手のひらマネーボール時代
みなさん、こんにちは。
今回は10月の科学系ポッドキャストの日に合わせまして、企画連動回となっています。
科学系ポッドキャストの日について、ご紹介しますと、
・毎月、科学系ポッドキャスターの方々が、共通テーマについて、それぞれのポッドキャスト番組の視点で解釈し、配信するイベントとなっております。
今回の共通テーマですが、ずばりスポーツです。
Podcast番組「拝啓、3000年の人類へ」、では、スポーツとデータサイエンスから、手のひらマネーボール時代、と題しまして、お話をしました。
この記事では、配信回の引用元の紹介や、補足をお話しします。
球団がデータサイエンティストを募集?
今回のお話しのきっかけなんですが、先日たまたまネットで見かけたページでして、日本のプロ野球球団が、データサイエンティストを募集しているページを公開していたことです。
球団がデータサイエンティストを募集してるって面白そうじゃないですか。
どんな募集要項なのか気になったので、ページを覗いてみることにしました。
そもそもデータサイエンスって何?
データサイエンス、という言葉を最近耳にするようになった方も多いかもしれません。
これは何なのかと言いますと、数学や統計といった科学的知識と、プログラミングなどのITエンジニアリングスキルを組み合わせてデータの解析などを行う学問です。
最近だと、AI・人工知能なども該当する分野になります。
募集要項を見てみよう!
そんなデータサイエンスを、球団がやる、というのは、いったいどんなことをやるのでしょうか?
ざっくりと、募集要項ページを要約すると、
データを活用した試合戦術の提案に、選手の状態管理
スカウティングのレポート分析や支援
戦力予想モデルの構築
選手のスキル評価の指標策定
などが書かれています。
これらをこれまでの成果や、取得してきたデータに基づき、予測、活用しよう、ということになります。
これまで監督やコーチの経験や知識、勘といった、見えない成長戦略になっていたものを、きちんとデータをとって、それに基づいてやりましょう、そして、科学的な知見に基づく、効果的な野球をやって、強くて人気のある、素敵な球団にしていきましょう、というのが野球におけるデータサイエンスなんじゃないかなと思います。
10年ほど前になりますが、今回のタイトルにもある、マネーボールという野球映画が公開されていて、大ヒットしたりもしました。
なぜデータサイエンスが盛んになってきた?
なぜ、最近データサイエンスが盛んになってきたかというと、いくつか理由が挙げられます。
一つは、センシング技術の向上ですね。
分析するには、そもそも正確なデータが取れる必要があるのですが、2000年代になって、より正確な数値を計測できる機器や技術が増えましたよね。
わかりやすい例だと、サッカーのVAR(ビデオアシスタントレフリー)などでしょうか。ミリ単位のボール位置のセンシングが可能になり、ワールドカップの日本対スペイン戦でも、1ミリが奇跡が起こりました。
二つ目は、データが蓄積されることや、データ活用が効果を生み始めたことですね。
データ活用の重要性や整備が進んだ、ということも要因の一つだと思います。
これは、将棋やチェスなどがわかりやすいですね。棋譜のデータがデータベースとして整備、蓄積されたことも、将棋やチェスのAIの性能向上の一員です。
三つ目は、データ分析技術の向上です。
みなさんも実感しているところですが、2010年代以降、急速にデータ分析技術やAIによる技術革新が進んでいます。分類や判定の精度がぐっとあがったこともあり、実際に現場投入されるようになってきています。
このほかにも、理由を挙げられると思いますが、こうみると、球団がデータサイエンティストを募集するわけが、何となくわかってきたかと思います。
では、募集要項に書かれているものは、より詳細には、どのようなことをするのでしょうか?
具体的に思いつくものとしては、
ピッチャーやバッターのフォームの解析
ピッチャーごとの、最適な投球数の推定と、それに基づくピッチャーローテーションの決定
選手交代タイミングの決定
選手ごとの強化練習メニューと休息日の最適化
来場者数の要因分析
他の球団選手との試合趣味レーション
シーズン中の球団成績に基づく、最終順位の予測
などが挙げられるかと思います。
これらを、球団内のデータを用いて進めていく、という営みが、各球団で行われているものと思います。
おお、データサイエンスええやん。いいぞ、球団もっとやれ。
と思う方も多いかなと思いますが、野球のデータサイエンスができるのは、プロ野球球団だけだと思っていませんか?
