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言の葉の庭のラストシーンに隠された優しさについて

( ※ ↑画像はホームページより )

一番好きな映画はなんですか?と聞かれたら、
私はこの作品を選ぶ。小説も同じく。

理由は多々ある。私は孝雄くんや雪野ちゃんと多分同じものを抱えてるなあっていう共感もあり、結局人間は弱いんだなという救いもあり。詳しくはまたの機会に。

私が一番好きなのはラストシーンだ。なぜなら、孝雄くんと雪野ちゃんの優しさが溢れているから。今回はその優しさについて私なりの考察を書こうと思う。


〈 孝雄くんの優しさ 〉

非常階段で自分を追いかけてきた雪野ちゃんを、孝雄くんは罵倒する。まあ、ブス!とかバカ!みたいな小学生じみたものではなくて、今までの不満をぶちまけるようなものである。

ただ、この罵倒はフラれた腹いせなんかではなく、彼なりの理由がある。小説を読んだことがある方はご存知かもしれないが、彼は【雪野ちゃんに言ってあげた方がいいと思うこと】を言っているのだ。

つまりこの罵倒は彼の優しさなのである。そもそも本気で好きになった人を平気で傷つけるようなことができる人間など、あまり存在しないのではないだろうか。ではなぜ孝雄くんは、あえて雪野ちゃんが傷つく言葉を言ったのだろうか。

ここからは私の推測だが、
所詮自分みたいな15のガキに好きになられても迷惑だろう。せっかく雪野ちゃんが前に進もうとしているのだから、それを邪魔するようなことをしてはいけない。自分のこと(孝雄くんのこと)など気にせず前に進んでほしい。いっそのこと嫌われでもしないと、ずっと好きになったままで諦めきれない。
というような理由だと思われる。

まとめると、前に進もうとしている雪野ちゃんを邪魔したくなかった。雪野ちゃんに嫌われることで、気持ちに終止符を打とうとした、ということだ。
若干自分のためでもあったかもしれない。(笑)

ただ、自分の気持ちではなく、相手のためを思って行動した孝雄くんの判断は賢明だったように思う。そして、好きな人をわざと傷つけるのは苦しかっただろうなあなんて、ひとり感情移入してしまったシーンでもある。


〈 雪野ちゃんの優しさ 〉

雪野ちゃんが最後に言ったセリフに注目してほしい。
「あの場所で私、あなたに救われてたの」

孝雄くんの「好きだ」という言葉に対して、彼女が最終的に返した言葉は「救われてた」である。実は、映画でも小説でも、彼女は最後まで孝雄くんに好きだと伝えていない。

もちろん映画で見ても分かるし、小説にも書いてある通り、雪野ちゃんも孝雄くんのことが好きだった。しかし、直接は伝えなかった。そしてその後2人はハグするわけだが、それっきり。特に付き合ったりもしない。

雪野ちゃんは四国で教師としてまた働き始め、孝雄くんは高校卒業後、イタリアのフィレンツェに修行に行く。
そして孝雄くんが20歳のときに再会する。
その先は書かれていない。

ではなぜ雪野ちゃんは孝雄くんに好きだと言わなかったのか。ここからはまた私の推測だが、
孝雄くんくらいの年齢の子が大人の女性に憧れるというのはよくあること。彼が本気なのは分かるけれど、高校生はまだ大人をよく知らない。だから大人になって、自分以外の女性の存在も知った上で考えてほしい。そして、彼の夢を純粋に応援したかった、
というような理由かと思われる。

あの一瞬でここまで考えられるかは正直分からない。だが、彼の将来を考えてあの時点で次のステップへ進まなかったことは、当たり前といえば当たり前なのだが、好きな気持ちを抑えて前へ進む事を選んだということになるので、大人だなと思った。そして、それこそが雪野ちゃんの優しさなのである。

________________________

このシーンはよく、孝雄くんが気持ち悪いとか、未成年に手出すとかうんたらかんたら、みたいに言われることも少なくないのだが、ちゃんと観察してみると2人の優しさが伝わってくる、結構素敵なシーンであることが分かる。

2人で人生の雨宿りをしていて、そこでたまたま恋に落ちたけれど、お互いに前に進もうと決めた。
この作品は、いわゆる前向きになれる作品に当たるのでは?と、私は思っている。

恋愛の話というよりも、人生たまには休んでもいいんだよ、寄り道してみたら素敵な出会いがあるかもしれないよ、的な感じで、人生の話として観てみると、面白いんじゃないかなあと思う。

もちろん、作画もとっっっても綺麗なのでおすすめだ。個人的に、雪野ちゃんの声が花澤さんっていうのが、推しポイント。👀❕

またこの作品についてお話するかもしれないが、今回はこの辺にしておく。

最後まで読んでくださって、ありがとうございました!₍ᐢ.ˬ.ᐢ₎


言の葉の庭の解説はこちらから↓




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