお願いします。