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初めての坦々そうめん 秋豆絹

我が家に揖保乃糸が来た。友達ではない、そうめんだ。
実家の食料便からのご登場だったのだが、先日実家に帰った際に食べたそうめんがやたら美味しかったのはお主のせいか、と人間だったら両肩をガシッと掴んで身体を前後に揺さぶる感じで鷲掴みした。
これを日常で食べてしまったらもう戻れない。でも送ってもらったわけだから食べるしかない。よき頃合いを見つけて美味しく頂こう、と食材の詰まった段ボール箱に丁寧に戻した。

幽体離脱前スタイルのぽてっとした質感の揖保乃糸


そして数日が経ち、とある日。
機は熟した。猛烈にそうめんが食べたい。
私にとってそうめんは、食べたい欲が頂点に達した時だけに食べるのが吉な食べ物だ。心の機微を繊細に読み取り、モチベーションMAXの状態でいそいそと帰路につくことにした。

ん?でも待てよ、これはただのそうめん食べたい欲ではない。いつかやってみたいなと思っていた「担々麺」風にしたい気持ちが入り混ざっている……。
合点、やってやろうじゃないか。今家には一通りの調味料と冷凍のほうれん草がある。進めていた足をスーパーに向け、無調整豆乳・ひき肉を買い足した。


食料が詰まった買い物袋の重力を感じつつ家の鍵を閉め、玄関で一息ついた。大丈夫、まだモチベーションは消えていない。
さっそく食材を取り出し調理を開始した。

今回参照したレシピは工数が少なく、それなりの時間で済んだので少々ご紹介。
耐熱容器に豚ひき肉と調味料全部(豆板醤・鶏がらスープの素・すりごま・味噌)をさっくりまんべんなく混ぜ、火が入るまでレンチン。これで味付きひき肉が爆誕する。
スープはよくある片手飲みサイズの無調整豆乳を器に注ぎ、レンチンした味付きひき肉をドボン。これだけで坦々スープの出来上がり。
味付きひき肉は多めに作って冷凍すれば、いつでも坦々スープが作れる。
お手軽に一工夫あるものが食べられるというのはひとつの幸せである。

さて、揖保乃糸が舞う時間だ。
初開封。湯に通す前の端正な姿はとても華奢で、持つだけでもほかのそうめんとは一線を画していることがわかる。
そうめんを茹でるときというのは本当に一瞬だ。ぼこぼこに沸いた湯にあおられ、刻々と模様を変えて曲線美を描いていく。

伸びないようさっと湯から掬い上げ、ここで本当は氷水につけるべきなのだが、温かいごはんが食べたかったので適当に水を切りそのままスープへ滑りこみ。これが、味が若干薄まるという小さな悲劇を生むとも知らずに。

さあ、いよいよ完成だ。調子に乗って一緒に買ったクルミを砕いて散らし、冷凍出身のほうれん草と小ねぎを添えた。っっっバッチリだ。


坦々そうめん〜揖保乃糸を添えて〜

自分が坦々そうめんを作れたことにプチ感動である。そしてさすが揖保乃糸、やっぱり美味しい。飽きが来ない。
お味は一般的な美味しさではあったが、まだまだ伸びしろを感じられる希望の塊であった。
そして坦々そうめんでファーストステップを踏めた私は、そうめん界の少し新しい景色が見えた。
やはり、透明な器を買いたい。プラスチックのボウルじゃ物足りないのだ。
買ってみたいな、と前々から思っていたが、こう、一つ願望が実現すると、次の願望が前に出てくるようだ。


これにて私の坦々そうめんデビューが幕を閉じた。ありがとう、揖保乃糸。

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