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バトルショートショート

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ショートショートで戦闘描写を書くための場所。
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バトルショートショート      ――『苦痛の歓声』VS『蒼海の果実』――3

バトルショートショート      ――『苦痛の歓声』VS『蒼海の果実』――3

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(……ああ、綺麗だ……)

全身が脱力したルクスの脳内では、鮮やかに焼き付いた最後の光景だけが繰り返し走馬灯のようにフラッシュバックしていた。

半透明に輝く水晶の花々に囲まれた、華やかな少女。

(死にかけの俺とは正反対に……)

ゆるりとなだらかで流麗な動作に、白く透き通るような肢体が。

(傷一つなく、瑞々しい姿が)

その容姿が、例えようもない程に。美しかった。

身体の力

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バトルショートショート      ――『苦痛の歓声』VS『蒼海の果実』――2

バトルショートショート      ――『苦痛の歓声』VS『蒼海の果実』――2

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「オラァ!」

「ぐっ!? しまっ───」

頭蓋を陥没させる裏拳がレノムに突き刺さり、彼女は脳漿を散らしながら勢いよくカッ飛ばされてる。

「ハハァ、脳への一撃はキツイよなあ。傷は回復しても、衝撃はなかなか抜け無えからなァ!」

痙攣しながら手を地面について立ち上がったレノムは、数歩歩いてすぐさま崩れ落ちる。
無防備なのは、明らかだ。
ルクスの口角が吊り上がった。

止めを刺すべ

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バトルショートショート      ――『苦痛の歓声』VS『蒼海の果実』――

バトルショートショート      ――『苦痛の歓声』VS『蒼海の果実』――

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下は地平線まで広がる白いタイル張りの床。
上は異様なまでに高く広い、同様に白色の天井。

おおよそ10mの距離にて対峙するのは白い貫頭衣を着た2人の少女。

片方の名前は「ルクス」、片方の名前は「レノム」という。

ルクスとレノム。
両者がこの空間に召喚され、互いが互いの存在を認識した瞬間、2つの思考が同時的に成された。それすなわち。

───似ている。

そしてもう一つ。

──

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バトルショートショート      ――『指弾』VS『ノスタルジア』―― 2

バトルショートショート      ――『指弾』VS『ノスタルジア』―― 2

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いつからだっただろう、死合いに臆せず臨めるようになったのは。

己の能力である『指弾』を意のままに操れるようになったのは。

最初の頃は只々痛みが不快だった。
相手を痛める感触も気持ち悪かった。
しかしそれでは生き残れないのだ。不快な想いを抱き続けていては、僕は人生を活きて行けない。

ならば、楽しむしかないと悟った。
別にそれも悪いことではないのだろう。

肉を弾き、骨を砕く愉悦

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バトルショートショート      ――『指弾』VS『ノスタルジア』――

バトルショートショート      ――『指弾』VS『ノスタルジア』――

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下は地平線まで広がる白いタイル張りの床。
上は異様なまでに高く広い、同様に白色の天井。

おおよそ10mの距離にて対峙するのは白い貫頭衣を着た2人の少女。

片方の名前は「カイナ」、片方の名前は「キュラ」という。
カイナは無手、対するキュラは両手にナイフを握っていた。

2人の容姿は持ち物以外、まさに瓜二つ。
そして仕合開始と同時に互いが取った行動の『自由さ』とでも言えるものも、い

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バトルショートショート      ――『急襲主義』VS『アトラスガール』―― 2

バトルショートショート      ――『急襲主義』VS『アトラスガール』―― 2

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「ふぅーー……」

拭い切れぬ違和感。

(……傷、軽すぎない? 気のせい…………いや……)

攻撃が効いていないわけではない……血を流しているのがその証左。
しかし、どうも決め手に欠ける損傷具合だった。もしや、礫を投げるだけでは決定的なダメージを与えられない?
否、そんなはずはない。
真正面から受ければ人体を貫く程度の威力はある。
急所に当たれば即死もあり得るだろう。周りの床の破

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バトルショートショート      ――『急襲主義』VS『アトラスガール』――

バトルショートショート      ――『急襲主義』VS『アトラスガール』――

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下は地平線まで広がる白いタイル張りの床。
上は異様なまでに高く広い、同様に白色の天井。

