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"日本円"が安全資産じゃなくなりつつある

原油価格の高騰は円安に推移しやすくなる。

これは原油を買うため、”円”→”ドル”に換金作業が行われることで原油の高騰分を多めにドル買いする必要があることが原因と言われている。

ただ、直近のニュースで「石油の備蓄を放出する」(石油の供給量を増やして、需要とのバランスを取って原油を値下げ圧力を強めようとしている)と日本政府が発表しても、どうやら円高に戻ってこない。

なんとなく、日本国民の中には日本は輸出産業が多いから、円安のほうが国が豊かになると思っている人が多い。

もちろんその側面もあるが、工場は日本だけにあるわけではないし、日本は輸出産業だけではないので、何かを輸入して売る仕事の人達にとっては厳しい環境だろうし、石油はエネルギーなので、エネルギー価格の高騰は個人消費にも影響するはずである。

原油の高騰によって円安。と始めの頃は言われていた。だが、ドル円の為替が戻ってこないということは、どうやらそうでもなさそうである。

日本は比較的コロナも収まっている。一時的な要因の不安要素は無いような気もする。

じゃあ、もろもろ何が原因かと考えると、シンプルに”円”の価値が国際市場の中で低下しているんじゃないだろうか。

コロナが明けて、多くの国では経済活動が盛り上がり、クリスマスに向けたリベンジ消費も期待されている。だが、日本に至ってはコロナが収まっているにもかかわらず、そこまで盛り上がっているムードはない。

岸田総理の発表した景気対策もショボい。マイナンバーを作ったら5000円もらえるらしいが、たまたま申し込んだヤフーカードの入会特典は入会3000P+3回カードを使ったら5000Pもらえるというものだった。

一国の政府の政策が、一企業のクレジットカードのプロモーションよりショボいとは目も当てられない。

”日本円”の価値が低下しているというのは、どういうことだろうか。

簡単に言えば、日本という国の信用が落ちている。ということである。

それは政治に対してだけではなく、経済システムがおかしいとか、将来性がないということであると思う。

過去にはアメリカが調子悪そうだなというときの逃避先として日本円が選ばれることが多かった。だが、最近はそれがユーロになっている。

もちろん過去からユーロも安全資産になっていたが、移民とかギリシャ危機、Brexitみたいなものが落ち着いてきて、また安全資産になりつつあるかもしれない。

政治がどうとか、経済がどうとか、日本の問題はたくさんあるだろうが、単純に国力が落ちてきているというのは問題だと思う。要するに、他の国が経済成長しているのに日本だけ貧しくなっているということである。

他の国がグングン経済成長しているのに、日本だけが成長していなかったらそれは、相対的に日本の国力が低下していることになる。

安くて美味しいものが食べれるとタイ旅行が好きな人は多いかもしれないが、タイの富裕層はブランド物を日本に買いに来ることが多い。理由としては、日本の方が安いからである。

貧しくなっている日本では高級品を買う人が少なくなっているし、円安なら尚更買いにくくなる。中古などの在庫も含めて品揃えが良いので、割高のタイより日本のブランド物を買った方が安いというわけである。

ブランド物だけでなく、日本が見捨てたような職人が作る伝統工芸品であったり、タイで買ったら割高になるものをわざわざ日本に買いに来る。このような行動は、かつて日本人が東南アジアでよくやっていた行動である。

Macを買おうとしても、タイで買っても日本で買っても、価格は大体同じである。だが、タイでアップル製品を持っている人は結構いる。エンジニアであれば、日本より給料が良い仕事も多い。

タイの政治は荒れているが、無関心である日本と比べてどっちがいいと言われると、判断できない。若者の政治参加もタイはすごく多い。

これからどういう選択を日本がするかわからないが、楽観視できる状況ではないかもしれない。コロナからの経済復興があきらかに遅れているし、リバウンドの跳ね方が他国と比べると弱すぎる。

受給のバランスで言えば、ドルはテーパリングして供給量を減らしている。FRBはパウエル議長の再任が決まったので、急激に方針を転換することもないだろう。

ドルの数が減って、円の量が増え続ければ、供給量が多いものの価値は下がっていく。もちろん、円の供給はまだまだ増やせると私は思っている方の人間だが、金の循環が悪すぎる気がする。

高いものを買う必要はないにしても、やはり生きて経済活動を行っていく上で、所得は上がっていったほうがいい。円の価値が下がっているのに、所得が変わらないというのも、実質的には価値が目減りしている状況になっている。

雇用の流動性や労働市場の参加者のバランスが悪すぎると思う。企業の新陳代謝が無ければ、ずっと同じ動きを続けるのが日本文化の特徴でもあるので、これからもずっと変わらないというのはなんとなく理解できる。

ずっと同じことをやるから、ずっと変わらないというのは当然の帰結である。財政がヤバいとか給料が低いと騒ぎ立てても、結局言うだけで何も変えない。たとえ、少し変えていたとしても、海外の変えるに比べたら変わっていないも同然との見られ方をすれば、相対的に日本の成長率が低くなる。

今のままの生活で満足している人が多いのであれば、そのままでいいと思う。ただ、変えたほうがいいと思っている人が多くいる中で、日本がずっと変わらないのであれば問題だと思う。

どんな人生を送ろうが、人は生きて死ぬだけだが、せめてこれから生まれてくる人に生まれてきて良かったなと思える世界をプレゼントしたいものである。

日本円の価値が下がっているというのは、単純な「円安」というわけではない。ずるずるとどこまで下がるかわからないが、日本の信用力を上げることは非常に重要だと思われる。

今回の円安を機に、日本円の通貨が暴落するなんてことを書いているメディアもいるようだが、そこはマーケットの世界なのである程度下がったらまた反発していくというのはセオリーではある。

ただ、過去のアベノミクス時には120円だった時代もあるので、1ドル115円程度のところからもう少し余裕がある感じに見えてしまう。

自動車産業がいろいろ半導体不足や燃料高で、かなり苦境となっているかもしれない。

飲食店や小売業も、コロナ明けで盛り上がっているのかどうか、一律給付の事業支援金もニート生活ができた事業者と全然足りない焼け石に水の事業者で明暗が別れた。

こういうときに適切な処置ができるよう、私達は普段から確定申告したりするんじゃないかと思うが、全く政府が何を考えているのか謎である。政府も謎だし、企業も謎である。

信用という意味では確かに日本の国の信用も落ちているし、日本の中での信用も薄れてきている。

簡単にカネを使わないということは、言い換えれば、今は金を使わずに持っていたほうが、将来が得と思っている人が多いということである。

もし明日から日本円がタダの紙切れになると知ったら、急いで貯金を実物資産に変えたり、ドルに換えたりする人が多いはずである。

そこまで極端じゃなくても、今後はじわりじわりとその傾向は強まるかもしれない。

これといって国民にできることはないのだが、金を囲い込まずにもっと個人消費を増やすような考え方をしたほうが良いと思う。

無駄遣いする必要はないが、投資して利益を得るとか、確定申告できるように知識を身につけるとか、できることは増やした方が、何かあったときに逃げることが出来る。

コレまでの安倍政権は失業率が減って、賃金はそんな上がってないという評価だったが、岸田総理でそれが解決できるのか謎である。

おそらくコロナで失業率は上がった。日本の労働市場の構造を考えると、これからさらに時間はかかるだろう。

この苦境からどのように転換していけるのか、いまのままの政策で大丈夫なのか、日本の信用力は上がるのかしっかりとチェックする必要がある。






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