【本棚から冒険を】どうぶつ会議(児童書?)

 「どうぶつかいぎ展」
 このチラシを見たとき、懐かしさで胸がいっぱいになりました。

●どうぶつかいぎ展のチラシ●
●ネット版 会場の地図がありません●

 『どうぶつ会議』。作者は、ドイツの作家エーリヒ・ケストナー。 小さい頃に読んだ記憶はあるものの、その内容はおぼろげです。そこで、これを機会に改めて購入しました。

●どうぶつ会議●

”大ニュース
ロンドン会議おわるーー
会議はしっぱいーー
やりなおしと決定ーー
場所はまだきまらないーー”

『どうぶつ会議』ケストナー(岩波書店)

 物語は、人間(大人)たちの不甲斐なさ、自分勝手さに動物が呆れはてたところから始まります。

”「魚みたいに水にもぐることもできるし、ぼくたちみたいに走ることもできる。カモみたいに水の上をすべっていくこともできるし、ワシのように空をとぶこともできる。それくらい、りこうなのに、いったい、人間はなにをしでかしたというんだ!」”

『どうぶつ会議』ケストナー(岩波書店)

 キリンの言葉から分かるように、動物たちにとって人間は憧れの対象です。しかし、ゾウのオスカーはこんな返事をします。

”戦争さ!(中略)かわいい子どもたちが、いつも、戦争や、革命や、ストライキに、まきこまれなきゃならないなんて!それなのに、おとなは、まだ、こんなことをいっているんだ。子どものために、世の中がよくなるように、あらゆることをしているなんてーー。ずうずうしいはなしだ!”

『どうぶつ会議』ケストナー(岩波書店)

 そうです。この物語は、戦争を繰り返す人間に対する怒りと、子どもたちの未来が平和であることを願うケストナーの思いが込められているのです。
 戦争やめよう、世界平和をーー言葉を発するだけなら簡単ですが、実際の人間たちは冒頭の通り、会議を繰り返すばかりで何も進展させません。

 そこでゾウのオスカーは考えました。「動物たちで会議を開こう」と。
 合言葉は「子どものために!」。
 動物会議のために、世界中からあらゆる動物が集まってきます。北極から白クマのパウルが、中国からハツカネズミのマックスが、北アメリカからウシのラインホルト…。もちろん、絵本の中の動物も絵本から抜け出して参加します。
 動物たちは会議を経て、人間にこんな要求をしました。

”われわれがあつまったのは、人間の子どもたちのためであります。なぜか?それは、人間が、いちばんだいじなつとめを、おろそかにしているからであります。われわれは、戦争や、貧困や、革命が、二どとおこらないことを、要求します。(中略)皆さんにおねがいしたいことは、平和のための、もっとも大きな障碍をとびこえることであります。その障碍というのは、つまり、国と国とのさかいであります。このかきねは、とりのぞかなければなりません。

『どうぶつ会議』ケストナー(岩波書店)

 しかし人間たちはこれに抗議します。困った動物たち。そこへ、ある一匹の動物が提案をします。

●キャラクターも参加しています●

 その動物はミッキーマウス!実は、チラシの挿絵にもミッキーマウスやゾウのババールなどが隠れています。
 動物たちは、人間たちの会議で意見がまとまらないこと、戦争がなくならないことの原因が書類と制服にあると考えます。しかし、ミッキーの「書類を全て引き裂いてしまう作戦」、カンガルーのグスタフ考案の「制服を取り払う作戦」は、悲しいことに失敗に終わります。

”全滅した書類のうつしは、到着しました。これからは、軍隊が書類のばんにあたり、必要とあれば、武力をもちいるはずです。”
”あすまでには、世界中の兵隊が、ぜんぶ、あたらしい軍服をつけるだろう。さらに申し上げておきたいことは、ガもバッタもワニも、大砲に穴をあけることはできないと、いうことである。"

『どうぶつ会議』ケストナー(岩波書店)

 困った動物たちは、最終的に子どもたちの力を借りることにします。効果は絶大!子どもたちと離れ離れになった大人たちはすぐに動物たちの要求を受け入れました。これにて動物たちの最初で最後の会議は終わります。

”1すべての国境をなくす。
 2軍隊と大砲や戦車をなくし、戦争はもうしない。
 3けいさつは、弓と矢をそなえてよい。けいさつのつとめは、学問が平和のためにやくだっているかどうかをみることにある。
 4政府の役人と書類のかずは、できるだけすくなくする。
 5子どもをいい人間にそだてることは、いちばんだいじな、むずかしい仕事であるから、これからさき、教育者が、いちばんたかい給料をとるようにする”

『どうぶつ会議』ケストナー(岩波書店)

 ケストナーの思いが世界中に届くこと、平和な世界になることを願っています。さて、この図書は誰に向けたものなのでしょうか。
 わずか76ページの、挿絵がたくさん載っている「岩波のこどもの本」ですが、私は大人たち、そして未来の大人たち…つまり全ての人たちに向けた本なのだと感じています。

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