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チェルシー×アトレティコマドリード UEFAチャンピオンズリーグ round of 16 1stレグ 2021.2.24

こんにちは!へーこです。今回はチェルシー×アトレティコマドリードの1戦について戦術分析レビューを書いていきます。今まで記事が長すぎてしまうことが多かったので今回はなるべく圧縮してピンポイントに試合の攻防を書いていければいいなと思います。

では、早速試合を振り返っていきましょう。

スタメン

チェルシーのシステムは343。アトレティコも343の形だ。しかし、試合中はどちらもこの形をとっていた時間はほとんどないのであまりシステムは気ににしなくて良い。主な欠場者としてはチェルシー側はTシウバ、アトレティコ側としてはカラスコトリッピアーである。

チェルシー保持時① 前半戦の攻防

チェルシーの保持の仕方

チェルシーは3バック+ 2CHでビルドアップ隊を構成する。その点はいつもと同じ。ただいつもと違ったのは前線の選手の振る舞い。普段なら5レーンをきっちり使ってくるチェルシーだがこの試合は違った。

まずヴェルナージルーがアトレティコの真ん中の4枚の間に立って裏抜けの駆け引きをしてアトレティコディフェンスラインの4枚をピン留めする。WBはいつもと同じようにワイドレーンにポジショニングする。そしてマウントはライン間にいつつも主に右のハーフレーンに位置取っていた。特にマウントはフェリックスの脇にポジショニングしながら縦パスを引き出す仕事をすることが多かった。ちなみにこの試合はコバチッチもマウントのようなポジショニングをすることも多かったので334の形のように見えることも多かった。

トゥヘルの考えとしては、6枚で守ってくるアトレティコに対してその間に入り込んで5レーンを使いに行くのは窮屈すぎるのでそれよりもそのディフェンスラインの前のスペースを使いたいというのがあったと考えれる。

それにしてもこのやり方はシメオネが6枚で守ってくるというのをの予想していなければいけないはずだ。選手が試合中の判断でこのような動きをしたという可能性も否定はできないが、選手の判断だけでは試合開始早々からこの動きはできないだろう。となると、トゥヘルはこのシメオネの守備を読んでいたという事になるのかだろうか。

◆アトレティコの守備

この試合前、事前に両チームのサポの間で話題になったのは今シーズンになって攻撃の型を作りつつあったアトレティコがどのような戦い方をするのかということ。そして、蓋を開けてみればアトレティコがアトレティコする結果となった。アトレティコの狙いはゴール前を人海戦術で守ってそこでチェルシーにスペースを与えないというものだった。

この試合、アトレティコは大半の時間を631の形でブロックを作る守備をしていた。まず、3バック+ジョレンテの4人でペナルティーエリアの幅を埋めて、チェルシーのヴェルナー、ジルー、マウントを抑える。WBのオドイ、アロンソに対してはコレア、ルマルがマンツーマンのマークをして対応。これで6バックが完成する。

そして中盤の3枚はフェリックス→アスピリクエタ、サウール→ジョルジーニョ、コケ→コバチッチをそれぞれ監視する。監視と言ってもチェルシーの選手がボールを運ぼうとしたら前に出る、縦パスを入れようとしたら少し近寄って牽制をするというもの。つまりアトレティコの3枚はディフェンスライン前のスペースを埋めることを第一優先にしているように見えた。

ここまでみれば分かってくるのがクリステンセンリュディガーが浮くということ。今までも何度も本note記事で取り上げていることだが、チェルシーのビルドアップは右からの方がスムーズな構造になっている。そのためチェルシーのビルドアップを左回りさせようというのがシメオネの狙いだったと考えられる。

しかし、実際にはそうはならないことが多く、631というシステム上、重心が後ろに下がってしまいカウンターの火力も下がってしまっていた

チェルシー保持時② アトレティコ攻略のポイント

前項のアトレティコの守備の項目であえて触れなかったのはチェルシーの右のハーフスペースにポジショニングしているマウントの対応について。そして、毎度のことだがこのマウントがチェルシーの攻撃の起点となった。

まず、前述したようにマウントは右のハーフスペースにポジショニングする。このとき、マウントはフェリックスの脇に立つことが多かったのだが、ポイントはLHVのエルモソとの距離。エルモソとの距離が近すぎるとマウントはエルモソの監視下に入ってしまう。一方で距離が離れているとエルモソは自身の担当エリアのスペースを開けないようにするためマウントを抑えについてくることはない。そのためマウントはフェリックスの死角に入りつつエルモソの監視下に入らないようなポジショニングをとっていた。

このようにすることによってチェルシーはフェリックスに対して、マウントとアスピリクエタをぶつけて2vs1を創出するというのが狙いだったと思われる。フェリックスはアスピリクエタがボールを運んできてもマウントが気になって前に出ていけない、逆にアスピリクエタを抑えに前に出るとマウントをフリーにしてしまうという現象が起きていた。そして、チェルシーは前半このようにしてできた中盤の脇のスペースを起点に攻撃をすることが多かった。

