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あなたに必要なのは「専門知識」じゃない。

Lv.1の魔法使いが仮にメラゾーマを使えても、ボスとの戦いに勝つことはできません。基本的な能力が致命的に不足してるからです。

Lv.1の戦士が使う伝説の剣よりも、Lv.99の戦士が使うひのきの棒の方が、圧倒的に強いです。基本的な能力に天と地ほどの差があるからです。

でも

世の中には、自分のレベルや段階を無視して極大魔法や伝説の武器を求めてる人がたくさんいる。残念な話だけど。

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昨日僕は、「矛盾する2つの基準」という話を書きました。

新人は「言われたことだけやれ」と言われるのに、一人前になると「言われたことしかできねぇのか」と言われてしまうって話。

全文読めるようにしたので気になる人はこちら↓もどうぞ。

これ、学校の先生にもあてはまる。

一層:楽しんでるエース。優れた実践の発信者たち。
二層:やりがい感じながら前向きに働いてる先生。
三層:学級崩壊気味でしんどい先生たち。

(先生のしんどさの理由には職員室の事情もあるけれど、一旦それは置いときます。今回は子どもとの向き合い方、指導の話。)

優れた先生たちはTwitterにも沢山いる。

けテぶれのあの人や、デジタルツールに強いあの人、体育指導に秀でたあの人に、子ども同士の学び合いを促進するあの人…

そういう一層:エース格が目立つ一方で、子どもたちに振り回されすぎて教室にいるのがしんどい先生たちもいる。

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学校でも少年院でも、事実としてよく起こる新年度の変化がある。

担任が変わったら子どもたちが落ち着いた。

というやつだ。もちろん多少の時間はかかるが、毎年のようによく起こる。反対に荒れることも。

それはつまり、子ども自身ではなく担任の先生の力量によって変わってるってことだ。

僕自身、法務教官時代には反則行為が蔓延して荒れてる寮に回されることが多かった。大半は半年すると空気が変わり、一年するといい意味で目立つ寮になってくる。

そのメカニズムや僕自身の動き方は今日は省略するけれど…要するにそうやって先生自身の力量や動き方によって集団の雰囲気も、そこにいる子どもの成長率も変わってくるんだよってこと。

んで

子どもを伸ばせない先生ほど、学級をきちんとマネジメントできずに苦しんでるって話。

そして今日言いたいのは…

「三層から二層に上がるのに必要なのは専門知識じゃないよ」って話だ。

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境界A…つまり、なんとかやれてる一人前の先生と一層:エース格の間を隔てているのは、専門知識・スキル。

エースたちは突出した知識やスキル・メソッドを持っていて、それを安定した学級経営の上にドンと載せる。結果、子どもたちはガンガン伸びて、先生の負担も減っている。

その一方で

境界B…つまり、三層(学級の子どもと向き合うのに四苦八苦してる先生、もうすでに学級崩壊させてしまっている先生)と、二層(それなりにやれてる先生)の間を隔てているのは…

落ち着き
視野の広さ
聞きやすい声
中身のある会話

などの能力だ。

別に教職課程云々ではない。大抵の場合、エース格が部活やバイトなどを通して磨いてきた能力だ。ドラクエで言うところの「ステータス」の方で、戦士だろうが魔法使いだろうが、高めて損はないもの。

要するに三層の人は「専門知識はまだ早い。まずレベル上げようね!」って段階だってこと。

発達障害がどうだとか
愛着障害がどうだとか
教授法だの学習理論だの…

そんなものどうでもいいから、まずきちんと子ども見て、子どもの声を聴いて、集団の雰囲気を見て、その中にいる人間として意図のある行動をとろう…ということ。

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泳げない人の中には、水に入るだけでパニックになる人がいる。

そういう人に必要なのは、まず水の中でリラックスして立つことだ。まず体が水につかってる状態を落ち着いて受け止める。それから息を止めたり、ゆるやかに鼻から吐く練習をして、顔をつける。

そういうことを落ち着いてできるようになってはじめて、けのびの練習ができるし、リラックスしてけのびが出来るようになってようやく、クロールや平泳ぎに入っていける。

昨今は専門知識がスマホで学べるようになったせいか、なんでもかんでも専門知識のせいにしてるような気がする。

学級崩壊すると中にいる愛着障害の子を例にあげて、「愛着障害の子に対する対応術」とか言い始める。

必要なのは専門知識じゃねぇんすよ。

パニクってる人にいきなり「はい、じゃ正しいバタ足を練習しましょう!」なんてやってもまったく意味ないでしょ。

一部のエースたちの理屈に引っ張られすぎ。彼らはLv.99の人達。布の服とひのきの棒で戦っても大抵のモンスターには勝てるし、黙っててもすぐには死なない。

だから落ち着いて戦い方を工夫するゆとりがあるし、意図的に打ち手を変えていける。

それができない人間が使える魔法だけ増やしたって話にならんのです。まずは落ち着くことから。

大丈夫、泳げなくたって足はついてる。まず学級という波のプールで、無駄に流されずに歩くことからはじめましょう。

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放デイのスタッフをしながら、わが子の非行に悩む保護者からの相談に応じたり、教員等への研修などを行っています。記事をご覧いただき、誠にありがとうございます。