見出し画像

レニーのこと

レニーは傷の痛みを知らない
忘れるたびに凍てつく肌たちが
絶叫しながら安心するからだ
正方形に切り取られた防護服の中に空と
ヨットと気球の断片を飛ばして浮かべて
知らない間にすぎていく時間だけを愛した
自我を硬直させるのは睡眠で
食欲も性欲もその付属物でしかない
上辺だけの会話の中で見つけた一雫が
いつか大切な樹を愛でると信じて
寂れた街を捨てることも良きかなと
少しだけ泣いたこともあった

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?