ちなみにこの現象は頻度は少ないが左サイドでも同様の現象が確認できた。

ただ、アトレティコはある程度中盤の脇を使われることを許容し、ゴール前にはいってくるボールを跳ね返せればいいというコンセプトを持っていたためチェルシーは決定的なチャンスを作れることは少なかった。

シメオネの修正策~中盤の脇を抑える~

後半のスタートからシメオネは細かい修正をしてきた。そして、この修正は前半の守備の仕方と併用されながらチェルシーを苦しめることになった。

◆前半戦のまとめ

・アトレティコは631で守備ブロックを形成。カウンターの火力が下がることは許容する。

・チェルシーは中盤の脇で数的優位を作ってそこを攻撃の起点にする。

この2つを頭に入れておいてほしい。そしてシメオネの修正策はカウンターの火力を担保しつつ中盤の脇を使わせないというものだった。

◆シメオネの修正策

後半、シメオネは前半にチェルシーの攻撃の起点になっていた中盤の脇を使おうとするマウント、コバチッチに対して大外を守っていたコレア、ルマルをぶつけることで対応した。

こうすることによって、

①チェルシーに中盤の脇からのチャンスメイクをさせないようにする

前半戦のチェルシーの攻撃の起点となっていた中盤の脇のスペースの守備担当をはっきりさせることで。この位置からのチャンスメイクをさせない。

②フェリックス、コケがチェルシーのHVを抑えるタスクに集中できるようになる

前半戦は中盤の脇のスペースに気を取られてHVの監視に集中が出来なかったフェリックス、コケがHV監視に集中できるようになる。このため、アトレティコは後半戦に前プレを発動する回数を増やすことができていた。

③カウンターの火力の担保

中盤の脇のケアをに気を取られていたフェリックス、コケが高い位置を取りやすくなる。そのためカウンターの火力を担保できるようになる。

シメオネはこの3つの効果を狙っていたのではないか。

実際、後半のマウントは途中交代を考慮しても明らかにボールに関わる回数が減っている。

マウントのパス本数とパスエリア

【前半】31本

【後半】8本 (74分で交代)

ここまで見てもシメオネ修正策はチェルシーの攻撃の起点を防ぐことができていたといえる。

では、なぜこの守備が成立したのか。次の章ではその理由を考えていく。

修正策成功のカギ~チェルシーを縦に分断した~

◆WBが浮いていた理由

シメオネの修正により中盤わきのスペースは管理できるようになった。しかしその一方で前半はマンマークを付けられていたWBが後半ではフリーになる時間が増えた。シメオネはWBを浮かせていてもよいという判断をしたのである。では、それはいったいなぜだろうか。

その理由はチェルシーのHVとWBの距離を離すことができていたからである。

シメオネの修正策によりHVが高い位置を取るのが困難になった。そのためHV-WBの距離が遠ざかる。

その結果として、

①HV→WBのパスは減少する

②アトレティコのディフェンスラインはチェルシーのWBから距離を取って守備ができるのでコンパクトな陣形を崩さずに守備が可能になる。

このような効果が生まれていた。

ちなみにこの話題は前節の記事でも触れている内容なのでよければ見ていただきたいです。

https://note.com/heko5606/n/ne2e5d7d37a9f

 ↑前節の記事のリンクです。

さらに、コレア、ルマルはなるべくコバチッチとアロンソ、マウントとオドイの間に立つようにして、寄せるときはWBへのパスコースを消しながら寄せていた。

このようなことが下敷きとなってシメオネの修正策は功を奏していたのである。

◆チェルシーを縦に分断した

ここまでの話をまとめると要するにシメオネはチェルシーを縦に分断したということだ。

まず、ディフェンスラインからボールを引き出して攻撃人にボールを供給し前と後ろのリンクマンの役割をしていたマウント、コバチッチを抑える。そして、フェリックス、コケにアスピリクエタ、リュディガーを抑えるタスクに専念させることでチェルシーのビルドアップ隊が前進することを抑える。そうすることによってアトレティコはチェルシーのビルドアップ隊から攻撃人にボールが供給されることを防いだ。さらに、もし大外のWBにボールが入ってしまってもゴール前の人数は担保できているのではじき返すことができる。

このような守備設計のもとシメオネはチェルシーを文字通り縦に分断したのである。

結局、ジルーのスーぺルゴラッソによってアトレティコは負けてしまったのだが後半のシメオネの修正策は読み解いていくととても合理的で理にかなっていたように思える。2ndレグではチェルシーはマウント、ジョルジーニョが出場停止な一方でアトレティコはカラスコ、トリッピアーが戻ってくる可能性がある。チェルシーも全く油断することができないので、2ndレグも好ゲームを期待できそうで楽しみである。ここまで読んでくださってありがとうございました。

試合結果

UEFA チャンピオンズリーグ round of 16 1st レグ 2021.2.24

チェルシー×アトレティコ・マドリード

スコア 1-0

得点者 ジルー

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