転職編②〜嫁に見放されたくない男の育休日記
10年近く勤めた会社を退職することにした。
「退職」するのは初めての経験である。
しかも、妻と子どもと色んなローンを抱えながらの退職である。
にも関わらず、あまり悩みはしなかった。
私の脳内では
「退職するとき、それは今」
と甲斐よしひろが高らかに歌い、
「いつ退職するの?今でしょ」
と林修が縦横無尽に両手を広げていた。
何が言いたいのかと言えば、それぐらい迷いがなかったということである。
「今のまま、この会社にいてはいけない」ということだけは分かった。
育休まで取らせてもらった会社ではあるのだが、その当時とは経営者や上層部、直属の上司の顔ぶれも変わってしまっていたのである。
組織とは、ずっと同じままであるものではないのだ。
「組織」という確固たる枠があって、そこに人がはまっていくのではなく、まず「人ありき」で、働く人が集まることで結果的に「組織」という枠が出来上がるのだと思う。
などと偉そうに書いたが、とにかく人も変わり、年齢や信頼できる人のアドバイス、その他色んなタイミングが重なって、転職を決断した。
夜に転職の面接を受けるため、普段は着ていないスーツを着て出勤したり、靴やカバンを転職活動用に新調したり、そんな雰囲気や態度で「コイツ辞める気だな」と思われていたらしい。
10年近く勤めた会社だったので愛着はあったが、「新しい挑戦をしたい」という理由で退職を申し出た。
このときは、寂しさよりも清々しさでいっぱいだった。
ただし、転職先が本当に自分に合っているのか。
それは入ってから実際に働いてみないとわからない。
極めて見通しの甘いダンナが間抜け面で甲斐バンドを歌っていたとき、
妻の脳内では、やしきたかじんが「なめとんか」と鬼の形相で唸っていたことを、
彼はまだ知る由もない(例えが古くてすみません)。
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