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社食と、ジャガイモと。【食事❶】

北欧やデンマークについて日本人が興味があることは福祉やデザインだとばかり思っていましたが、友人へのアンケートでは「食べ物」がまさかの一番人気コンテンツでした。

わたしの友人たちよ…北ヨーロッパ・ゲルマン系の国に豊かな食文化を期待してはいけない…。

とはいえ日本から8,500kmも離れれば、それなりに語れるくらいの食文化の違いはあります。


社食で見るデンマーク

デンマークのリアルな食文化を紹介するにあたって、私が平日食べている会社のランチが一番参考になるかと思います。

アレルギーやビーガンに考慮して、基本的に自分で選べるビュッフェ形式です。

メインディッシュが肉or野菜で1つずつ、大きめの副菜が1つ、そしてサラダバーが毎日用意されています。今回は紹介しませんがデザートも毎日出てきます。

百聞は一見にしかず。これが1週間の献立です。

月曜日

ひき肉のベーコン巻き/ジャガイモ+ブラウンソース/茹でブロッコリー/アスパラ入りオムレツ

火曜日

仔牛(Veal)のグリル/ジャガイモ+ブラウンソース/フラムクーヘン(ドイツ風ピザ)/野菜のオーブン焼き

水曜日

フィッシュケーキ(鱈か何かのハンバーグ)/ジャガイモ+ディル/サラダバー盛り合わせ

木曜日

フリカデレ(ドイツ・デンマーク風ハンバーグ)/サモサ(インド風パイ)/ジャガイモのマヨネーズ和え/サラダバー盛り合わせ

金曜日

豚のスモーク/ジャガイモのグリル(塩強め…)/クスクスサラダ

以上、1週間の献立でした。なかなか悪くないですよね?

天引きで月8000円払えば食べられるので、なんと毎食デザート付きで実質400円くらいです。

日本の物価を基準にしても安いのに、田舎の寂れたレストランでもサンドイッチが2500円するデンマークでは非常に破格です。

観賞用植物が飢饉を救う?

さてお気づきの通り、ほぼ毎日ジャガイモが出てきます。しかも基本茹でて少しハーブをかけた程度のやつ。

オランダ・ドイツ・北欧などの北ヨーロッパあるあるですが、ジャガイモは日本における白米のような扱いです。

出典_https://www.foodydata.com/post/potato-vs-tomato-europe-map

でも何故こんなにも食生活の基盤になっているのか?

その歴史は意外にも浅く、そもそもジャガイモは北ヨーロッパの在来種ではないのです。

元々ペルーなどの南アメリカにあったじゃが芋を、大航海時代の1540年ごろに初めてスペインがヨーロッパに持ち帰りました。その後はフランスなどにも伝播したものの、長いあいだ貴族が花を楽しむ植物でしかなかったのだそうです。

しかしその200年後、1750年ごろに深刻な飢饉となったプロイセン(現ドイツ)の王様が苦肉の策で農民に栽培を強制します。

なぜかと言うと、ジャガイモは冷涼なアンデス山脈が原産のため、寒くて農業が難しい北ヨーロッパでも安定して収穫することができたのです。(日本でも北海道がジャガイモの名産地ですよね)

これを皮切りにヨーロッパのいくつもの飢饉を解決したジャガイモは、1800年代の産業革命でも多くの肉体労働者の腹を満たし、平民たちの食卓の主役になったのでした。

デンマークでも1760年ごろにデンマーク国王が農地開拓のためにドイツ人を招致し、それこそ私が今住んでいるユトランド地域に定住させました。その時の入植者たちをKartoffeltysker=Potato Germansと呼ぶのだそうです。

ちなみに日本の呼び方である「ジャガイモ」。これはインドネシアのジャカルタ(旧名ジャガタラ)経由で持ち込まれたため、ジャガタラの芋=ジャガイモとなったそうですよ。

ジャガイモ歴250年の実力

さて歴史のおさらいはここまでとして、現代のハナシ。

デンマークで見れるジャガイモにまつわる面白い光景をご紹介します。

まずスーパーに行くとこんなかんじに野菜が並んでいて、中央中段と下段、それと右上段が生のジャガイモです。意外にも全て包装されていますね。

露店で売ってる時は日本のように砂を被ったままなのですが、こうしてスーパーに並ぶ時にはしっかり洗浄されて1kg単位で包装されています。食べる頻度がお米くらい多いからこそ手間を省きたいのでしょうね。

値段でいうと一袋1kgで15DKK=300円です。日本では2023年6月時点で1kg416円なので、物価高のデンマークにおいてはやはり格安の食材です。

次に水に入ったコレ。この下の写真の売り方は日本では見ませんよね。昨年からずっと謎だったんですが、同僚のデンマーク人が教えてくれました。

どうやらこれはいわゆる「新ジャガ」だそうです。

砂にまみれたまま保管してある通常のジャガイモと違って、採れたてを洗ってすぐに出荷するため、洗浄時に湿った新ジャガが痛まないように継続的に水に浸しておくのだそうです。やはりジャガイモには人一倍のこだわりが感じられます。

そして最後に紹介したいのがこれ!

瓶詰め塩漬け皮なしポテト!

ジャガイモの調理において面倒臭い「皮を剥く」「茹でて柔らかくする」「味を染み込ませる」という3工程を見事にやっておいてくれています。

しかも長期保存用に作られたこの処理のおかげで、数ヶ月はこの状態で保存しておけます。

そしてコレ、食べてみると驚きのウマさ!

当然味はジャガイモなんですが、塩が浸みて日本では食べたことない種類のジャガイモの旨みが引き出されています。

鶏胸肉と一緒にハーブをかけてオーブンで焼くだけで、缶ビール2杯は余裕です。

まとめ

やはりその土地で最もポピュラーな食べ物にはそれ相応の歴史があり、他の国よりも一段階深く食べ方が研究されているということが分かりました。

そういえば以前、お米についてこちらのヨーロッパ人と語っていると、私たち日本人の異常なまでの品種改良への情熱や、炊き方へのこだわりを自覚させられたことがあります。笑

さて次回は、異国の土地でどんな自炊をしているかを紹介していきます。

ではまた次回!

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