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淡くにじむ水彩絵の具のような言葉に

4月1日
この日の私はいつもよりソワソワとしている

エイプリルフールだからとかいう公的なものではなくて、とても個人的な理由だけど今日来るっていうものだから朝からそれが待ち遠しかった。

いつ来てもいいように、お昼ごはんも夜ご飯も買い出しにも行かず家のもので済ましたしお風呂にも入らずに待っていた。

でも20時を過ぎたころに、どうやらおかしいと思い家を出た。

やっぱり。

すでにそれは到着していた。ポストの中で私の事をあきれ顔で見ているようだった。

私が心待ちにしていたもの。作家サン・テグジュペリのエッセイ【人間の土地】だ。

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サン・テグジュペリといえば、世界的に有名な作品がある。【星の王子さま】だ。

だけど、恥ずかしい話、私は25歳まで【星の王子さま】を知らなかった。いや、正確に言うと知ってはいた。幼稚園からの幼馴染が【星の王子さま】をとても好きで様々なグッズを持っていたからだ。

でも、私は興味関心が湧かなかった。

そんな私が【星の王子さま】にすっかり心を奪われてしまうきっかけになったのが、箱根にある「星の王子さまミュージアム」を訪れたことだ。

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なぜ【星の王子さま】を読んだこともない私が、「星の王子さまミュージアム」を訪ねたかと不思議に思うかもしれない。

だけど、「星の王子さまミュージアム」は【星の王子さま】の内容を1ミリも知らなくたって十分楽しめた。

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それどころか、すぐに【星の王子さま】の本を買って、挫折はしたもののフランス語を勉強するきっかけにもなり、5年越しに作者サン・テグジュペリの別の作品を読ませるだけの価値があった。

おおよそ日本とは思えないような、ヨーロッパを思わせる景色におとぎ話の中のような淡い世界。それだけでうっとりしてしまう。

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ミュージアムというだけあって、館内には【星の王子さま】のストーリーをたどった展示物があり、サン・テグジュペリの生涯も映像で見れた。

【星の王子さま】のファンであった若者の追撃でサン・テグジュペリの一生は幕を閉じた

きっとこの言葉で私は完全に彼の虜になっていたんだろう。現実は小説より奇なりなんてよく言うけど、こんなにも練られたようなストーリーで人生の幕を閉じる人がいるものかと衝撃を受けた。

だから彼の描いた世界がもっと知りたくて【星の王子さま】を何回も読み返したし、まるで運命見たいに私が【星の王子さま】を知ったその年に公開された【星の王子さま】のその後を描いた映画も見に行った。

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そして今、彼の15年間の飛行士人生を綴ったエッセイを手に取ったのだ。

彼の言葉は、水彩絵の具みたいに淡くてじわーっと広がる

でも、居心地がいいかと言われるとそういうわけではなくて、小さい何かがのどに刺さって少しの違和感を感じているような感じがする。

何かは確かにそこに刺さっているのに、なんだかわからないし、確実にどこに刺さっているかも不明だし、それが何なのかも検討がつかない。

放っておいても問題はないけど、やっぱり気になって何度も喉をさする。

彼の言葉はそんな風にいつまでだって頭の中をじわーっと浸食していく。

彼の世界は穏やそうな彩のくせにすごく過激なのだ。

私たちが到底、生きている中では経験できないような体験を当たり前のようにこなしてきた。

私が夢見る場所である飛行機は、彼にとって僚友を奪う死と隣り合わせの場所だった。

それが旅をしているように刺激的で心をとらえて離さないのだ。

だから、彼の事を知る前に彼の生家があるリヨンを訪れた事を今でも悔やんでいる。それと同時にまたリヨンに行こうとわくわくする気持ちもある。

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きっとこの本を読み終わったときに見るリヨンの景色はまた違った色合いを見せてくれるだろう。

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