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【読書】「あさいち」(絵本)

 今年のはじめの日、能登で大きな地震がありました。9か月経った今でも復興が進んでいないという話は聞いていましたが、昨日から大雨が降り続き、今度は床上浸水の被害が出ているそうです。
 一日も早い復興と、能登に住む方々が落ち着いて過ごす日々が戻ることを祈っています。

 さて、今年3月に福音館書店が復刊した『あさいち』を、遅ればせながら手に取りました。

 この作品は1980年に刊行されたもので、今回の輪島市の震災を受けて復刊したそうです。売り上げは震災の義援金として寄付をするのだそうで、こんな素敵な支援の仕方もあるんだ!と嬉しくなりました。
 被災地へ本を「送る」のはあまり喜ばれないそうです。しかし、私たちがその地に関する本を買って「読む」ことが協力になるのならば、迷わず購入します!

 手に取って驚いたのは、どのページも端から端まで色が刷られていて、本編には紙本来の「白」が全くなかったことです。薄暗い雰囲気が終始続いており、冬の寒さが伝わってきました。
 特にはじめのページは、まだ夜も明けぬうちから漁に出ている様子が描かれており、寒い日本海沿岸において、朝市を楽しみにしている人たちのために働く人々の姿が感じられました。

●方言で書かれている●

 インターネットで検索をかけると明るい朝市の写真がたくさん出てきます。一年を通して午前中に開催しているのだそうで、絵本のような薄暗い雰囲気だけではないことを知りました。ただし、魚がおいしいのは冬だと思うので、寒かろうが暗かろうが冬に行きたいところです。
 今年はじめの日の震災で、朝市は全焼したと聞きました。カムバックイベントをしたというニュース、7月から小規模で再開しているという話、朝市の通りは復興が全く進んでおらず焼け野原であるという写真…。様々な情報があって定かではありませんが、おそらくまだ復興はしていないけれど、別の場所で小規模再開をしているようです。復興したら絶対に行きたいです。

 絵本の話に戻りますが、絵のタッチが温かくて好きになりました。キャンバス地に色を付けたような、ところどころ布の格子文様が出ているところが素敵です。薄暗い雰囲気の中で、海の幸の赤い色や柿の色などがよく映えていました。
 また、お店を出しているおばあちゃん(だと私は思っていますが、もしかして若い?)たちの来ている”ちゃんちゃんこ”の模様もかわいらしくてお気に入りです。昔うちにもあったなあ、なんて思いながらページをめくりました。

●キャンバス地に書いたのかしら?●

 表紙はもちろん、物語の中に出てくる人たちはみんな頭に布を巻いています。それだけ寒いということなのでしょう。目・口・鼻がかろうじて出ている状態なのに、一人一人の表情が全然違っていて、これが本物の朝市の風景なのだろうと感じました。
 そして、作中に出てくる方言の「こうてくだー。」が心地良くて、皆さんもちろん商売のためにお店を出しているのですが、コミュニケーションの場としても大切にされているのが分かりました。今でも活気あふれる場所であるのは、それだけ魅力ある人々・品物が揃うからなのですね。

 気になったのは、作品に登場する人々のほとんどが高齢者であることです。1980年当時でさえ高齢者が多かったのであれば、現在はさらに進んでいるのではないでしょうか。それともSNSの発達している現代において、若い人たちの移住が推進されているのでしょうか。
 そう思って輪島市に関する(多くが震災の)ニュースを検索したところ、インタビューに答えているのはほとんどが高齢の方でした。

 輪島市を含む能登地域が一日も早く復興できますように。そして、「朝市」という文化を保存・存続できますように。
 復興したら行きたい場所 -- 熊本城、輪島朝市、首里城 -- 改めて、日本は災害の多い国であることを感じました。

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