見出し画像

究極の食事を求めて

青年が目指す「世界最高の作家になるための方法」は、基本的にはこのようなものでした。

無駄な時間を徹底的に削って、創作に没頭する。無駄な労働・家事などの単純作業を極限まで削り、余った時間を全て創作にあてる。世界中の情報を片っ端から吸収して回り、静かに思索にふけり、思いついたアイデアを原稿用紙やノートやパソコンの画面に書き連ねていく。人間関係を極端に減らし、労働はお金のためではなく経験のために行う。

ところが、この方法は破綻をきたします。なぜなら、「人としての心」が残っていたからです。

人と触れなさ過ぎたり、あまりにも長いこと働かなさ過ぎたので「ほんとにこのやり方で正しいのだろうか?」と不安になってきてしまったのです。まだ若かったんですね~

それに最初の願いは3つありました。「史上最高の作家となって、今後数百年に渡って読み継がれる作品を生み出すこと」の他に「伝説の悪魔となって世界を滅ぼすこと」「理想の女性に出会い、この人生を救ってもらう」もあったんです。

3つの願いは明らかに矛盾していました。いかな最短のルートでゲームをクリアする「マスター・オブ・ザ・ゲーム」の能力でも、クリア条件が矛盾していては役に立ちません。

むしろ、最短でクリアしようとすればするほど、余計に頭の中のコンピューターは混乱し、ムチャクチャな指令を出すようになっていきます。

この問題を解決するためには、もうしばらくの時を要することとなります。その前に、今回は食事の話をしましょう。


青年が「極限まで家事を減らすために料理をしない!」と決めたコト自体は正解でした。ところが、この方法では最初はうまくいきませんでした。

なぜなら「好きな時に好きなモノを食べてしまった」からです。「料理をしない」は正解だったんです。でも、「好きなモノを食べる」は不正解。

たとえば、毎日お菓子だけで生きたり、ひたすらカップ麺ばかり食べてみたり、吉野家の牛丼ばかり食べに行ったり、マクドナルドのチーズバーガーを主食に暮らしていた時期もあります。でも、どれも失敗でした!

当たり前の話なんですけど、これでは体に不調をきたしてしまいます。お肉や炭水化物(お米やパン)ばかり摂取していても、人間の体ってうまく機能しないようにできているんです!

大きな病気こそしなかったものの、常に頭がフラフラしてまともに物を考えることさえできませんでした。精神的にも不安定になり、結果的には料理していた頃よりも効率が下がってしまったくらい。

そこで青年は学びます。「そうか。人はお肉やお米やパンだけでは生きていけないんだ。魚や野菜も食べないと」

小学生や幼稚園児でも知っているようなコトを、実体験を通じてようやく身につけていきました。つまり、自らの体を使って、人体実験をやってしまったのです!


特に野菜は大切でした。青年の体は常に野菜不足で、食べても食べても体が野菜を欲します。しかも、野菜って値段が高いのです。

牛丼やハンバーガーのようなモノは、安くて手軽に食べることができます。どこにでも売っています。ところは野菜はそうはいきません。自ら料理せずに野菜を大量に摂取できるお店は限られていました。

「究極の食事が欲しい!手間がかからず、気軽に安く食べられて、しかも栄養があって体によい料理が!」

「世界最高の作家」になるために、この頃から青年は「究極の食事」を求めるようになっていきます。

そこで、青年は効率よく(しかも安く)野菜を食べることのできるお店を開拓していくことにしました。

その内の1軒は「食べ放題のお店」でした。新宿まで出ると、ランチタイムに700~800円くらいで、様々な料理を好きなだけ取ってきて食べることのできるサービスを受けられます。そこには野菜を使った料理も山と盛られていました!

オ~!パラダ~イス!


青年は、そのお店をメインにして、1日に1食だけガッツリ食べるようになっていきます。そのせいもあってか、体重もあまり増えませんでした。この頃は平均体重かそれ以下の状態がず~っと続きます。

散歩が好きで、暇さえあれば外を歩き回って考え事ばかりしていたので、基礎体力もそこら辺の人たちには負けません。確か、毎日10kmくらいは歩いていたはず。

その上、筋トレなんてものまでやり始めたので、いつも腹筋が割れていてムキムキでした。とは言っても、体重がないので「細マッチョ」ってヤツでしょうか?

こんな風に、全く料理をしなかったにもかかわらず、その割にはかなり健康的な生活を送っていたのです。

noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。