実はそうでもないんです。
野球素人すら、野球分析できる時代が来ている
僕みたいな、野球をやったこともなければ、そんなに見に行ったこともない人間ですら、分析や戦略をデータから導き出すことが可能になりつつあります。
なぜなら、この野球データの一部は、公開されていたり、入手することができるからなんですね。
プロ野球やNBAのデータの一部が整理されていて、少しプログラミングができるか、なんならChatGPTとかにデータを投げるだけで、分析できちゃったりします。
公開されているデータで言うと、
メジャーリーグのデータは、pybaseball というプログラミングのライブラリを使えば、入手可能ですし、日本のプロ野球のデータも、25年以上の記録や成績データを日本野球機構が公開していて、こちらは月額料金がかかりますが、利用することができます。
また、プロ野球データを用いたコンペティションなども開催されるようになっています。
以下は、ほんの一例です。
この、データセットが公開されたことで、誰でも手のひらでマネーボールができるようになった、と思うと、監督との距離がグッと近づいたようにも思えてきます。
もちろん、野球のルールを知る、という手順は踏む必要があるとは思いますが。
データの恩恵を一番受けるのは…?
もちろん、さまざまなデータ分析によって、プロ野球をより深く、面白く理解する用途に使えるかもしれませんが、これらのデータ公開の恩恵を一番受けるのは、中学や高校野球かもしれません。
手のひらでデータ分析ができるようになると、強豪校でない学校でも、強豪校と同じかそれ以上の、育成や戦略知識を得られるようになるかもしれない、ということになります。
小さな野球チームだからこそ、おそらく効果は絶大で、
換えが効かないからこそ、故障を減らしたり、重点を絞った練習メニューや試合対策に活かせる可能性があるかなと思います。
こんな形で、野球のデータサイエンスがぐっと近づいてきたことはわかっていただけたかと思います。
未来では、どんなデータの項目が計測されている?
せっかくなので、実際のデータを見つつ、この番組の特徴でもある、データの先に見える、未来を妄想してみたいと思います。
さきほど紹介したpybaseball の項目を見てみると、ピッチャーの項目だけでも、さまざまな項目が整理されていることがわかります。
以下は、ほんの一例です。
試合の日付
リリースした速度
ボールの位置
バッター名やピッチャー名
試合のシーズンやゲーム内容
ホームやアウェイがどちらか
投球結果の判定や、その投球段階のボールやストライクの数
足の動き
ストライクゾーン
その時の野手のプレイヤー名
試合のスコア
めちゃくちゃ細かく取られていました。
では、これから先も、野球のルールや携わる人間たちが変わっていくことで、どのような項目が追加されるでしょうか?
まず、思い当たるのは一つ前の投球からの時間間隔でしょうか?
最近だと思いますが、投球間隔のルール(ピッチクロック)が導入されましたよね。
それにまつわる数値は入ってくると思います。
その他だと、新しい試合形式の導入でしょうか?
人間の身体の向上や、ロボット、義手義足などの進化が進むと、
超人野球、なんていうのも出てくるかもしれませんね。
それに伴って、超人野球のルールで使用可能なバットや、人間対、人間が操るロボット球団との試合、何て言うのも、データとして記録されていくかもしれません。
実は、この回を下調べする中で、めちゃくちゃかっこいい選手を見つけて、ジム・アボットと言う選手なんですけど、彼は先天性右手欠損というハンディキャップをものともせず、メジャーリーガーになった選手です。
この方の他にも、メジャーで活躍された方がいらっしゃるようです。
以下のリンク先に実際の動画があるのですが、かっこいいです。
5体満足の選手だけが野球の参加権を得るのではなく、テクノロジーによって、野球をしたいすべての選手が、試合を楽しませる世界もやってくるのかもしれません。
これから先、彼が成し遂げたように、夢を掴む子どもたちが増えるといいなと思います。
データサイエンスの先の、"未来の野球"はどうなる?
そのような新たなデータ項目の追加が見込まれていく中で、データサイエンスの先にある、未来の野球は、どうなっているでしょうか?
現代人の予想は、ぜひ、番組をお聴きください!
まとめ
今回は、10月の科学系ポッドキャストの日ということで、手のひらマネーボール時代と題して、野球データの今と、未来を妄想してみました。
野球に限らず、最近ではデータに基づいたスポーツ分析が進んでいます。
ぜひ、お気に入りのスポーツでのデータ解析の進歩について、調べてみてください!
そして、そんなデータに基づく戦略を打ち立てながらも、ドラマチックな試合展開をみせてくれる、プロスポーツ・プロアスリートのみなさんに感謝しつつ、スタジアムに足を運んでいこうと思います。
楽しんでいただけましたら、スキや番組フォローいただけると嬉しいです。
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