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「わたしたちは良いチーム」という思い込み

ハイパフォーマー集団だからこそ、チームになるのが実は難しい経営チーム。

組織の成長・変革を牽引する「経営チーム」のつくりかたのヒントを、エグゼクティブコーチがお伝えします。

前回に続き、経営チームをつくるのが難しい理由を挙げるとすると "一部の人が「自分の経営チームは良いチームだ」と思い込んでいる" ということがあります。もちろん、本当の意味で "良いチーム" であればよいのですが、あくまで思い込み、といったケースも少なくありません。

ある証券会社の会長とお話しする機会がありました。

「経営チームをつくるのは体現に難しいですよね」という話をすると、「他社さんでは、そうなんですかね。うちは役員同士、仲がいいですよ。なんでも話しますし。同じ釜の飯を食ってきましたからね。なあ、そうだろ?」

そういって、隣に座っていた人事の執行役員の方に、同意を求めました。

「...そうですね」

人事の方は明瞭に答えましたが、一瞬答える前に、間がありました。微妙に表情も堅かった。私にはそう見えました。

会長は、私にエグゼクティブ・コーチングを "営業する隙" を与えたくないのだろうか?そう一瞬思いました。しかし、会長の表情のどこにもそうした "守りの姿勢" を見出すことができませんでした。好々爺のような表情をたたえた会長は、心の底から 「自分たちの経営チームはうまくいっている」 と思っているようでした。

実は、会長にお会いする1ヶ月ほど前に、同社の経営企画の部長とお会いしていました。部長は「どうも役員同士のコミュニケーションが良くない。経営会議で議論はとても活発に意見交換をしているという感じではないし、何かできないだろうか」そんな相談を受けていました。

なぜ、同じ社内で、これほど認識にギャップがあるのでしょうか。

"オールドボーイズクラブ" という表現があります。簡単に言えば "気心が知れた、昔からの男性の仲間の集団" のことです。

「口にせずともわかっている。よせ、それ以上は言うな。わかっているから」そんなセリフが飛び交いそうな雰囲気を持っている集団です。

オールドボーイズクラブでは、往々にして、コミュニケーションの型が決まっています。既得権益の上で長らくビジネスをしてきた会社の経営チームは、オールドボーイズクラブが結構多いー「仲は良い。けれど、チームではない」 のです。

一方で、別の金融会社の経営チーム。営業本部には5人の執行役員がいます。その5人のトップに、会社史上初めて、女性が抜擢されました。

この方曰く、
「"分かっているはずだ" は、オールドボーイズクラブの幻想だと思います。そもそも私はクラブの一員ではないですし...。だからチームをつくりたい」

役員5人は毎朝8時に出社し、そして1時間話すそうです。アジェンダを決めるわけでもないし、話す順番があるわけでもない。ただ、とにかく毎日話す。

話すことによって、おたがいが考えていることが本当の意味で理解でき、距離が近づき、そしてチームになっていく。

今、そのチームは、次々に革新的なアイディアを打ち出しています。

御社の経営チームは、チームでしょうか?
それともクラブでしょうか?

〜『未来を共創する経営チームをつくる』第1章より抜粋編集

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