再びアバディーン大学へ

4月15日月曜。午前中の授業が終わると僕はアバディーン大学に出向いていたようだ。ようだ、というのは僕は決して1年以上前の何月何日にどこに行ったかを覚えているわけではない。スマートフォンの写真フォルダを見て一枚の写真から何があったかをつなぎ合わせているのだ。

僕がこの日にアバディーン大学に行った理由はおそらくベルギーのあの子に会うためだろう。どこかで彼女に会えないかと期待しているわけだ。夜が明けても彼女に対する想いが消えることはなかった。僕が彼女について知っているのはアバディーン大学に通うホームステイ生ということだけで、彼女に会えるとすればここアバディーン大学しかない。

彼女に会う以外にも一つ目的があった。カレッジTシャツを買うのだ。日本に帰ったあとアバディーン大学のTシャツを着てイギリス人からなんでアバディーン?と思われたかった。アバディーンは日本で言うところの何県にあたるだろう?宮城とか青森とか、そんな感じだろうか。

テーブルが等間隔で置かれたラーニングコモンズの入り口付近に大学の商品を売っている店があった。中は狭かったが店の奥半分はアバディーン大学のロゴが入った多種多様な服が置かれていた。アバディーン大学と胸に書かれた緑色の長袖tシャツと裏起毛の紺色のパーカーを買った。パーカーの裏には2015年の卒業生が記載されていた。売店の外には特売品がハンガーにかけて売られていた。XLの白い半袖のTシャツを数百円で買った。店員は僕を新入生と思っただろう。

食堂は日本のフードコートそのものだった。クリスプやアジア、イタリア料理など豊富なメニューが、そもそもキッチンから分かれていた。それぞれのレジが独立しているのでイオンモールやエキスポシティにあるフードコートに見えるのだ。僕はそこで何も買わずに前もって買っていた不味いサンドウィッチを数ある空席の中から一番入り口に近い端に座って食べた。

ベルギーの彼女を探すことも途中からしなくなった。それにもし彼女の姿を見つけたとして何て言えば良いのだ?彼女からしたら僕は薄汚い日本人のストーカーに過ぎないのではないか?

アバディーン生活も3週目に入り、来週の金曜日には授業を終える。僕はこのころからだんだんとデンマークへ旅立つ日を指折り数えるようになった。毎日の授業にも飽きを感じるようになり、またバックパックを背負って知らない土地を駆け巡るあの日々を体が求めているのだ。