おおよそ10mの距離にて対峙するのは白い貫頭衣を着た2人の少女。

片方の名前は「レツ」、片方の名前は「ハン」という。
レツは手に木刀を、対するハンは岩を所持している。

2人の容姿は持ち物以外、まさに瓜二つ。
レツは手にした木刀を静かに構える。
ハンは……頭上に掲げていた身の丈すら越える巨大

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バトルショートショート      ――『正常化の偏見』VS『バックスタブ』――

バトルショートショート      ――『正常化の偏見』VS『バックスタブ』――

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下は地平線まで広がる白いタイル張りの床。
上は異様なまでに高く広い、同様に白色の天井。

おおよそ10mの距離にて対峙するのは白い貫頭衣を着た2人の少女。

片方の名前は「ミイ」、片方の名前は「ヤエ」という。
ミイは手に小ぶりのナイフを、対するヤエは1本のクナイを持っていた。

2人の容姿は持ち物以外、まさに瓜二つ。
加えて両者、今までの戦闘で一度も苦戦をしていない点も、また同様で

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バトルショートショート      ――『Jane The Ripper』VS『鴉の主』――

バトルショートショート      ――『Jane The Ripper』VS『鴉の主』――

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下は地平線まで広がる白いタイル張りの床。
上は異様なまでに高く広い、同様に白色の天井。

おおよそ10mの距離にて対峙するのは白い貫頭衣を着た2人の少女。

片方の名前は「ニク」、片方の名前は「クロ」という。
ニクは手にチョッパーナイフ(いわゆる肉切包丁)を持ち、クロは全身を黒いカラスで覆っていた。

クロの貫頭衣に引っ付く大量のカラスのせいで、2人の容姿を外部から比較することはで

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バトルショートショート      ――『百足憑き』VS『望みの血』――

バトルショートショート      ――『百足憑き』VS『望みの血』――

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下は地平線まで広がる白いタイル張りの床。
上は異様なまでに高く広い、同様に白色の天井。

10数mの距離にて対峙するのは白い貫頭衣を着た2人の少女。
片方は短髪、片方は長髪の、未だ名無しの2人だ。
短髪の少女は手に大ぶりのナイフを、長髪の少女は手に小さな本を持っていた。

2人の容姿は髪の長さと持ち物以外、瓜二つであった。

「先に言っておくけど」

長髪の少女が口を開き、

「余裕な

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バトルショートショート      ――悪い冗談――

弑《シイ》が泥《ディ》に砕かれた回数が10回を超えた頃。

栄《エイ》が横から泥に襲い掛かった。
二人は弑を置いたまま攻防を開始。立ち代わりに備《ビー》が弑の前に立ちふさがり、なにかを言ってきた。言葉には応じず襲い掛かる弑。

そして再び延々と続く戦闘が始まった。

「左もも」

弑にとってそれは今までとないも変わらないことだ。相手こそ栄、泥、備と変わっているが、自分も相手も成すことは変わらない。

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バトルショートショート     ――AB雑談――

「――と、まあそんな所」

「……なるほどね。弑《シイ》君はなかなかに大変だ」

備《ビー》が栄《エイ》から聞いた教育方針に少しばかりドン引きしていた頃。
踊るような武闘を繰り広げる両者の視界の端で、件の弑君が泥《ディ》によって顔と鳩尾に連撃を喰らい、吹っ飛んでいた。

栄がその光景に目を細める。

「……強いわね。彼女は、もう?」

備の拳を高速で捌きながら栄が問いかける。
栄の蹴りに飛び退いて

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バトルショートショート   ――『C』VS『D』――

「はじめまして、私の名前は泥《ディー》。備《ビー》の生徒です。あなたの名前も聞かせて欲しいな」

そう言って差し出された手を見た弑《シイ》は一瞬硬直。
彼の脳内に疑問が渦巻く。相手の行動が不可解すぎた。

姿勢正しく立つその姿は隙だらけだ。
己より早く体勢を立て直せていたにも関わらず追撃をしてこない、どころか、攻撃する素振りすらない。こちらに手を伸ばしているが拳が握られていない、では手刀を作ってい

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バトルショートショート   ――『D』――

バトルショートショート   ――『D』――

久しぶりに会った栄《エイ》と備《ビー》は、向かい合ったまま互いの近況報告を始めた。
その間身体が暇を持て余していたため――否、特に理由などなく、両者はどちらともなく戦闘を開始。近距離で軽く、しかし一手間違えれば致命となる攻撃を互いの急所目掛けて繰りつつ会話を始めていた。

初めは緩やかに軽く、次第に鋭く、激しく。
腕や足が交差する度に空間に金属バット同士をかち合わせたような硬質音が響き、その音も段

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