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音読女子【月並な話】

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-お耳を1分、貸してください- guidance llcとのコラボ企画。 物語を【声】でもお楽しみください。 『聴きたい』はこちらで!
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#コラボ

🌜【音読】斎藤さんの話。

読み手 エモジ エマ

"斎藤さん"は私がまだ幼稚園児だった頃から逆さまだった。

近所の桜並木にぶら下がっていて、私が通る度、斎藤さんは必ず手を振ってきた。
お母さんに聞くと「見ちゃいけません」と言った。それでも斎藤さんは私へ手を振る。大学生になった今でも。逆さまで。笑顔で。次は話しかけてみようかな。

🌜【音読】わすれな草

読み手 キノリユノ

私がお婆ちゃんになって。
貴方を忘れてしまうようだったら。いっそのことレンジでチンしてください。
貴方がお爺ちゃんになって。私を忘れてしまっても。
毎日貴方が好きなハーブティーをあたしは淹れ続けるから、大丈夫。
花満開のあの庭で。林檎みたいな甘い香りの、あのハーブティーを。

🌜【音読】父の行方

読み手 小福(シャオフー)

ハゲたモグラを探しています!・・・じゃなかった、ハゲたモグラみたいな父を探しています。

突然いなくなってしまいました。父が好きなワンタン麺屋さんにも来ていないようです。
何方かご存知ないでしょうか。見た目?どう言えばいいでしょう。

親指?いや、やっぱりハゲたモグラなんです。

🌜【音読】前髪を切りすぎた日。

読み手 石村 碧

前髪を切りすぎた日。ただ煙草から伸びる煙を見てるのが好きだった。
ふぅ、と深く息を吐く。ヤニで黄ばんだ壁が私を見ていた。
昼と夜の間。外で遊ぶ子供達の声がうるさい。気持ちが整理できない。
きっと前髪を切りすぎたからだと思う。
前髪を切りすぎた日。貴方はこの部屋から出て行った。